ALL TIME SINGLES BEST

リリースデータ

華原朋美5thベストアルバム。デビュー20周年を記念してのオールタイムベストと銘打たれ、全シングルA面をリリース順に収録。C/W、アルバム曲からファン投票で選出した『ALL TIME SELECTION BEST』と同時発売。「華」「Keep On Running」「あのさよならにさよならを」「はじまりのうたが聴こえる」はアルバム初収録。『ALL TIME SELECTION BEST』同様にラストにはボーナストラック扱いで新曲を収録。初回盤はMV8曲を収録した「SINGLES MUSIC VIDEO COLLECTION」DVD付。結局シングルが復帰以降2作、オリジナルの新曲は直前に1作リリースしたのみだったこともあってベストアルバムとしては1st以来のトップ10ヒットとなったが、復帰以降リリースしていたセルフカバー、カバーアルバム合計3作をいずれも下回った。

初のオールタイムベストと銘打たれたが、以前のベスト盤は『kahala compilation』『Best Selection』が収録範囲が同じで小室のレーベル時代(1st、2ndアルバムまで)。『Natural Breeze〜KAHALA BEST 1998-2002〜』はその続きだったが、『Super Best Singles〜10th anniversary』は10周年で初のレーベル越えを果たしてのオールタイムだった。ただこれは何故か一部シングルが省かれてしまっている中途半端な内容で、しかもそのあとシングル2作を残して長期休止状態となってしまった。10年経過してようやく全シングルを余すところなく網羅できるベスト盤の登場となり、基本的にこれ1作聞いておけばいいという決定盤的内容。

こうして改めて聞いていくと公私共に絶頂期だったのは最初の5作くらいで、「Hate tell a lie」や「LOVE IS ALL MUSIC」辺りを経て、「たのしく たのしく やさしくね」で急に歌声が不安定というか不安定にしか歌えないような曲が出てきたと思ったらその後の謎のシングルカット2連発はわざと人気低下を狙ったのだろうか…と思うくらいシングルカットした意味が分からない。以降小室末期3部作はあらゆる意味ですさまじいものがある。そして小室を離れて以降の波乱万丈っぷりもあまり知られてはいないがけっこう壮絶だ。

小室との破局が報じられての復帰作「as A Person」はもうリスナーも破局を知っている前提での失恋ソングでインパクトがあったが、渾身のこの1曲以外は正直復帰には程遠い精神状態だったようでそれがあかさらまに歌声に表れていく。「be honest」〜「Blue Sky」の歌声の不安定さは小室末期よりもフラフラで聞いていても不安感に襲われる。心機一転を図ろうと『進ぬ!電波少年』での全米デビュー企画に挑んでからの「Never Say Never-japanese version-」で今度こそちゃんと復活し、以降は伸びやかで落ち着いた歌声を聞くことができる。「あきらめましょう」のノー天気っぷりで今度こそ大丈夫かと思ったがやはり無理があったようで歌声から兆候は伺えなかったものの長期休止へ。そしてまたしてもの復活で今度こそ揺るぎない…と思ったら今度は新作がなかなか出せないカバー歌手になってしまったり、結局小室哲哉に新曲を依頼するというなんかもう小室に対して断れない状況にTVを使いながら無理やり追い込んだような感じだったり、もう少しその先、未来への希望を見せてほしかったところはある。

どん底を経験して蘇る…だけならまだいるけど、どん底に何度も陥り、そのたびに復活してくるという波乱万丈さは華原朋美の最大の特色だと思う。弱いんだか強いんだか分からない華原朋美のメンタルだがいずれにせよ人生何度でもやり直せるを見事に体現していて勇気をもらえる存在でもあり、そんな他では味わえない挫折と復活の繰り返しが味わえる1作でもあると思う。オリジナルアルバム単位だと完全にメンタル折られにかかっている、折れている状態の作品が2作ほど出てきて、よりその凸凹な道のりを1作ごとに体感できるがその入口、ガイド盤として優秀なシングルコレクションでもある。

それにしても何度もボロボロになったのに容姿にあまり変化が生じなかったというのがけっこう凄い。なんかもっと老け込んでたりしてる方が自然なくらいの状況を経ているはずなのに…。

初回盤DVD付　　通常盤 　

印象度★★★★☆

2018.4.16更新

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