KUWATA BAND シングル回顧-1986-

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KUWATA BAND シングル回顧-1986-

1985年のアルバム『KAMAKURA』を最後に原由子の産休も重なり、サザンオールスターズはデビュー以来初となる長期の休止に入った。桑田佳祐はサザンの松田弘(ドラム)、そして今野多久郎(ギター、リーダー)、河内淳一(ギター)、琢磨仁(ベース)、小島良喜(キーボード)とKUWATA BANDを結成し、1986年の1年間限定(厳密には86年春頃に始動して、87年年明けまでライブをやっていた)で活動した。

シングル4枚、アルバム1枚、ライブアルバム1枚をリリースしたが、アルバム『NIPPON NO ROCK BAND』は全英語詞で、その時点でリリースされていたシングル3作は全て未収録となった。ライブアルバム『ROCK CONCERT』にはシングル曲も入っていたが、オリジナルのシングルはアルバム未収録のまま活動を終了。

ライブアルバム『ROCK CONCERT』は当時としてはやや早くLP発売をせずにCDでリリースしていたものの、シングルはレコードのみ。92年に桑田佳祐のソロ『フロム イエスタデイ』がリリースされるまではCD化されないままだった。93年にようやく8センチシングル化され、C/WはここでCD化。01年にはソロ作品と一緒にリマスターによるマキシシングル再発も果たされ、2016年には配信でも解禁されて現在に至る。

桑田佳祐のソロ作品では『フロム イエスタデイ』『TOP OF THE POPS』にA面4曲は収録されたが、『I LOVE YOU-now&forever-』には未収録になった。これによりKUWATA BANDは現在そこまで再注目されることも無くなってきている。後追いリスナーほど『TOP OF THE POPS』でA面4曲を聞いただけに留まっていることも多いと思う。しかし当時の記録を見てみるとKUWATA BANDは当時のサザン以上とも言える大ヒットを記録している。

というのもO社の歴史において年間1位のワースト1位は87年、2位が86年であり、未だ破られていない。87年は年間1位で40万台、86年も1位こそ50万をかろうじて越えたものの2位は40万台であった。KUWATA BANDはこの時代に3,40万のヒットを連続で出していた。

「BAN BAN BAN」で4位、「スキップ・ビート」で8位…と何と1986年の年間チャートに2曲も送り込んでいるのである(なお「MERRY X’MAS IN SUMMER」は15位)。ここまでのサザンは82年に「チャコの海岸物語」で年間8位を記録した以外は年間トップ10入りを果たしていなかった(「勝手にシンドバッド」や「いとしのエリー」がヒットした頃は同程度の売上のヒット曲も多かった)。以降も「TSUNAMI」の年間1位を筆頭に何度も年間トップ10入りを達成したサザンだが2作トップ10入りさせたことは無い(2作同時リリースで週間1位2位とか1位3位とかはある)。01年には桑田佳祐ソロで2作年間トップ10入りを達成したが、サザンでは達成できていない事をKUWATA BANDとソロでやっているのである。

現在そこまでKUWATA BANDが凄かった感じが残っていないのはやはり『TOP OF THE POPS』を最後にベスト盤収録がされなくなった事、86年という時代自体がちょいと微妙で振り返られにくい、何よりKUWATA BAND以外の年間上位勢は当時のアイドルばかりで、この時代がアイドルの時代として懐古番組でもまとめられがちなのも原因だと思う。アイドル以外でも小林明子の「恋におちて」や渡辺美里の「My Revolution」のようにザ・代表曲みたいな立ち位置の曲であれば86年のヒット曲としてピックアップされるが、サザンと桑田佳祐に他に紹介すべき代表曲が多すぎるのでスルーされがちでもある。

当時なりに本気でロックに挑んだアルバム『NIPPON NO ROCK BAND』やライブアルバム『ROCK CONCERT』はサザンやソロでもあまり見る事ができないロックサウンドが展開していて多少の時代性は感じるものの非常にカッコよく、後追いでは新鮮さも感じられる。

シングルA面では比較的キャッチーでポップな曲を用意していたので、実はシングルよりもC/Wの方がアルバムで見せていた方向性に近かったりもする。そんなシングル4作を改めて振り返ってみる。本当は30周年に合わせるつもりがすっかり忘れてい

2017年9月執筆

1st BAN BAN BAN

BAN BAN BAN
1986年4月5日
4作のシングルの中で最大ヒットを記録したデビュー作。ていうか普通にサザンオールスターズよりもヒットしてしまい、この時点では今作より売れていたのは「いとしのエリー」「勝手にシンドバッド」「チャコの海岸物語」の3作のみだった。新人バンドだとアピールしまくっていたそうで、フレッシュに捉えられていたのだろうか。

BAN BAN BAN

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:KUWATA BAND
サビのみ全英語詞だがとてもキャッチーな楽曲。サビを全員でシンガロングしている点がサザンとは違う新しいバンドとしての気概を感じられる。KUWATA BANDの楽曲の中では最も親しみやすい曲なんじゃないかと思う。今となっては若干異様な感じのリバーブ感は80年代ど真ん中特有のものだろうか。スタジオ音源でもライブみたいに聞こえるので、ライブ音源の方がキリッと締まって聞こえる。

個人的には99年の猿岩石『1986』でのカバーバージョンでこの曲を初めて聞いた…という極めて珍しい入り口だった(なお『1986』でカバーされた音源は全部猿岩石で知った曲になっている)。そちらはクセのないストレートなカバーになっていて好感触。
★★★★☆
ライブ盤『ROCK CONCERT』(ライブ)
桑田佳祐1stベスト『フロム イエスタデイ
桑田佳祐2ndベスト『TOP OF THE POPS
桑田佳祐4thベスト『いつも何処かで

C/W 鰐

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:KUWATA BAND
A面よりもロックバンド色が強い楽曲。ピコピコ鳴っているキーボードサウンドがいいアクセントになっていてロックなんだけどどこかカワイイ雰囲気もある。鰐とはワニであり、そのままワニと連呼されるが2番ではゾウが連呼され、歌詞は全体にエロティックで、ワニもゾウもそんなに関係が無い。むしろ最後に登場する“ブスが歌う PLASTIC ONO BAND”という一節の方がインパクト絶大だ。ジョン・レノンの妻であるオノ・ヨーコを指しているのは明白だが…桑田さんも若かった…。
★★★☆☆
スタジオ音源アルバム未収録
ライブ盤『ROCK CONCERT』(ライブ)

2nd スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)

スキップ・ビート
1986年7月5日(3rd同発)
3rd「MERRY X’MAS IN SUMMER」と同時発売。5位に初登場した後に6週目でサザンオールスターズではまだ獲得していなかった1位を初めて獲得。累計は前作に及んでいないもののやはりこの時点までのサザンのシングルで今作を越えていた売上は5作しかない状態だったのでかなりのヒットだったといえる。

スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:KUWATA BAND
ホーンセクションを導入したファンク調ロックナンバー。不思議なポップ感があるが、全体的に歌詞はエロティックで下ネタが目立つ。サビで連呼される曲タイトル「SKIPPED BEAT」4連呼はどう聞いてもスッケベースッケベースッケベースッケベーと言っているようにしか聞こえない…というかたぶん桑田さんスケベスケベ言いたかっただけなのではないか(後のマンピーとかと同じノリ)という勢い。
★★★★☆
ライブ盤『ROCK CONCERT』(ライブ)
桑田佳祐1stベスト『フロム イエスタデイ
桑田佳祐2ndベスト『TOP OF THE POPS

C/W PAY ME

作詞:Tommy Snyder&桑田佳祐、作編曲:KUWATA BAND
全英語詞のナンバー。バンド感は薄めの暗めのトーンの楽曲だが、前作に続いて歌詞でかなりきわどいところに踏み込んでいる。といっても全部英語な上に、当時のEPにのみ歌詞が掲載され、CD以降では未掲載になっているらしいので(今作は配信でゲットしたので現物は見ていない)カモフラージュされている。金をくれという直訳通りにギャラについてのマネージャーや事務所に文句を言っているという内容らしい。
★★★☆☆
アルバム未収録

3rd MERRY X’MAS IN SUMMER

MERRY X’MAS IN SUMMER
1986年7月5日(2nd同発)
2nd「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」と同時発売。こちらは6位に初登場してから2度3位になったが、2位は獲得できなかったので、1,2位独占はしていない。売上は4万枚差だったので、90年代の2度のサザンの2枚同時発売の時に比べると差は少なかった。

MERRY X’MAS IN SUMMER

作詞:桑田佳祐、作編曲:KUWATA BAND
タイトル通り、サマーソングなんだけどクリスマスソング。レゲエ風味のまったりしたサウンドに乗せて間奏ではキーボードが「ジングルベル」のメロディーを奏で、鈴の音もシャンシャン鳴っている。南半球ではクリスマスが夏になるが、特にこの曲の舞台がオーストラリア辺りに設定されている様子は無い。
結局夏に聞けばいいのか、冬に聞けばいいのか良く分からないが、基本的には夏に想うクリスマス…という感じだと思うのでやはり夏に聞いた方が個人的にはしっくり来る。レゲエ調だしな…。
★★★☆☆
ライブ盤『ROCK CONCERT』(ライブ)
桑田佳祐1stベスト『フロム イエスタデイ
桑田佳祐2ndベスト『TOP OF THE POPS
桑田佳祐4thベスト『いつも何処かで

C/W 神様お願い

作詞作曲:松崎由治、編曲:KUWATA BAND
ザ・テンプターズの68年の2ndシングルのカバー。ストレートな日本語ロックカバーといった仕上がり。元はグループサウンズだったようなので、古き良き日本の曲といった風味も感じられるんだけど、当時のKUWATA BANDなりの日本のロックへの回答がこのカバー…なのかも。こういう日本語ロックでのKUWATA BANDをアルバム単位でも聞いてみたかった。
★★★☆☆
スタジオ音源アルバム未収録
ライブ盤『ROCK CONCERT』(ライブ)

4th ONE DAY

ONE DAY
1986年11月5日
アルバム『NIPPON NO ROCK BAND』発売後のラストシングル。2作目となる1位を獲得したが30万枚を越えていた前2作に対して今作は20万枚を割り込んだ。それでも当時のサザンは10万を割り込むこともあったりと曲によって売上の差が激しかったのでKUWATA BANDはかなり安定して4連続でヒットを放っていたといえる。

ONE DAY

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:KUWATA BAND
ピアノ主体のバラードナンバー。KUWATA BANDがメインでやっていたロックとは少し毛色が異なるし、シングルにしてはやや地味な感じは否めないが、英語詞のサビ部分は非常にコクがある。さらにしっとり歌っていた前半からキーも上がって熱唱に切り替わっていく後半の展開が実に熱い。一見地味ながら確かな名曲だ。
★★★★☆
ライブ盤『ROCK CONCERT』(ライブ)
桑田佳祐1stベスト『フロム イエスタデイ
桑田佳祐2ndベスト『TOP OF THE POPS

C/W 雨を見たかい(HAVE YOU EVER SEEN THE RAIN)

作詞作曲:John Cameron Fogerty、編曲:KUWATA BAND
70年のクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのカバー曲。洋楽なので全英語詞。アコースティックサウンド主体ながらシンプルかつ無骨なロックといった雰囲気。KUWATA BANDをアルバム単位で聞く場合は、こっちの方が方向性としてはメインに感じられる。
★★★☆☆
アルバム未収録

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