桑田佳祐 ソロ30周年シングル回顧1~1987-2002~

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桑田佳祐 ソロ30周年シングル回顧1~1987-2002~

1986年に1年限定でKUWATA BANDとしての活動を終えた1987年にソロデビューを果たした。87~88年を第1期、93~94年を第2期、01~02年を3期と区分するのが一般的となっている。

1期ソロ活動は締めとなるアルバムリリースがサザンの10周年復活とクロスする形になってしまい、サザンが「みんなのうた」で復活した直後にアルバム『Keisuke Kuwata』を置き土産にするような形で半ば強制終了している。

2期ソロ活動では93年はサザンのシングルリリースと並行して行われ、94年になるとソロへ専念する形となり初のソロツアーも行われた。サザンが7月に「エロティカ・セブン」「素敵なバーディー」同時発売→10月に「真夜中のダンディー」でソロ活動開始→11月にサザンで「クリスマス・ラブ」。1期とは逆に序盤がサザンとクロスする形になったが、シングルリリースが並行する形になったのはこの時が唯一

3期ソロ活動ではサザンから大森脱退が重なった事もあって、元々ソロでやる予定ではなかったようでサザンとの差別化が図られなくなった。また01年はポップ路線、02年はロック路線という二軸で活動し、ロックなオリジナルアルバムとポップなベストアルバムを対にした。セールス的に最も成功を収めたのはこの3期ソロ活動(の厳密にはポップ路線の方)である。

3期以降のソロはサザンとの違いがあまりなくなってくるが、1期2期のソロ活動はサザンとはちょっと異なるソロアーティストらしい側面を見る事が出来、後追いで聞くと新鮮さを感じる事ができるのは魅力だ。

桑田佳祐ソロは対談で過去に1度やっている。当時の対談は集大成的なアルバム『MUSICMAN』発売で一区切りついたと思われたタイミングとKUWATA BANDから25周年なのでキリがいいという理由で行われた。

しかし結果的には翌年ベストアルバム『I LOVE YOU-now&forever-』が出てもっと明確な区切りになったり、その後サザンが復活したのでソロ活動自体に1度区切りがついたりしたので、結果的にこの対談「本当は怖い愛とロマンス」で終わるって何?という中途半端なものになってしまった。

対談でやり直すのもまた難しいところがあるので、結局単独でC/Wまで含めた全シングル収録曲を取り上げる形で単独で行う事にした。30周年が終わる前に…。KUWATA BANDをやったので、そのまま桑田佳祐ソロになだれこむと思ったらBluem of Youthの連載になってしまったのは、単純に間に合わなかったからである。

KUWATA BANDの連載終了からそのまま進めていけば奇跡的に10月6日の更新がピタリ30周年で「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」になっていた…という事に気付いたのは後になってからだった。

2017年9~10月執筆

1st 悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)

悲しい気持ち(Just a man in love)
87年10月6日
1986年の1年限定のKUWATA BANDを経てのソロデビュー作。サザン休止前の『KAMKURA』に参加していた藤井丈司と、当時その才能をベテラン勢に評価されて頭角を現しつつあった若手(当時)キーボードプレイヤーの小林武史をアレンジャーに迎え、基本的にこの3人体制で最初のソロ活動は進行した。特に小林武史の才能には目を見張るものがあったようで、編曲の名義は「小林武史 with 桑田佳祐、藤井丈司」と小林武史をメインに据えたものだった。

今作もKUWATA BANDとほぼ同等の売上を記録していたが、年間チャートでは年末集計の関係で87年と88年に分断されてランクインしているため上位には入っていない。

悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:小林武史 with 桑田佳祐、藤井丈司
モータウン調のノリの明るいポップナンバー。やや時代を感じさせる響き(主にドタドタしたドラムやリバーブがかったボーカル等)はあるものの極度な80年代特有のダサさは抑えられ、現代でも普通に聞ける。天才ポップス職人としての小林武史の才能が開花した曲という印象もあるが、打ち込みを行っているのはクレジットによれば主に藤井丈司だったようだ。

夏の終わりの切なさと別れの切なさをかけたため、曲調が明るい割には歌詞はかなり切ない。歌詞に引っ張られて聞きこんでいるうちに切なさを感じるようになる曲調でもあり、特に夏が完全に終わったな…と冷たくなった風を感じながら9~10月にこの曲を聞くととてもハマる。ソロデビュー作という事で尋常じゃない気合が入っていたのか、全体通してメロディーがキャッチーである。KUWATA BANDや休止前のサザンオールスターズでもここまで分かりやすくキャッチーな曲はなかなかやっていなかったように思う。しかも87年の他のヒット曲と並べても今作の洗練され具合はハンパ無く、来る90年代のJ-POPを捉えていたと言えるかもしれない。改めてとんでもないソロデビュー曲だ。

後にGOING UNDER GROUNDの松本素生がソロアルバム『素生』のボーナストラックで”松本素生&THE COLLECTORS”名義でTHE COLLECTORSの演奏でこの曲をカバーしているがそちらも非常に好感触な出来だった。というかこのカバーで改めてこの曲すげぇと思ってまた聞き返すようになった。
★★★★★
1stアルバム『Keisuke Kuwata
1stベスト『フロム イエスタデイ
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-
4thベスト『いつも何処かで

C/W LADY LUCK

作詞:Tommy Snyder、作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐、Jimmy Bralower,Jeff Bova
KUWATA BANDに続いての全英語詞のミディアムナンバー。藤井・小林両名は参加せず、NYでレコーディングされ、キーボードとシンセとプログラミングを担当した外人2名が共同アレンジャーを担当。ほぼ洋楽的なナンバーなので分かりやすいサビが出てくるわけでもない。なんとなくカッコいい感じではあるが…。
★★★☆☆
1stベスト『フロム イエスタデイ

2nd いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)

いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)
88年3月16日
3ヶ月後にサザンオールスターズの10周年を控えてのようやくのシングル2作目…という時点でお察しなようにだいぶ制作が難航していたようだ。というのも10周年でのサザン復活は既定路線だったと思われる。実際6月25日にサザンは『みんなのうた』で活動を再開。第1期ソロ活動を締めくくるソロアルバムはサザン復活直後の7月にリリースされるというごちゃ混ぜの状況の中で最初のソロ活動は幕を閉じた。サザンとしてのツアーが始まったためソロでのツアーも無かった。

いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:小林武史 with 桑田佳祐、藤井丈司
JAL’88沖縄キャンペーンCMタイアップ。沖縄への飛行機旅行をキャンペーンするにはあまりに切ない感じの失恋ナンバー。傷心旅行にターゲットを絞っていたのだろうか…。この曲がかかってもJALで沖縄に行きたいとは微塵も思えないぞ…。

前作と同様に別れの未練を歌っているが、全体に物静かで淡々としているため曲自体のインパクトも薄め。シングルの中ではかなり地味なタイプの曲だと思う。また『I LOVE YOU-now&forever-』収録時は前作と今作の間の「今でも君を愛してる」がタイトルからして確認するまでも無くやはり未練ソングなので、3連続でどんだけ引きずってねん!とツッコミたくなる。
★★★☆☆
1stアルバム『Keisuke Kuwata
1stベスト『フロム イエスタデイ
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-
4thベスト『いつも何処かで

C/W SHE’S A BIG TEASER

作詞:Tommy Snyder、桑田佳祐、作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐、藤井丈史、S.Merendino、T.Bone Wolk
前作に続いての全英語詞ナンバー。A面と対比させていたのか、今回はC/Wがアップテンポ。01~02年に全作大連発する事になるコカ・コーラのCMタイアップがついていたので当時はC/Wの割にはそこそこの知名度があったものと思われる。前作以上にKUWATA BANDの延長にあるというか松田弘、河内淳一の2名は今作にサポート参加しているので半分KUWATA BANDである。これまた洋楽的なカッコよさを感じられる1曲。
★★★☆☆
1stベスト『フロム イエスタデイ

クリといつまでも
/SUPER CHIMPANZEE

クリといつまでも クリといつまでも
91年9月26日
91年11月21日(『クリといつまでものカラオケ付き』)

桑田佳祐、小林武史、小倉博和、佐橋佳幸、角谷仁宣によるスペシャルユニット。今作のためだけにSUPER CHIMPANZEEという名義が作られ、今作限りで終了した。実態としては当時の桑田&サザンオールスターズの下手したらサザンメンバーより奏者として重宝されていた主要なサポートメンバー陣であり、同時期の『稲村ジェーン』のサザンオールスターズ&オールスターズという名義での“オールスターズ”やその俗称“稲村オーケストラ”にも参加していた面々である。バンドというよりはユニットに近く、ボーカリスト、ギタリスト2名、キーボード&シンセ技師2名で構成されているのでベースドラムと言ったリズム隊がメンバーにいない。

11月にはタイトル通り、サザンやソロでは収録した事のないカラオケバージョンを追加収録した『クリといつまでものカラオケ付き』がリリースされた。

01年のマキシシングル化リマスター再発の際はタイトルは『クリといつまでも』だが、『クリといつまでものカラオケ付き』仕様でのリマスター再発となっている。

クリといつまでも

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:SUPER CHIMPANZE
謎のアコースティックナンバー。打ち込みのアコースティックユニットみたいな感じで、サウンドに対してメンバーが5人もいるのはそんなにいるか?という感じもしなくもない。非常にほのぼのとしたキッズソングのような分かりやすいノリの楽曲で、クリックリックリッ!の連呼は嫌でも耳に残る。

しかし曲調とは裏腹に歌詞はひっでぇ内容で、赤茶けたクリ世の中はトリリスの体操について歌っている。桑田さんのエロい言葉言いたかっただけシリーズ(?)の中でも、今作は一応覆面ユニットだったからか、かなりのところまで踏み込んだ印象。サザンの某シングルの曲中でさらっと「Man Call」とか言っていたのとはちょっと次元が違う。しかしあくまで3つの単語はそれぞれ離れた位置で登場するのである。何の問題ない。

ていうかそれ以上にこの曲そもそも誰が歌っているのか分からない。これはボーカルのピッチを変えてしまっているためだ。そこまでしてやりたかったのか…これを…。

しかし何故後出しでカラオケ付?これをカラオケしたい人がいるのだろうか。オケだけ聞いて面白い曲でもないしなぁ…。
★☆★☆★
1stベスト『フロム イエスタデイ
2ndベスト『TOP OF THE POPS

C/W 北京のお嬢さん

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:SUPER CHIMPANZE
SUPER CHIMPANZEE=珍作エロユニットと思ってしまいどうしてもC/Wまでは敬遠しがちだが、今作は『フロム イエスタデイ』には収録されており、聞いてみると驚く。A面がふざけた曲だったのに対して今作は普通にかっこいいロックナンバー。基本的にメンバーにリズム隊がいないため、リズム周りが打ち込みになっており、ドラムに味気なさはあるが、ギター、キーボードサウンドは完全な本気モード。A面ではまさかのウクレレ担当に回っていた佐橋佳幸も普通にエレキギターをかき鳴らしている。

一方で歌詞はタイトル通りに北京のお嬢さんを主人公にしているが、中国色が強く出るのは毛沢東が歌詞に出てくるからで、それ以外は特に中華風な装飾も無い。正直内容もよく分からない。4年後には「LOVE KOREA」という突如韓国を歌のテーマにしたりもしているので、桑田さんは時々アジアに目を向けたくなるかのかもしれない。
★★★☆☆
1stベスト『フロム イエスタデイ

3rd 真夜中のダンディー

真夜中のダンディー 真夜中のダンディー
93年10月6日
5年半ぶりの第2期ソロ活動の1発目。92年には特にソロ活動もしていないのにソロでのベスト盤『フロム イエスタデイ』をリリースしていたが、これはレコードとCDの過渡期にあったKUWATA BANDと1期ソロ活動までを改めてCDとしてまとめたという意味合いがあったものと思われる。今作から1年ほどの間ソロ活動の第2期が開始されたが、今度はサザンとソロの両立という方針で、サザンとしてシングルをリリースしながら、ソロでもシングルをリリースしてソロアルバムへ向かっていくという活動方針になっていた。ソロとサザンは基本的にどちらかをやっている時はどちらかは休止になるが、この期間だけは交互にリリースするような状態でそれは長期休止直前の安全地帯と玉置浩二のようであり、また当時のサザンはベース関口が病気療養で休止していたので、正直けっこう先行きが不安視されていたのではないかと思う。

このソロ第2期は小倉博和のギターをメインとしたロック調のサウンドを基本としている。ソロ活動全期の中でも最もサザンとの差別化、ギター弾きながら歌うソロミュージシャン色が強い(実際は桑田さんではなく小倉博和のギターを主軸にしているが)時期でもあった。ギターサウンドにこだわる一方でリズム隊は機械任せにしている場面が多く、この時期の大半の曲のドラムは打ち込みである。

また1期ソロ活動はサザン10周年活動再開とクロスしてしまったため、アルバムリリース後のソロでのツアーを行う暇が無かったが、今作はサザンと並行しつつもサザンはシングルのリリースに留まっていて、サザンとしてのツアーも行わなかったため、思いっきりソロ初のツアーを敢行した(結果的に90年代唯一のソロでのツアー)。

真夜中のダンディー

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐&片山敦夫
非常にオッサンシンガーソングライターっぽさの強いギターロックナンバー。いつもよりも作った感じの渋い歌声になっていてよりオッサンっぽさが強く漂っているのも特徴。

90年代というのは若者が次々大ブレイクして時代を彩った時代であり、10代20代のミュージシャンが音楽シーンをリードしていた。既に37歳になっていた桑田佳祐はキャリアも年齢もかなりのベテランの域に達しており、恐らくこれは2017年時点で37歳とはかなり意味合いが違う。この当時の20代が40代、50代になっても時代をリードしているのが現代なので30代前半程度なら若手、後半でもせいぜい中堅扱いという印象に変わっている。

そんなすっかりオッサンな自分を多分に意識したのか、もしくは自身の母親の死が重なったためか、この時期のソロ活動は最もサザンから離れた1人のソロミュージシャンにして、若い時期が過ぎた事を自覚した1人のオッサンという印象が強く、これが渋くてカッコいい。もう少し後の言い方だとチョイ悪オヤジともいうのか、男が憧れるカッコいいオッサン像である。良くも悪くもこの時期でしかやれなかった方向性だったと思う。

初めて聞いたのは『TOP OF THE POPS』リリース時かそれより少し前の『CDTV』での過去チャート特集の時とかだったと思う。サザンを聞き始めたのは96年の「愛の言霊」からで、98年のアルバム『さくら』リリースの後くらいの時期だったか。ソロってこんな渋い方向性だったんだなぁ…とけっこう意外に感じたのを記憶している。10代、20代前半の頃はそんなに好きな曲でも無かったが、20代後半くらいからこの雰囲気に妙にカッコよさを感じるようになった。近年のお気に入り曲の1つ。
★★★★☆
2ndアルバム『孤独の太陽
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-

C/W 黒の舟唄

作詞:能吉利人、作曲:桜井順、編曲:桑田佳祐&小倉博和
野坂昭如が1971年に発表した楽曲のカバー。サザンとソロではカバーをやった事が無く、これが初だったがKUWATA BANDではカバーをやっていたので、どちらかというとKUWATA BANDからの流れに近いか。エレキギターを効かせたアレンジになっているが、曲自体が非常にザ・昭和といった感じなので、全体に昭和のかほり漂う雰囲気。音源としての昭和カバーはあまりやっていないが、09年、14年に企画ライブとして行った『昭和八十三年度! ひとり紅白歌合戦』『昭和八十八年度! 第二回ひとり紅白歌合戦』に通じている部分があるのかも。
★★★☆☆
アルバム未収録


4th 月

月 月
94年8月24日
ソロでは初めての夏(というか夏の終わり)のシングルリリース。ヒットを狙いに行ったような曲ではなかったこともあってか、ソロで唯一トップ3入りを逃して4位だった。『孤独の太陽』リリース1ヵ月前の先行シングル。

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐&小倉博和
アコースティックギターやハーモニカを前面に出し、特に音数の控えめな前半は弾き語り色の強い楽曲。実際には桑田さんはハーモニカ演奏のみでギターは小倉博和。またこの時期はあまり参加していなかった小林武史がオルガンを弾いて、原由子がピアノを弾いていたりもする。この時期に母親が亡くなったそうで、どこか寂しげな曲調はその影響と思われる。アルバム『孤独の太陽』の中でも特に孤独度(?)が高い曲で、シングルにするには地味だった気もするが(アルバムに「飛べないモスキート」とかシングルっぽい曲もあったし)、今となっては飾り気のないソロミュージシャン色の強さは貴重な事もあり、こういうシングル曲もあってもいいと思う。
★★★★☆
2ndアルバム『孤独の太陽
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-
4thベスト『いつも何処かで

C/W A LOVER’S CONCERTO

作詞作曲:Sandy Linzer & Denny Randell、編曲:桑田佳祐&小倉博和
1965年のザ・トイズのカバー。メロディー自体はスタンダードとしてかなり有名な曲だと思う。個人的にはDEENが09年にアルバム『LOVERS CONCERTO』でギターインストとしてカバーしていたのが思い出深いがその前からメロディーは知っているものだった。ていうかずっとインストのクラシック曲だと思っていたので、割と現代の歌詞のあるポップソングだと知って驚いたり…。エレキギター中心のロック色の強いアレンジになっていてかなり新鮮なカバーだ。
★★★★☆
アルバム未収録

5th 祭りのあと

祭りのあと 祭りのあと
94年10月31日
第2期を締めくくるシングルだが、アルバム『孤独の太陽』リリース後のシングル。C/Wはアルバムからのシングルカットだったが、これ以降7年に渡ってソロ活動を行わなかったため、長期に渡って「祭りのあと」はシングルのみの存在となり、オリジナルアルバム未収録。『孤独の太陽』のリマスター時にボーナストラックとして収録しても良かったのに…。

次が7年も先であり、その頃にはシングルはマキシシングルへと進化していた。このため今作がソロでの8センチシングル最終作となる。KUWATA BAND含めたここまでのソロワークスで最大のヒットを記録=90年代のソロ活動は今作が最後にして最大のヒットとなった。

01年6月25日にKUWATA BAND、SUPER CHIMPANZEE、そしてソロ1st~今作までが全てリマスター&マキシシングル化で再発された。現在は生産が終了しているようで廃盤となっている。

祭りのあと

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐&小倉博和
ドラマ『静かなるドン』主題歌。うだつの上がらないちょっと情けない感じのオッサンの目線で歌われているが、少し年季の入った感じが妙に愛おしくもあり、ある種のオッサン賛歌のようでもある。また季節が秋に設定されていることもあり、秋の名曲としても認識している。メロディーも抜群に良く、これはもうごちゃごちゃ書きつらねるよりもただ一言、圧倒的名曲としか言いようがない。これは初めて聞いた時から変わらぬ印象としてある。惜しむべくはこの時期はギターサウンドに注力していた割にリズムの打ち込み処理が目立ち、今作もドラムが生では無い事か。打ち込みっぽい機械的な響きが少し残念。どっしりとフルバンド演奏で構成してほしかった。
★★★★★
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-

C/W すべての歌に懺悔しな!!

アルバム『孤独の太陽』からのシングルカット。当時マスコミを巻き込んで大騒動になった問題作。というのも歌詞がロックシンガーを揶揄するような内容になっており、言及された内容から該当する箇所の多い矢沢永吉と長渕剛ではないかとマスコミが勝手に騒ぎ立て、桑田さんが謝罪&説明会見を開く事態に発展。矢沢永吉が大人の対応を見せて逆に桑田を気遣う態度を見せる漢っぷりを見せた中で、以前サザンとの共演ライブの際の行き違いから桑田に対して良い感情を持っていなかったとも言われていた長渕剛が激怒「俺は桑田佳祐を許さない」と週刊誌上でコメントを残したため、ワイドショーが大喜び大騒ぎになったという。

…が、当の長渕剛が翌95年1月に大麻により逮捕された事で沈静化した…。

というのがこの曲を巡る騒動である。小学4年生だった当時そんなマスコミが騒いでいたような記憶は全くない。94年は映画『ドラえもん・のび太と夢幻三剣士』を見たのと、漫画『名探偵コナン』を3巻4巻から読み始めた年である。芸能ニュースだとビートたけしがバイクで事故ったとか、羽賀研二と梅宮アンナの交際を梅宮辰夫が反対したので騒がれていたのは覚えているんだが…。

桑田さんは自分も含めて揶揄したもので特定のだれかではないなどと言っていたが、矢沢永吉はともかく特に長渕剛を揶揄したように思えてしまう部分は多い。しかも“クスリにゃ目がない バカヤロ様”が結果的に予言のようになってしまうというオチまでついたのも拍車をかけたと思う。

このようにエピソードの多い曲で歌詞も刺激の強いものだが、曲自体となるとひたすらまくしたてていくスタイルなのでメロディーはそんなに印象的なものでもなく、あまりいい曲という感じもしなかったりして…。良くも悪くも歌詞のインパクトが非常に大きい1曲だ。
★★★☆☆
2ndアルバム『孤独の太陽

奇跡の地球
/桑田佳祐&Mr.Children

奇跡の地球
95年1月23日
当時も十分凄かったが、サザンは90年代後半に、ミスチルは00年前後に1度低迷しており、そこから両者とも復活して確固たるトップアーティストの地位を築いて現在に至る。現在では当時以上に今作の夢のコラボっぷりが増しているのではないかと感じる。

このシングルは93年に始まったエイズ患者へのチャリティー活動Act Against AIDSの活動の一環。元々は11月30日、12月1日、2日に大々的なチャリティーイベントを行うというのがメインだった。当初は色々なミュージシャン・タレントが集まって合同のチャリティーライブを開いていたが、桑田佳祐はソロで様々な企画ライブを行うようになり、「ひとり紅白」などの企画ライブもこの一環だ。

今作は当時参加していた桑田佳祐、Mr.Children、そして両者を繋ぐプロデューサー小林武史の存在もあって実現したコラボだった。レコード会社も両社の共同企画扱いだが、発売元はビクターになっているので作詞作曲を担当した桑田佳祐寄りの扱いになっている。

170万枚を越える大ヒットとなり、桑田佳祐ソロとしては最大のヒット作。しかし元々がチャリティー企画のため、期間限定販売であり、同年6月頃までしか生産されなかった。さらにミスチルサイドではアルバム未収録。桑田サイドでも6年後『TOP OF THE POPS』に唯一収録されたのみ。

現在はそうでもないが、ネット販売が発達しきってなくてアルバム未収録の頃はそれなりのプレミアがついていた。

奇跡の地球

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:小林武史&Mr.Children
ギターのサポートメンバーとしてMY LITTLE LOVERとしてデビューする直前の藤井謙二が参加している。キャッチーというよりはアクの強い少し不思議な感じのロックナンバー。編曲がミスチルサイドだがアルバム『Atomic Heart』で見せていたデジタル的な要素が強めに出ている感じか。豪華なコラボでなければ正直そこまでの曲ではない…という印象だったが、なんだかんだ豪華なコラボっぷりに惹かれて周囲でも話題になる事が多く(数年後の98,99年頃の中学時代)、聞く回数が多かったのでそれなりに馴染んできた。
★★★☆☆
2ndベスト『TOP OF THE POPS

6th 波乗りジョニー

波乗りジョニー
01年7月4日
前年サザンオールスターズは「TSUNAMI」の最大ヒットで盛り返し、「HOTEL PACIFIC」「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」、そしてアルバム『バラッド3』をリリースしたがギターの大森隆志が活動休止をしてしまう。その後正式に脱退が決定した事でサザンはそのまま活動休止になってしまい、ソロになったとされている。このためこの第3期ソロ活動はこれまでのようなサザンとソロとの差別化がほとんど図られていない

今作でソロ単独で初のミリオンヒットを達成。しかも単に達成したわけではない。当時21世紀を迎えた途端にミリオンヒットが激減。多くのアーティストが売上を大幅に落とした。01年のミリオンヒットは00年12月~01年3月にリリースされた宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、CHEMISTRYの3組のみに留まっていた。92年以降、年間トップ10が全てミリオンというのは当たり前になっていたので、3月を最後に4,5,6月と全くミリオンが出ずに3作で止まっているのは非常事態だった。

今作はかなり気合の入ったプロモーションが展開していたのでそれなりのヒットは期待されていたとはいえ、前年のサザンの「HOTEL PACIFIC」はロングヒットでも80万枚突破、「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」は30万程度まで落ち着いていただけに、ソロでいきなり初動50万を突破したのはとんでもなかったし、まさかミリオンヒットになるとは思わなかった。

ほぼ1年前サザンの「HOTEL PACIFIC」は初動30万で、GLAYが初動50万枚を突破して1位を獲得していたが、またしても同時発売となった今作が初動50万、GLAYが初動30万になったというのは物凄く綺麗な逆転だった。

また5月に発売されたEE JUMPの「おっととっと夏だぜ!」には“サザンが似合う”というフレーズが登場していた。これを受けて今作のCMは夏に聞きたい曲は?という街頭インタビュー風の作りでみんなが「波乗りジョニー」と答えていく中で最後のオッサン(桑田さん本人)が「おっととっと夏だぜ!」と答えるオチをつけてアンサーした。

EE JUMP側(作詞作曲:つんく)は次のシングル「イキナリズム!」では“桑田さんどもありがと~”という歌詞をかなり唐突にぶち込み直接的にアンサーを返した。しかし直後にユウキが脱走したためEE JUMPは崩壊への道を

「HOTEL PACIFIC」から引き続いて初回盤はスリーブケース仕様。ソロとしては初のマキシシングルとなった。

波乗りジョニー

作詞作曲編曲:桑田佳祐、管編曲:山本拓夫、弦編曲:島健
コカ・コーラ「No Reason」キャンペーンCMソング。3期ソロ活動はこのコカ・コーラと共にあったといっても過言ではない。春頃から本人出演で使用されていた(CDと違ってアレンジが完成版じゃなかったと思う)ので、発売時点でかなり馴染んでいた。これ完全にサザンじゃん!とは思ったもののとにかくキャッチーな曲だったので1発で気に入った。ソロにリアルタイムで接するのはこれが初めてだったこともあって思い出深い1曲だ。桑田さんがサーフィンするPVも面白かったが、サーフィンしているところ(合成だけどな)よりも、陸に上がってきたら何故かサザンの毛ガニ氏がいて桑田のくしゃみにより発生した大突風を喰らった毛ガニ氏がブワアアアアとなっているところがインパクトだった。

なお3期ソロ活動は1期2期とは違い、ブレーンとなるアレンジャーを加えない基本的には単独編曲。管弦を除くとピアノは原由子だが桑田さん本人がギターだけでなく、ベースとキーボードまで演奏していてドラムは打ち込みとなる。
★★★★★
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-
4thベスト『いつも何処かで

C/W 黄昏のサマー・ホリデイ

作詞作曲編曲:桑田佳祐、英語補作詞:岩本えり子、弦編曲:島健
明るい「波乗りジョニー」とは対になる日陰のサマーソング。じめっとした蒸し暑い空気が漂う。真夏の日々を音で表現すると「波乗りジョニー」よりも圧倒的に今作みたいな感じになるんじゃないだろうか。ただ実際酷暑の部屋の中で聞くとホント嫌になるのでお勧めしない。

当時は地味な曲だなという感じであまり好きになれなかったんだけど、「波乗りジョニー」のC/Wというポジションにはハマっていた曲だと思う。『TOP OF THE POPS』で2曲目に来るのは…やっぱちょっとくじけるけど…。
★★★☆☆
2ndベスト『TOP OF THE POPS

C/W MUSIC TIGER

作詞作曲編曲:桑田佳祐
00年秋から01年春まで2クール24回放送された『桑田佳祐の音楽寅さん~MUSIC TIGER~』の番組テーマ曲(OP)。ユースケ・サンタマリアと桑田佳祐が音楽を中心にしつつも色々な事をする音楽バラエティで、初回と2回目はいきなりゲリラライブの模様を放映したが、3,4回目では今作の制作ドキュメントが放送されていた。放送が00年秋だったので10ヵ月近く経過してのCD化となる。
バンドサウンドによるロックナンバーで歌詞にその都度呼応するようにユースケが合いの手を入れる構成。冒頭の“工藤ちゃん”は番組プロデューサーの名前であり、さらに構成作家のおちまさとが登場、K助、U助と自分たちの名前も登場する内輪感が満載でこの番組の出演者やスタッフの名前を当て込んだり、妙にふざけたりする作風はフジテレビとのタイアップで何故か以降も不定期に登場する。歌詞はかなり意味不明だが、ロックなサウンドとメロディーは普通にカッコよく、この手の番組色の強い曲の中では1番好きな曲だ。

特筆すべき点はギターベースドラムのバンド演奏を全部桑田さん1人で担当している事で、打ち込みを角谷仁宣が担当している以外は1人バンド体制であること。番組でも桑田佳祐がドラムを演奏しているという貴重な姿が放送されていた。これまでの桑田佳祐はサザンでは「Vocal,Guitar」という表記に徹していたが、今作で他楽器が本格解禁され、サザン復活後はサザンでも特にベースを自分で弾いている曲があることを普通にクレジットしたり、発言したりするようになった。
★★★★☆
アルバム未収録

C/W PRIDEの唄~茅ヶ崎はありがとう~(LIVE in 大阪城ホール)

作詞作曲編曲:桑田佳祐
2000年10月31日に大阪城ホールで開催された格闘技『PRIDE』の小川直也VS佐竹雅昭の試合前に飛び入りで登場して弾き語り歌唱したライブ音源。「MUSIC TIGER」の制作模様を放送した次の「音楽寅さん」5,6回でこの時の模様を放送していた…ようだがこっちに関しては記憶が無い。格闘技に興味が無いので流し見してすぐ忘れてしまったか、そもそもこの2回は最初から見なかったのか…。
歌詞には小川・佐竹の名前も登場し、2人を応援する内容になっているが、かなり特定個人向けの色が強い楽曲のため、格闘技や小川・佐竹ファンでないとあまり愛着が持てるような曲ではないと思う。また”茅ヶ崎はありがとう”というのも小川直也がサザンの茅ヶ崎ライブで前座として聖火点灯を行った事に対するものであり、茅ヶ崎ライブに参加していない大多数のリスナーにとっては何がありがとうなのかも良く分からなかった。
★★★☆☆
アルバム未収録・未配信

7th 白い恋人達

白い恋人達
01年10月24日
結局前作でミリオンを達成した後に新たなミリオンは全く出なかった。Mr.Childrenが売上を回復させていたくらいでみんな下がっていく一方。今年最後のミリオンセラーは再びこの男に託された…

といっても過言でないくらい突如としてレアモノになり渇望されていたミリオンへの期待を一身に受けて発売された。プロモーションも尋常ではなく、発売当日の朝だったか夕方だったか忘れたがフジテレビの情報番組でPVをフルで流していた記憶がある。ギリギリでO社の01年集計期間中でのミリオン達成はならなかったが、直後にミリオンを達成サザン含めて自身最後のミリオンヒットにして単独ソロでは最大のヒット作となった。

白い恋人達

作詞作曲編曲:桑田佳祐、弦&管編曲:島健
前作に続いてのコカ・コーラ「No Reason」キャンペーンCMソング。冬の勝負バラード。前作とは真逆のクリスマスを思わせる装飾も施されたド王道のウィンターソングで実際に冬の名曲の仲間入りも見事に果たした。サザンとしても93年に「クリスマス・ラブ (涙のあとには白い雪が降る)」というクリスマスソングのヒットはあったが、『海のYeah!!』以降夏のイメージが決定づけられていた。それは冬の大ヒット曲だった「TSUNAMI」がいつの間にか夏ソングの定番に認識が切り替わってしまうほど強力なものだった。TUBEの前田亘輝がクリスマスバラードで2作のヒットシングルを持っていたとしても前田さんの夏男イメージは不動なのも同様だ。

そんな中でいつもと違って“雪の中でピアノを弾く桑田さん”というビジュアルにはインパクトがあった。ピアノと言えば奥さんなわけで桑田さんがピアノを弾くイメージは無かったのでそれだけで確実に新たなイメージだった。まあ実際にはこの曲のピアノ弾いてるの原由子なんだけど(桑田さんはギターベースキーボードを担当)、TV出演時も桑田さんによるピアノ弾き語りパフォーマンスをしていた(場合によってはハンドマイクだった)。

いかにもなウィンターソングっぽさ、ひたすら琴線を刺激する美メロ、さらにはラストでの裏声での大サビで最後の大盛り上がり…とコテコテの売れ線狙い。一歩間違えればマンネリ、ベタすぎる…と思ってしまうところだが、分かりやすさこそが正義と言わんばかりの名曲。スタンダードな名曲とはまさにこうして生まれるのか、と「TSUNAMI」の時以上に感じたのがこの曲だ。ソロシングルで唯二フラゲ購入に走った作品だけに思い出深い(もう1作は「明日晴れるかな」)。初回スリーブケースの角が擦り切れまくっているのもそれだけ出し入れされまくったためだろう。
★★★★★
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-
4thベスト『いつも何処かで

C/W 踊ろよベイビー1962

作詞作曲編曲:桑田佳祐
ビートルズへのリスペクト漂うビートリー(?)なナンバー。1962というのはビートルズが「Love Me Do」でデビューした1962年の事であり分かりやすい。ここまでのC/W曲の中ではたぶん1番明るくて1番聞きやすい曲じゃないかと思う。この曲に関しては当初からけっこう好印象だった。

またクレジットをよく見るとギターベースキーボードハーモニカタンバリンを桑田佳祐、ドラムが松田弘、カウベルが毛ガニ氏。Computer Programmingを角谷仁宣が担当している以外はサザンメンバーだったという。「白い恋人達」に原由子がピアノで参加しているので、このシングルには関口和之以外のサザンメンバーが参加している事になる。03年のサザン復活以降は一応ライナーで関口ベースを褒めながらも曲によって違うニュアンスのためという理由で自分でベースを弾いてしまう(一応自分はヘタだと最大限気を遣いながら)のも重なり、なんかサザンの中でもこの2人の関係性は他のメンバーと比べると薄いのかなと思うところがある。
★★★★☆
2ndベスト『TOP OF THE POPS

C/W あの素晴らしい愛をもう一度~アミダばばあの唄[MEDLEY](Live Take from 「古賀紅太 No Reason! ライブハウスツアー」)

作詞:北山修、作曲:加藤和彦、編曲:古賀紅太&His Friends
作詞作曲:桑田佳祐、編曲:古賀紅太&His Friends

夏に行われたサザンのFCツアーでのライブ音源。サザンのFCのツアーだがサザンで行ったわけではなく、ソロである。また「波乗りジョニー」のPVで演じていた古賀紅太の名義となっている。古賀紅太は3期ソロ活動で蜜月だったコカ・コーラを文字ったもの。

「あの素晴らしい愛をもう一度」は1971年の加藤和彦と北山修によるフォークの王道スタンダード「あの素晴しい愛をもう一度」のカバー。“素晴しい”が正式表記だったらしいがここでは”素晴らしい”になっている

「アミダばばあの唄」はアミダばばあ&タケちゃんマン(明石家さんまとビートたけし)に提供した83年の楽曲のセルフカバー。こんなところでまさかの19年越しのセルフカバーとなった。
アコースティックに近い形式での演奏になっていて軽快な雰囲気だが、この2曲実はメドレーで披露されたわけではなく、全く別々の音源を編集で無理やりメドレーに仕立て上げている。だったらトラック2つにすればよかったんじゃないかと思わなくも無い…。
★★★☆☆
アルバム未収録・未配信

8th 東京

東京
02年6月26日
02年になりCD不況に焦ったエイベックスはCCCDを導入。問題視されてますますCD売上が低迷し、当然ミリオンなど程遠く全く出る気配が無くなって早くも半分が過ぎようとしていた。当然前年に2作連続のミリオンヒットを出していた桑田さんに最後の期待がかかる…が、なんとそんなん興味ないとばかりにノンタイアップの「東京」を単独A面に、前年から続くコカ・コーラタイアップによる王道ポップ「可愛いミーナ」、別のCMタイアップがついていたキャッチーなロックナンバー「夏の日の少年」を堂々C/W送りにして、「東京」に派手なPVを作って「東京」一点集中のプロモーションを決行

このチャレンジングな行為により、今作の売上は50万程度(十分なヒットだが…)と前2作の半分以下に落ち込んだ。またアルバム『ROCK AND ROLL HERO』は先行シングルを今作のみとしたため、これまた60万枚を越える程度に留まった。いずれにしても今作もアルバムも当時から現在までファン人気の高い作品だが、当時大半のライトリスナーは何でそうなっちゃうのかな…という感じになってスルーしていたと思われる。それくらい売上の失速っぷりは激しかった。

『ROCK AND ROLL HERO』ではサポートメンバーが完全に固定メンバーではなく曲によって一部メンバーが入れ替わったりはしていたものの、THE BALDING COMPANYとバンド名をつけていた。前2作とは切り離されてのロックを主軸とした活動であり、早い段階で『ROCK AND ROLL HERO』の後にもう1作出すと予告していた。

東京

作詞作曲:桑田佳祐、編曲:桑田佳祐&THE BALDING COMPANY
雨の夜の都会の陰鬱な光景しか浮かばないようなダークなロックナンバー。前2作とは打って変わってヒットを意識せずにソロとしての挑戦を感じさせる雰囲気が濃厚だ。なんだかんだノンタイアップとはいえ派手なMVを作ったりとプロモーションにも力が入っていたので、話題作ではあった。それゆえそんなに好きではなかったが耳にする機会は多く、気が付けばそれなりに印象づいていた。

進行がかなりスローなのでそう何度もいつでも聞こうという気分には正直あまりならない曲だ。しかしふいにこの曲がバチッとハマって引き込まれる瞬間が年に何度か訪れる。そんな時に聞くこの曲は確かな名曲だ。
★★★★☆
3rdアルバム『ROCK AND ROLL HERO

C/W 夏の日の少年

作詞作曲:桑田佳祐、英語補作詞:Tommy Snyder、編曲:桑田佳祐&THE BALDING COMPANY
カラッと明るいざっくりとしたロックナンバー。Town&CountryのCMタイアップがついていたのでコカ・コーラタイアップほどではないがこちらも発売前からそこそこ流れていた。そして同じ『ROCK AND ROLL HERO』からの先行シングルというならたぶん今作をA面にしていたらもっと普通にヒットしていたし、もっと人気曲になっていたんじゃないかと思う。せめてベスト盤に収録されていればな…と思うんだけど、『TOP OF THE POPS』はコンセプトの都合で対象外だったのでいいとして、『I LOVE YOU-now&forever-』にも外されたのは残念だった。それくらい聞きやすい曲だ。夏と少年というテーマも外しようが無く、大人になるほどノスタルジックさを帯びて沁みてくる。個人的にはC/Wでダントツ1番好きな曲
アルバムでは一部ボーカルの差し替えが行われているらしい(なんとなく声のしゃがれ具合が違うような気もしなくも無いがどこが違うのかよく分からない)。
★★★★★
3rdアルバム『ROCK AND ROLL HERO

C/W EBOSHI RADIO STATION “Hits from Coast to Coast”(DJ:SHANTI)

曲ではなくFMラジオ番組風の演出トラック。DJが入る前のジングルを桑田が手掛けているため、一応作詞作曲編曲や演奏クレジットがあり、桑田名義の“曲”として扱われている。番組内で紹介されて次の曲「可愛いミーナ」が始まる仕様。DJのSHANTIというのは前曲「夏の日の少年」で英語補作詞も担当しているゴダイゴのドラマーTommy Snyderの娘のShanti Snyder。当時21歳だった。
★★★☆☆
アルバム未収録

C/W 可愛いミーナ

作詞作曲編曲:桑田佳祐
コカ・コーラ「No Reason」CMソング。「波乗りジョニー」「白い恋人達」に続いて2年目もコカ・コーラタイアップが継続し、早くからOAされていたので当初はこの曲がシングルになるものと思われていた。前2作とは違うがサザンオールスターズの「あなただけを」をもう少しゆったりさせたようなポップなサザンの王道感漂うナンバー。まさに盤石の”らしい”仕上がり。いい曲だけどこれがA面だったら無難すぎたというところもあったのかもしれない。確かに今作の3曲の中では1番最初に馴染んだ曲だったが、最速で飽きた曲でもあった。『I LOVE YOU-now&forever-』に「夏の日の少年」を差し置いて収録された頃にはもうこの曲よくない?と思ったほどだったが、その後多少持ち直して改めていい曲だと最近は思えている。

この曲はTHE BALDING COMPANY名義ではなく、演奏陣も異なる(小倉博和やサザンの松田・原が参加)。このシングル自体は『ROCK AND ROLL HERO』の先行シングルだが、今作はそこに含まれないため、『TOP OF THE POPS』に回されている。DJトラックを挟んでこの曲だけ隔離させたのもそういった理由があったのかもしれない。
★★★☆☆
2ndベスト『TOP OF THE POPS
3rdベスト『I LOVE YOU-now&forever-
4thベスト『いつも何処かで

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