広末涼子 シングルレビュー

96年DocomoのポケベルCM出演をきっかけに大ブレイクした広末涼子。その人気は瞬間風速的に当時他のアイドルの追従を許さないほどに圧倒的な人気を誇り、その翌97年に歌手デビュー、さらに大ヒットした夏ドラマ『ビーチボーイズ』にヒロインとして出演するなど頂点を極めた。歌手活動ではメインプロデューサー(アレンジャー)を藤井丈司が担当。同じく80年代末期のサザンや桑田ソロに大きく貢献した小林武史がプロデューサーとして大出世したのに比べるといささか地味ではあったが、確かな手腕を発揮した。藤井丈司は元々自分が前に名前を売っていくタイプでは無かったようで裏方的に支え、話題になったのは毎回の女性シンガーソングライターによる提供の豪華さだった。豪華な制作陣に支えられ、99年序盤の2ndアルバム、その直前の初ツアーまでは順調だったが、それっきり歌手活動は停滞し、フェードアウトしてしまった。あまりに急速なフェードアウトはそのまま広末人気の収束とも一致。気がつけば99年の早稲田入学の大喧噪を最後に大きな話題は無くなり、01年ドラマ「できちゃった結婚」放送中には数々の奇行が報じられ、実際ドラマでの広末の声がガッラガラに枯れていた事もあり、プッツン女優なる異名を得るに至るのであった。その後リアルに2度のできちゃった結婚をしている。

今回ジャケットをクリックするとAmazonMP3の方に飛ぶんだけど(当時のシングル盤ではジャケ表示ができなかったので)、そちらでは1クリックで全曲視聴できる。

1st MajiでKoiする5秒前/とまどい
97年4月15日

Majiで恋する5秒前
竹内まりや提供曲。当時すでに40歳を越えていた竹内まりやが物凄く若者っぽい歌詞と曲調を提供したのが印象的だった。冒頭の「渋谷はちょっと苦手」といった歌詞などを例に出し、広末本人もその若々しい歌詞を誉めていた記憶がある。マジでキレる5秒前=MK5をもじったキャッチーなタイトルからインパクト抜群、イントロやアウトロで聞かれる「ワン、ツー、スリーフォーファイブ」のささやきも期待を煽る効果抜群でスキのない90年代王道のアイドルソングだった。若者文化はさすがに移り変わりが激しいものの、計算したのかしないのか、タイアップ先のポケベルを歌詞中に持ち出したりはせず、チョベリグだのチョベリバだのといった即死語化した言葉も入ってないので、2010年に川島海荷、2012年に指原莉乃がカバーした際にもさほど違和感が無く、意外と普遍性のある楽曲だったんだなと感じた。自身ブレイクのきっかけになったDocomoポケベルCMソングとして自身が歌いながら出演していたのが印象深いが、実は自身が主演していたドラマ「木曜の怪談」枠の「悪霊学園'97」主題歌としても使用されていた。タイトルの時点で全く合わないのが分かる当て込みタイアップだったが、広末の数少ない連ドラ主演作の1つである。以降は全て共演の男性キャストが主演扱いで2番手になっていた。だが2013年に大コケしたドラマ「スターマン」では17年ぶりとされ、96年に主演した同じ「木曜の怪談」枠の「魔法のキモチ」以来の主演作という扱いに。何故「悪霊学園'97」が無かった事にされたのかは不明。竹内まりやが歌うデモバージョンは今作収録の2曲も収録された竹内まりやの提供曲コンピ盤『Mariya's Songbook」初回盤のみ収録のボーナストラックで実に16年越しで音源化された。
★★★★☆
1stアルバム『ARIGATO!』
ベスト『
RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
RH Singles &…〜edition de luxe〜

とまどい
同じく竹内まりや提供。アレンジは十川知司になっている。一応両A面扱いでシングルの裏ジャケはこの曲仕様、Maji恋に比べれば地味だったもののPVもしっかり制作されている。本来の竹内まりやの王道イメージに近いミディアムな友情ソング。こちらは竹内まりや本人がセルフカバーして早々に発表されている(竹内バージョンでは間奏の台詞はカット)。元気なMaji恋との対比も鮮やかで、どうしても印象は薄くなりがちではあるがしみじみといい曲だ。
★★★☆☆
1stアルバム『ARIGATO!』(back to the summer version)
ベスト『
RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
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MajiでKoiする5秒前


2nd 大スキ!
97年6月25日
岡本真夜提供。1stほどは売れなかったが唯一のチャート1位獲得曲。岡本真夜は自身の曲でも初期には明るい曲もそれなりにあったが、その許容範囲を軽く越えていったはじけ具合に驚いた。「とってもとってもとってもとっても…」連呼なサビの破壊力は抜群。紅白でもこっちが歌唱され、アイドル歌手広末の最大の代表曲として君臨している感がある。近い時期に岡本真夜本人もこの曲をセルフカバーしてしまい、これはさすがに似合って無さすぎだった。また友人によればカラオケでこの曲を歌唱するという罰ゲームが実行され、歌わされたその少年は真っ青な顔をしながらこの曲を歌っていたとのことで、当時の中学生男子の間では罰ゲーム扱いされる始末。歌う人間を選ぶ曲だったのかもしれない。97年当時のヒットチャートに女性アイドルの曲はほぼ無く、今になってみればそんなでもないんだけどこの曲のアイドルっぷりは経験した事の無い得体の知れなさがあったのも確かだ。84〜85年生まれの同級生の間ではおニャン子も知らず、モーニング娘。もまだ出てくる直前。宮沢りえとか観月ありさ、内田有紀辺りももう少し前がアイドルとしてのピークだし、今作リリース時には女優の印象が強くなってきていた。森高千里や中山美穂、工藤静香など80年代アイドルに関しては既に普通の女性シンガーになっていたのでアイドルだった事を知ったのはもっと後だ。そんなわけでアイドルに対する耐性が全く無かったからこの曲の衝撃は上下の世代に比べると深かったんじゃないかと思う。またPVでは何故かアイスホッケー場で掃除をしたり、アイスリンクの上に常夏グッズを置いて歌ったりしている。ジャケットに出ているサンデッキでの青空全開の初夏っぽい映像はわずかにサブリミナルのように一瞬登場するのみ。どうしてこうなった?
★★★★☆
1stアルバム『ARIGATO!』
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ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
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C/W 大スキ!/sun-deck version
アコースティック南国調にリアレンジしたバージョン。この曲をよくこういうリアレンジしようと思ったな…というくらい予想外のアレンジに戸惑う事必至。あと当時の8センチシングルにのみ50秒程度のCMバージョンも収録されているらしいが、シングルを手に取らなかったので聞いたことが無い。
★★★☆☆
ベスト『RH Singles &…
ベスト『
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大スキ!


3rd 風のプリズム
97年10月15日
原由子提供曲。自身のソロ作品も数が少ない上に夫の桑田佳祐が曲を書くことも多いだけに、原由子が曲を提供してくれるというのはかなりレア。過去の提供者を見ても80年代アイドルのみで、00年に酒井法子に提供はしているものの、90年代以降のデビューでは広末のみだったと思う。そんなレアな原坊提供曲だが、ほんわかした雰囲気はまさに原由子の色そのもの。元気いっぱいではなく、少し落ち着いた広末涼子の魅力を引き出している。落ち着いたと言っても後期の楽曲に比べれば瑞々しさに溢れている。今作の初登場週が驚異的な高レベルでSPEEDとglobeとラルクと河村隆一が初動30万オーバーで並び、JUDY AND MARYも20万近く出していたので今作は初動15万オーバーしながらも6位と不本意な位置に。1stアルバムの先行でもあったので、前2作に比べて一気に印象が薄くなってしまったのは否めないが、何気に年を重ねても歌えるかなりの名曲だと思う。PVでは広末が文字通り風を感じながら自転車に乗っているが、そのままコンサートホールの廊下まで自転車で突入、後半は誰もいないステージで伸びやかに歌唱。PVも1,2を争う仕上がり。
★★★★★
1stアルバム『ARIGATO!』
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ベスト『
Perfect Collection
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C/W 風のプリズム〜unplugged〜
タイトル通りアンプラグド編成、つまりアコースティック調のシンプルリアレンジ。前作C/Wが予想の圏外だったのに比べて楽曲のイメージをそのまま生かしながらA面ではちょっと出来ない方向で伸ばした感じ。元の曲がいいだけにシンプルな形でもいい。
★★★★☆
ベスト『RH Singles &…
ベスト『
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風のプリズム


4th  summer sunset
98年5月13日
広瀬香美提供。前年広末が「ビーチボーイズ」出演して大ブレイクしている中で、広瀬香美が夏に挑んだ「夏だモン!」は同じクールの夏ドラに起用されながら大コケ。まさしくこれは広瀬香美の夏へのリベンジであった。前年コケたのを知ってか知らずか、広末も当時のインタビューで「(冬のイメージが強い)広瀬香美さんの夏は私が歌います!」などと頼もしいコメント。結果、トップ10入りを果たし、冬の女王広瀬香美はサマーソングでのトップ10入りを間接的に果たすことに成功した。広瀬香美が得意としていたウキウキ系の歌詞や曲調はそのままアイドルソング王道にも当てはまる。さすがにもう1つのお得意路線である自意識過剰方面にやりすぎると痛いことになってしまうが、そのバランス加減も絶妙だった。ただいくらキーを広末に合わせたからといってもサビでの高音続きは少々しんどいのか、ファーストライブツアーでのこの曲を披露した際は後半になるほど声が安定しなくなりヘロヘロになってしまっていた。PVでは歌詞に合わせて広末が男と海へドライブに出かけるイチャイチャデートムービー。やけにリアルないちゃつきっぷりはファンが自分に投影させるよりも置いてけぼりをくらうかのような仕上がり。しかもこのモデルと付き合っているとかいう噂が流れたりもしてリアルだったのかよ!というツッコミも入っていた記憶がある。そしてそれ以上にPV後半の映像が怖い。海に到着後は物凄い曇り空で爽快さが皆無なんだけど、リアルに悪天候だったのでそれ以上そのまま使えなかったのか以降は画面を全面モノクロに変更。このため、真っ暗な夜の海辺で戯れているようにしか見えず、ほとんどホラー。やっていることはさわやかなのに見た目は漆黒な映像が展開。どうしてこんなことに…。
★★★★☆
2ndアルバム『private
ベスト『
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ベスト『
Perfect Collection
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C/W NNNN〜キッス!
こちらも広瀬香美提供。ウキウキしたポップなラブソングとなっている。タイトルは「ん〜ん〜キッス♪」と歌われる。これまた広瀬香美らしいキャッチーな曲だ。よりアッパーで勢いがあったから「suumer sunset」をA面にしたんだろうけど、C/Wの中ではけっこうトップクラスにキャッチーな1曲だと思う。
★★★☆☆
ベスト『RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
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summer sunset


5th ジーンズ
98年10月7日
朝本浩文が作編曲。アニメ「金田一少年の事件簿」ED。一応ほとんどヒットしなかったこのタイアップではダントツのヒットだったものの、提供者のネームバリューで引っ張ってきた広末サイドとしては初めて女性シンガーの提供じゃないシングルだったので、前4枚ほど話題にならなかった。感動する時の「胸がジーンとする」を複数形にしたものというのがタイトルの意味であり、ズボンの事ではない。意外とキャッチーさとアイドルらしすぎない適度なバランス感覚が絶妙で、好きな1曲。PVもスタジオで歌っているだけなんだけど、今までより少しだけお姉さんっぽくなったところが当時中2だった俺には最高に魅力的に見えたのを記憶している。また何故か初回盤、通常盤でジャケ写が違うという全シングルで唯一の2種仕様。
★★★★☆
2ndアルバム『private』(1999 Mix)
ミニアルバム『
Winter Gift'98』(THIS IS BIG BEATZ RADIO MIX)
ベスト『
RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection』(1999 Mix)
ベスト『
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C/W プライベイト
シーナ・リンゴ提供。椎名林檎がブレイク前に何故かカタカナ名義で提供していた。翌年椎名林檎がブレイクした時も佇まいの強烈さとこの曲のわりかしミディアムな雰囲気が全く一致せず、名義も違っていたのでしばらくは同一人物だと分かっていなかった。A面として切るにはまだイメージが一気に落ち着きすぎてしまうのでダメだったのかもしれないけど、もう少し歌手活動やライブ活動が続いていればけっこう重要なポジションの楽曲に成長していったんじゃないかと思う。
★★★★☆
2ndアルバム『private
ベスト『
RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
RH Singles &…〜edition de luxe〜

ジーンズ


6th 明日へ
99年2月3日
再び岡本真夜提供。本人の高校卒業に合わせた卒業ソング。初のツアー直前にして2ndアルバムの先行シングルにして初のマキシシングルにして個人的にも初めて広末作品の購入に踏み切ったシングル(結果的にシングルはこれ1枚しか購入してない)。高校卒業で大人の階段を上らせる意識があったのか、かなり落ち着いた曲調で岡本真夜の本来の作風に近い。「大スキ!」をセルフカバーしたのに何故こっちをしなかったのか…。また広末としてもこれなら前作の時点で「プライベイト」を両A面にしておいたほうが今作への流れが良かったような気がする。元気な広末のイメージを急にしっとり変えてもダメだったのかトップ10落ちした。個人的にはかなりの名曲だと思ったんだけど…。PVでも笑顔をほぼ見せずに細目で黄昏たような表情をずっとしているので別人のようだった。
★★★★☆
2ndアルバム『private』(Album Version)
ベスト『
RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
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C/W ハッピィバースディ
タイトル通りハッピーでバースデーな曲。シングルを並べて聞くと既にこの前後の流れの中では浮いているほどだが、結果的にはこれが最後のアイドルっぽさのある明るい曲となった。
★★★☆☆
ベスト『RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
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C/W あのつくことば。
本人初作詞、作曲はかの香織。かなり音数も少ないシンプルなバラード。結論から言うと「アイシテル」。ファーストライブでもラストを締める曲として歌われた。タイトルを見た時は「ありがとう」の意味で、ライブに向けてファンへの感謝ソングを作ったのかと思ったが、なんか普通にラブソングだったので軽く拍子抜けした。
★★☆☆☆
2ndアルバム『private
ベスト『
RH Singles &…
ベスト『
Perfect Collection
ベスト『
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明日へ


真冬の星座たちに守られて
ストリングスっぽい音色が北風のような役割を果たしているザ・ウィンターソングといった趣きのウィンターソング。ベスト盤に新曲として収録されたが、発売ギリギリまでCDショップの店先ではシングルとしてのリリース予定が記載されていた。PVも制作したのに、シングル切ってももう売れないと判断してシングルとしてのリリースが直前で中止になったのだろうか。落ち着いた雰囲気を出しつつも、切なさを全開に醸し出し、かつ退屈なミディアム〜バラードではない曲調というのはなかなかアイドルがアーティストへ脱皮していく際に条件を満たすことが難しい路線だけに新鮮だった。
★★★★★
ベスト『RH Singles &…
ベスト『
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真冬の星座たちに守られて


7th 果実
00年11月8日
ファーストツアーのMCではまたライブをやりたいと発言したものの、直後99年2月の2ndアルバム発売を最後にシングル停止、そのまま99年秋にはライブアルバム&VHS、いきなりのベスト盤を出して全てトップ10入りは果たしていたが沈黙。それから1年も経過してようやく出た最終シングル。今作が20位と沈んだせいか歌手活動はこのままフェードアウトした。この1年で20歳を迎え、アイドル的な扱いでのドラマや映画出演もせずに女優イメージを打ち出し始めてだいぶ広末のアイドルイメージが薄れていた事もあり、楽曲もかなり大人びたものに。やたらガシャガシャとした凝ったサウンドメイクになっているし、歌い方もかなり大人っぽさを意識して今までとは異なる。当時はあまりにイメージ変わりすぎて意味不明な曲だったが、今トータルで聞くとこれも意外と面白い曲だ。
★★★☆☆
ベスト『Perfect Collection
ベスト『
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C/W Crescent River〜三日月の舟に揺られて〜
R&Bの時代が到来してどいつもこいつも軽いリズムでクールな楽曲を歌い始めたような時期にR&B路線に手を出さずに、どちらかというとバンドっぽいロックテイストの漂う楽曲をやり始めたというのが面白いところだ。「果実」よりはガシャガシャしておらず、メロディーもすっきりしていて聞きやすいんだけどその分だけ残りにくかったりもする。
★★★☆☆
ベスト『Perfect Collection
ベスト『
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C/W LETTERS
かの香織提供によるミディアムバラード。わりとなんていうことはない普通の曲なんだけど、00年当時に聞いた時よりは良さが分かるようになってきた感じはする。
★★★☆☆
ベスト『Perfect Collection
ベスト『
RH Singles &…〜edition de luxe〜

果実

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