キンモクセイ シングル回顧 2001-2007

7,80年代の日本のポップスを00年代前半のミュージックシーンで再現していた特異なバンド、キンモクセイ。世間がR&B風やらラップミュージックで沸いている時代に実にマイペースに”あの頃の匂い”を掲げ、懐かしくも新しいサウンドを展開し続けた。早い時期での「二人のアカボシ」でのブレイクはあったものの、時代と合ってなさすぎたせいか早々に忘れられてしまい1発屋扱いされるようになってしまったが、02〜06年当時のヒット曲が懐かしくなる中でも彼らの楽曲は色褪せない。むしろ全体に懐古ムードが高まり、時代の彼方へ置き去りにされていた80'sのサウンドすら逆に新しいものとして受け入れられるようになってきた昨今、キンモクセイの楽曲に改めて触れてみると当時よりもさらに普遍的に感じられる。

『Beautiful Dreamer』15周年、02年2月11日このサイト開始当時にまさに「二人のアカボシ」がブレイクしていた。02年2月11日付の週間チャートで初のトップ10入りを果たしており、ベスト盤の年表でも2月11日に初のトップ10入りをしたことが記載されている。ここだ!というわけである。

※2015年に概ね執筆したままお蔵入りしていたものを2016年デビュー15周年に向けて微修正、しかし修正が遅れてタイミングを逃してお蔵入りしていたものを2017年2月のサイト15周年と「二人のアカボシ」のヒットが同時期だった事から2017.2.11公開。

1st 僕の行方
01年10月24日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ
イントロの瞬間から"あの頃"の雰囲気が漂う1stにして作りこまれて完成された1曲。決して派手には鳴らさないもののよく聞くとかなり細かく作りこまれたバンドサウンドが心地いい。パッと聞きそんなでもないが改めてこれがデビュー作というのはとんでもない新人バンドだったのでは。夏の電車は走る〜のサビも意外とクセになる。PVでは「8時だヨ!全員集合」のコントセットを再現しているが…01年10月時点で高校2年生だった俺でも既に番組名しか知らない世代だったのでなんか昭和のコントっぽいセットだなとしか思えなかった。当時25歳前後だったメンバーでも番組終了時点で10歳前後だったのでなんとか少年時代の記憶として残っていた程度でメンバーと同世代以上じゃないと分かった上での懐かしさは感じられないのでは…。1stアルバムではストリングスを加えた豪華なアレンジになっている。
★★★★☆
1stアルバム『音楽は素晴らしいものだ』(ストリングスは素晴らしいものだVersion)
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

僕の行方


2nd 二人のアカボシ
02年1月9日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&澤近泰輔
発売1ヵ月後にトップ10入りを果たし、冬の間中ロングヒットを記録したダントツ最大ヒット作。この曲で紅白にまで出演したものの結果的にこれ以外にトップ10ヒットすら出せなかったので1発屋イメージが強くなってしまった。実際、ここまで切なさ成分強め、かつ秀逸な夜明けの描写にしても懐かしさと切なさが混在した独特の風味にしても意外と同系統の楽曲が無い。二番煎じになるので作らなかったのか、たまたま出来た奇跡の1曲だったのかは不明だけど、何となく奇跡の1曲だったような気もする。何度も聞くことで良さが滲み出していく曲がキンモクセイには多いんだけどこの曲はファーストインプレッションだけでかなり鮮烈だし、売れるべくして売れたのかなと思う。インスタントラーメン「チャルメラ」をモチーフにしたジャケットは遊び心満載だったが、初回盤では本当にインスタントラーメンの袋入り仕様で発売されていた。PVでは屋台のラーメンの客としてCDデビュー1年前の竹内めぐみが出演。最初に完成したPVではラーメン屋台の店長が若干魔法じみた技を駆使しながらラーメンを作っていく過程が盛り込まれていたが、勝負曲なのにふざけすぎだという判断が下ったらしく、ラーメン調理シーンの大半を急遽編集でカットしてメンバーの演奏シーンを増やした形でMVが完成した。元のバージョンは後にPV集で公開されているがラーメン屋のオヤジで吹いた。
★★★★★
1stアルバム『音楽は素晴らしいものだ
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

二人のアカボシ


3rd 七色の風
02年5月9日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
大瀧詠一辺りをオマージュしたようなカラフルなポップナンバー。サビ始まりかと思いきや基本的に2ブロック(と大サビ1回)を繰り返すだけでどちらもサビ、もしくはAメロとBメロ(とCメロ)しかないような構成になっている。初夏を彩るさわやかでポップないい曲だなと思ったものの、「二人のアカボシ」とはイメージが違いすぎたせいか早速トップ10入りを逃してしまった。PVには乙葉が出演。ボーカル伊藤が演技をしたいとの意向でテニスをしながらのちょっとしたラブロマンスが繰り広げられる。この辺りのセンスは昭和だったが、癒し系と言われていた当時の乙葉は確かにかわいらしい。
★★★★☆
1stアルバム『音楽は素晴らしいものだ
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

七色の風


4th さらば
02年7月3日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ
テレ朝系アニメ『あたしンち』初代OP。恐らく2番目に知名度が高い曲。05年6月まで使用されたが(最終回でも使用されたらしい)このアニメというとこの曲の印象が強い。そもそもこの作品、読売新聞の日曜版に掲載されていた漫画だったのに何故か日テレじゃなくてテレ朝でアニメ化された。映画にもなったことがあり、サザエ、ドラ、ちびまる子、しんちゃんと20世紀で定番化したまま新定番が生まれなくなっているファミリーアニメ界(?)00年代の新定番として愛されていくかと思われたが…。開始当初の関東圏では「ドラえもん」直後の19時30分枠だったが、放送開始わずか2年でそれなりに高視聴率だったにも関わらずこの枠に「しんちゃん」が移動してきたことで土曜午前11時のローカル枠へ飛ばされてしまった。その後はかなり粘ったが09年にアニメ終了、12年に原作も作者疲労により終了してしまったのが残念(アニマックスでは15年10月に新シリーズでアニメが再度制作されていた模様)。原作は読んでいたがアニメはそんなに見てなかったもののこのアニメというと"こんにちはありがとうさよならまた会いましょう"が浮かぶ。さわやかな別れの曲でまさにエンディングにこれ以上ないくらいふさわしい曲。収録アルバムと同時発売だったのであまりヒットしなかったが普通に出していたら2作目のトップ10ヒットくらいは狙えたかも…?
★★★★☆
1stアルバム『音楽は素晴らしいものだ
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

さらば


5th 車線変更25時
02年11月27日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
インパクト抜群なディスコ歌謡ナンバー。今度は踊りたいという伊藤の意向で本格的な練習を経てPVでは伊藤が1人でキレのいいダンスを披露している(演技もダンスも懲りて以降はやりたいと言わなくなったとか)。ダンスは正直この年にヒットしていた氣志團の「One Night Carnival」みたいだなと思ったものの、楽曲自体もけっこうインパクトが強く、紅白出演決定で02年の新顔ミュージシャンとして改めて話題性も増していたところだったためか、トップ20入りを逃したものの若干の粘りを見せて2万枚を越える売上を記録した。このタイミングでもう少し行けていればな…。
★★★★☆
2ndアルバム『風の子でいたいね
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

車線変更25時


6th 同じ空の下で
03年4月9日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
春らしいさわやかさとちょっぴりセンチな気分が同居した楽曲。「七色の風」とさわやかさでは近い部分があるけど、もう少し大人なたたずまいで落ち着いている。地味な曲だなと思ったものの、後からじわじわ効いてきて今ではかなり好きな1曲に。これもいくつかの当時のヒット曲と並んで大学入学当時の思い出の1曲でもあり、この曲を聞くとイントロのピアノの瞬間から03年春の青空と大学のキャンバスを思い出す。離れていても同じ空に下にいるという思いは、今よりも今が過去になってより響いてくる曲かも。
★★★★★
2ndアルバム『風の子でいたいね
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

同じ空の下で


7th 人とコウモリ/日曜日の夜
03年9月17日
初の両A面シングル。PVはそれぞれ主演が異なるが世界観的には繋がっている。

人とコウモリ
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
スカ風の怪しげなナンバー。急に売れ線を放棄したというか暗黒時代に突入したかのような攻めた仕上がりで当時は意味不明だった。改めて聞いてみるとこれはこれで面白いんだけど、ちょっとこれシングル?という気は今でもする。PVには本格ブレイク前の蒼井優が出演。
★★★☆☆
2ndアルバム『風の子でいたいね
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

日曜日の夜
作詞:後藤秀人&伊藤俊吾、作曲:後藤秀人、編曲:キンモクセイ&鈴木茂
3連ミディアムナンバー。王道の優しい雰囲気は戻っているものの、けっこうまったりしているのでややかったるい。PVが2曲繋がっており、今作では蒼井優に代わって中学生の少年が主演している。
★★★☆☆
2ndアルバム『風の子でいたいね
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

人とコウモリ/日曜日の夜


8th 二人のムラサキ東京 
/キンモクセイと東京ジェンヌ
04年4月21日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
超絶なまでにザ・昭和歌謡なデュエットソング。さすがに04年時点で昭和歌謡デュエットとか時代錯誤すぎて引いてしまい今作は手に取らなかったのでベスト盤リリース時に初めてちゃんと聞いた。東京ジェンヌは当時正体不明とされたが、歌声を聞けば松たか子だとなんとなく察しがつき、後に正式に明かされた。まさに昭和デュエットのパロディ全開といった感じでファン離れも止まらずついにトップ50落ち(65位)となってしまったが、正体不明と正体判明という話題性で少し引っ張り1万枚の大台までは何とか乗せ、最後の1万越えヒット作に。何故か収録アルバムの共に初回限定盤のみに収録されている。
★★★☆☆
3rdアルバム『
NICE BEAT』(初回盤のみ)
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜』(初回盤のみ)

二人のムラサキ東京


9th メロディ
04年8月25日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
本格的な暗黒時代へ突入。シンプルなタイトルだが、これまでのイメージを一新し、ドコンドコン鳴り響くドラムや淡々と進行する曲調など全体通して不穏な空気が全開。聞いているだけでなんだか不安な気分になってしまうほど。最初はナンダコレと思ったものの、今までにない新たなサウンドは歌謡曲路線に行き過ぎるよりはけっこう新鮮に聞こえてきて妙にハマった。
★★★★☆
3rdアルバム『NICE BEAT
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

メロディ


10th むすんでひらいて
04年12月1日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸
有名な童謡と同タイトルだが、ほのぼのさは皆無。前作以上に淡々とした不穏な空気全開の暗黒時代第2弾。いきなり"この世は終わりに向かい進む船よ"とかスケールがデカい上にダーク極まりない。前作同様に不思議とハマる要素はあったし、この先の進化を思うと必要な道筋だったんだろうなと思う。
★★★☆☆
3rdアルバム『NICE BEAT
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

むすんでひらいて


11th 夢で逢えたら
05年2月16日
作詞作曲:大瀧詠一、編曲:キンモクセイ
吉田美奈子の有名曲カバー。CMでも起用され、アルバム初回盤のボーナスCD収録曲だったがシングルカットされた。CM効果と有名曲カバーの効果により前後のシングルよりも売上が好調だった。実際かなりの好カバーで、持ち味を生かしながら確固たるキンモクセイとしてのカバーになっていて素晴らしい仕上がり。これを聞いた大瀧詠一からの評価も高かったらしく、当時既に隠居状態だった大瀧詠一とメンバーが対面する機会も設けてもらえたという。
★★★★☆
3rdアルバム『NICE BEAT』(初回盤のみ)
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

夢で逢えたら


12th SUMMER MUSIC
05年7月27日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&澤近泰輔
カバーを経て明るい方向に回帰。暗黒な曲が続いていたのでキンモクセイが進化して戻ってきた!というのが第1印象。80年代〜アーリー90'sといったあの頃の夏のヒット曲のタイトルやフレーズが散りばめられた歌詞も面白い。"ああ夏休み"(TUBE「あー夏休み」)、"珊瑚礁"(松田聖子「青い珊瑚礁」)、"チャコもミーコも"(サザンオールスターズ「チャコの海岸物語」)、"高気圧の女の子"(山下達郎「高気圧ガール」)、さらにコーラスでナツナツココナッツ(石川優子とチャゲ「ふたりの愛ランド」)などが分かる範囲でもこれだけぶっこまれているけどたぶんもっと多いんじゃないかと。
★★★★☆
4thアルバム『13月のバラード
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

SUMMER MUSIC


13th 冬の磁石
05年11月30日
作詞:伊藤俊吾、作曲:後藤秀人、編曲:キンモクセイ&澤近泰輔
一転して冬の凍てつくような寒さをサウンドで表現した切なウィンターチューン。早い段階でこの曲出してれば2作目以降のヒットも出せたんじゃないかというくらい勝負作っぽい勢いもあると思うが、作曲がほとんどの楽曲を手掛けていたボーカル伊藤ではなく後藤秀人だったのが意外だった。PVには映画『NANA』で大きく知名度上げた直後の宮崎あおいが出演。圧倒的な存在感を放っている。長澤まさみがPVに出ていたらアンダーグラフがブレイクしたように宮崎出演効果でもう少し楽曲自体に注目も集まらなかったものか…。大瀧詠一リスナーへもっとアピールしていれば…とかあまりにマイペースすぎたのでけっこうタラレバが多い。
★★★★☆
4thアルバム『13月のバラード
ベスト『
ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

冬の磁石


14th さよならの表情
06年10月18日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&澤近泰輔
C/Wやアルバムでは伊藤以外のメンバーのボーカル曲も出ていたがシングルでは唯一の伊藤とドラム張替のツインボーカル体制(といっても伊藤メイン寄り)。これまでよりもエレキギターを前面に出し(ギター2人がエレキギターを弾いている上に伊藤までエレキギターを弾いているのでエレキギター3本体制)、シングルでは最も派手なアレンジ。キンモクセイらしさと更なる攻めの姿勢がピークに達した1つの到達点のような1曲になったが…この年はこのシングル1作ポッキリ…。
★★★★☆
ベスト『ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

さよならの表情


15th 金木犀e.p.
07年10月24日
作詞作曲:伊藤俊吾、編曲:キンモクセイ&桜井秀俊
結果的にラストシングルとなった4曲入りEP。メイン曲は「金木犀の花」。真心ブラザーズの桜井秀俊を共同アレンジャーとして招いている。前作までの勢いとは打って変わってかなり落ち着いたミディアムナンバー。バンド名を冠したような楽曲だというのにこの落ち着きは…とモードの違いに当初戸惑った。間に発売されていたカバーアルバム『さくら』に収録されたオリジナル曲「さくら」を聞いてからだと割とすんなり聞けるし良さも見えてくる。しかし結果的にこれが最後となってしまった事を考えるとかなりひっそり終わっていってしまうのでけっこう切ない。
★★★☆☆
ベスト『ベスト・コンディション〜Kinmokusei single collection〜

金木犀e.p.(初回生産限定盤)(DVD付)

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