little by little シングルレビュー

ボーカルのhidecoと作詞作曲のtetsuhikoによる2人組ユニット。2人組だがtetsuhiko(鈴木哲彦)は演奏者ではなく、作詞作曲を担当する作家なので表舞台には出ていなかった。このためジャケットやPVに出ているのはhideco1人。tetsuhikoが生年月日を公開していたのに、hidecoは生年月日非公開としていたため、一体どのくらいの年齢の人だったのかも不明のままと少し変わった音楽ユニットだった。デビューは03年12月だが、00年頃にはインディーズで活動していたようなので、デビュー時点で20歳そこそこよりはもっと上の年齢だったと考えるのが自然だが…。

デビュー作で勢いよくトップ10ヒットを放ったものの、結果的には1発屋になってしまった。いわゆるソニーアニメ典型パターンで、アニメで売れたものの、固定ファンがつかず、その後のタイアップは効果の薄いものばかりでヒットを出せず、リリースすらも停滞していって…という当時からソニーアーティストで数多く見られた典型パターン。00年代、これで多くの新人ミュージシャンが表舞台から消えていった。

このユニットが変わっていたのは、リリースが止まっても存在が消滅していない事である。リリース停止から数年経過した2011年にはtetsuhiko(鈴木哲彦)が音楽事務所を立ち上げて社長となり、ここに移籍する形で現在も存在が継続している。既にこれといった活動は出来ていないのに、解散にはしなかったのはこのユニットへの思い入れの表れなんじゃないだろうか。

2014年執筆。全曲「シングル感想」においてリリース当時の感想が掲載されているが、当時の感想を読み返すことなく、2014年時点で改めて聞き返しての感想となっている。

1st 悲しみをやさしさに
03年12月17日
アニメ「NARUTO」OP。当時強力だったソニーアニメタイアップでいきなりのトップ10ヒットを記録(6位)。結果的には唯一のトップ10ヒット曲となってしまったものの、けっこう鮮烈な印象だったのを記憶している。LINDBERG後継みたいな元気ロックなサウンドに1発で魅かれた。個人的にいきなり耳に引っかかって1stシングルから聞き始めることってあんまりなくて、様子を見ることが多いんだけどすぐにレンタルリストに入れたし。当時レーベルゲートCD(ソニーのCCCD)入れてやがったので以前から買っていたZONE以外は買わないと決めていたからシングル購入はしなかったけど、普通のCDだったらたぶん買ってたと思う。アニメを見ている少年少女向けの直球の応援歌だけど、サウンドやhidecoのボーカルの勢いもあってとにかく元気がもらえる元気ソングオブ元気ソング。「悲しみを」強さに変えるのではなく、「やさしさに」というのが地味にいい。次に来るのも「自分らしさを力に」だし、なんかこの歌詞だと自然に入ってくるんだよな。
★★★★★
1stアルバム『Sweet Noodle Pop

悲しみをやさしさに (CCCD)


2nd LOVE & PEACE
04年4月14日
アニメ「SDガンダムフォース」OP。ガンダムというと人気作みたいに思えるが、当時人気だったのはSEEDであり、こっちのSDはガンプラ付CDとかやっていたものの、タイアップ曲がことごとくコケていくという状況。かろうじてnobodyknows+がこのタイアップ曲「ココロオドル」でトップ10ヒットを放ってブレイクを果たした程度だった。わりとのほほんとしたポップナンバー。この手のテーマだと急に地球レベルの平和を直球に歌い出してついていけねぇ…みたいな事もたまにあるけど、そこまで盛大なLOVE&PEACEを掲げているわけではなかったので普通に聞きやすかった。ただこういった曲調にはhidecoよりももっと優しい声のボーカリストの方が合ってたんじゃないかという気はする。当時は何だかしっくりこないという感触だけだったんだけど、改めて聞いて曲調に対してボーカルがちょっと違和感だったんだなと思った。
★★★☆☆
1stアルバム『Sweet Noodle Pop

LOVE&PEACE(CCCD) 


3rd 雨上がりの急な坂道
04年8月11日
昼ドラ「大好き!五つ子6」主題歌。初のドラマタイアップ。このシリーズの主題歌はさほどヒットしなかったものの、速効急降下ではなく2週目以降もランクインしてちょっとだけロングヒット。39位の初動0.4万枚から1万枚を越える売上を記録した。五つ子が小学1年生から始まったこのシリーズも6年生を迎えて1つの節目を迎えていた事もあり(翌年以降は中学生に上げずに設定を高校生にすっ飛ばして五つ子キャストだけを一新した)、歴代の主題歌の中でも1,2を争う思い出深さがある。夏休みをテーマにした歌詞もしっかりドラマに合わせていっていたし、彼らの楽曲でタイアップ先にも触れていたのはこれだけなのでたぶん1番聞いたのはこの曲だと思う。単なる子供目線や、子供を励ましているような曲にも思えるが、序盤のAメロなどは大人の視点であり、ここから"何か追いかけてた 気持ちを呼び起こして"というフレーズで子供の頃の感覚へとリスナーを誘っていくイメージがある。だからこそリスナーは大人であったとしても童心を取り戻して少年少女の気持ちでこの曲を聞くことができる。発売当時はまだ大学生だったのでちょっと純真さを失ってきている学生くらいのリスナーにもっと子供だった頃のまっすぐな思いを思い出させるような曲だと思って聞いていた。いずれにせよ童心を呼び起こしてくれる名曲だ。今作直後にCCCDが廃止になり、次回作から初めてCDで発売されるようになった。
★★★★★
1stアルバム『Sweet Noodle Pop

雨上がりの急な坂道 (CCCD)


4th シンクロ
05年4月20日
映画「恋は五・七・五」主題歌。レーベルゲートCDはCDの規格外だったので、事実上初のCDリリースとなった1作。C/Wやアルバム曲では打ち込みサウンドも多かったが、シングルでは一応フルのバンド編成ながらこの曲が最もデジデジしている。4つ打ちで浮遊感のあるサウンドが印象的だが、サビでも淡々としていてやや地味。しばらくしたら良さが分かってきた曲。タイアップが弱すぎ&固定ファンが全然つかなかったので危うく100位圏外になるかというくらいに暴落した。
★★★☆☆
1stアルバム『Sweet Noodle Pop

シンクロ


5th ハミングバード
05年6月8日
アニメ「焼きたて!!ジャぱん」ED。再び初心に戻ったような1stを髣髴とさせる直球応援歌。苦しい状況の中で最初の一歩を踏み出すところが正直1番エネルギーがいることだと思うんだけど、そこに注力した応援歌なので、何かを始める前とかに聞くと元気が出る。1stと遜色ない楽曲だったにも関わらず、タイアップ効果が皆無だったのか前作よりわずかにマシ程度にしか売れなかった。ただ今作が良かったので1ヵ月後の1stアルバムは購入。これがやはりヒットせず。一応アルバム派初登場85位から2週目も100位に居残るといった奇跡の粘りは見せていたので何かもう少し違っていたらヒットに繋げることができたんじゃないか。
★★★★☆
1stアルバム『Sweet Noodle Pop

ハミングバード  


6th キミモノガタリ
07年12月5日
アニメ「NARUTO」ED。1stアルバムを最後にリリースが停止し、1年半ものブランクを経てリリース再開。原点に立ち返った「NARUTO」タイアップだったが、この頃にはタイアップ効果は急速に薄れており、かろうじてトップ100入り(97位)した程度。アレンジまでtetsuhikoが単独で手がけているのはシングルA面で初となっているが、楽曲自体は「悲しみをやさしさに」「ハミングバード」直系の王道といえる勢い溢れるアッパーな応援歌。再スタートを宣言する楽曲としても申し分ない。けっこういい曲だとは思ったし、当時はとにかくリリースがあっただけで嬉しかったものの「悲しみをやさしさに」や「ハミングバード」にはちょっと匹敵しないかなという感じも。
★★★★☆
アルバム未収録

キミモノガタリ


7th Pray
08年5月28日
ドラマ「東京ゴーストトリップ」主題歌。ただでさえほとんど獲得できなかった固定ファンも開きまくりなリリース間隔ですっかり離れ、マイナータイアップばかりではどうにもならず、ついに158位485枚と壊滅的な結果になり、これが最後のリリースとなってしまった。最後のつもりではなかったんだろうけど、これまでとは180度異なる無力感溢れるしっとりミディアムナンバー。「ひび割れた青空が心に広がるよ 何にも出来ない僕は何にもなれなくて I pray...」がド頭でサビ。何この圧倒的な無力感。これを憂鬱シーズンな5月に出されたら聞いている方もちょっと持たない。チラホラ周囲に内定が出始めたのに一向に決まらない就活中に聞いたら涙が止まらなくなるのは必定な就活鬱ソングとしても聞くことができるが、たぶんマジで立ち直れなくなるので推奨しない。一応「それでも信じてる」「弱い自分を愛せたときにもっと強くなれる」とか前向きな言葉もあるにはあるんだけど、そのくらいしか無い上にこれらの言葉は完全に負けている。後者の歌詞にしてもその前が「変わりたい 変われない」と変われない自分にもがき苦しんでいる様子なので、直近で弱い自分を愛せるようになったり強くなれる気配が全く無い。これまでの楽曲が学生時代だとすれば、今作だけはその先の社会に出るという壁で木端微塵というイメージ。壁を越えられる気がしないままに曲が終わってしまうが、これを乗り越えていくような楽曲に続いていってほしかった。一応C/Wの「Re:Birth Day」で復活への兆しを感じるものの完全に前向きさを取り戻すには至っていないし、いきなり心折れたままでラストリリースとかやりきれなすぎ。
★★★☆☆
アルバム未収録

Pray  

 

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