槇原敬之 自主レーベルBuppu時代 2011-2013

1つのレコード会社に留まらず、数年おきに移籍を繰り返すという落ち着きの無さからよっぽど気難しい人なんだろうなぁ…というイメージが芽生えていく中、ここでついに自主レーベルBuppuを設立。既に第一次ワーナーの頃に事務所は個人事務所を設立、00年代半ばには個人スタジオも完成していたので、これにて完全に自給自足の制作体制に移行した。ただ作品が全国流通したのは独立後最初のアルバムとなったライブアルバム『SYMPHONY ORCHESTRA "cELEBRATION 2010"〜Sing Out Gleefully!〜』からで、第1弾シングル「林檎の花」は何故かサークルKサークス限定販売、第2弾「Remember My Name」は配信限定となっていた。結局11年1月にトリビュートアルバム『We Love Mackey』をリリースしていたソニーがBuppuレーベルの流通を請け負う形になったようで、ライブアルバム以降はCD/DVDに限らずグッズまでもがSony Music Shopにて販売されている。ただしmoraでの配信は許可していないのか行っていない。

※2014年執筆、25周年を迎える2015年に2014年の2シングル追記予定

41st 林檎の花
11年3月11日
サークルKサンクス限定販売という狭い販路での発売となり、O社では対象外扱いとなった。セブン、ファミマ、ローソン、ミニストップなど主要コンビニは我らがさいたま市浦和近辺でもたくさんあるが、サークルKサンクスはものの見事に近所に全く無く、一応サークルKサンクスのネット通販サイトでも販売されたが送料の問題などいろいろあり、ここ最近の作風からそこまでして買うほどではないという結論になり、当時の入手はあきらめ(というか後述のように発売日以降しばらくはそれどころじゃない状態になった)、後日中古で発見して入手した。JR東日本東北新幹線新青森駅開業記念キャンペーンタイアップとして前年秋から使用され、先行配信もされていた楽曲。奇しくもCDとしての発売日があの2011年3月11日だったため、タイアップ先もサークルKサンクスによる入手も関東より北の人たちにとってはそれどころじゃなくなってしまった。穏やかなバラードナンバーで、「あのこ」のことが本当に好きなんだろうなと「君」を見ているという主人公がちょっと客観的な立場になっている。行間から主人公は「あのこ」もしくは「君」のどちらかに淡い恋心を抱きつつ応援するつもりのようにも思えるがその辺りはハッキリしていない。いくつかの解釈が可能なのが面白い。
★★★★☆
18thアルバム『Heart to Heart

C/W 素直 2011 Version
97年のシングル曲のリメイク。Album Versionも実質リメイクだったのでこれが3バージョン目となるが、ピアノ弾き語り+後半以降はストリングスが入っている。同じく静かに歌い上げる「林檎の花」のC/Wというポジションは非常に合っていたと思うけど97年当時の歌声の方が良かったかな。
★★★★☆
アルバム未収録

林檎の花


先行配信 Remember My Name
11年5月25日
自主レーベル第2弾作品として配信でリリースされたというより当初から「先行配信」としてi Tunesで配信とアナウンスされていたためか、現在公式サイトのディスコグラフィーではシングルとしてもその他枠でも一切扱われていない。ひたすら相手に友情を伝える優しい楽曲。王道といえば王道だけど、あまり真新しさはない。
★★★☆☆
18thアルバム『Heart to Heart


二つのハート
2人でいることの幸せをかみしめるストレートで暖かなラブソング。エヴァーグリーンというかエイベックス期に比べると優しさが戻ったような作風が暖かい。最後の3行「具合がよくなったら あそこの神社にいこう 二人でお礼にいこう」が出てくることで実は「君」が現在体調を崩している(風邪で寝込んでいる程度だと思うけど)現状が明らかになる構成がちょっと不思議な感じ。また神様神様連呼しすぎと言われたのを気にしたわけではないと思うが、神様という単語を直接出さずに神様への感謝を表現する辺りに今までにない工夫が。
★★★☆☆
18thアルバム『Heart to Heart


犬はアイスが大好きだ
槇原の犬好きは現在ではかなり広く知られる事となった。初期の頃はそんなに歌詞に登場しなかったが、『Home Sweet Home』で犬を見ていて"気づき"に発展するという「君が教えてくれたもの」を発表以降は、定期的に犬から気づきを得た犬ソングが登場するようになり、「赤いマフラー」も普通にラブソングだと思ったら死んだ犬に対してのラブソングだったというほどで、直接出さずとも犬に向けて歌った曲は多数あるのかもしれない。一応あまり犬犬言うのは自粛しているようではあったんだけど、自主レーベルになり何かが開放されたのか、この曲では犬全開。自分の飼い犬がアイスが好きだというだけで1曲作ってしまったという犬が大好きじゃないと作れない珍作。楽曲自体はさほど印象に残るものではないが、槇原犬ソングの全開点(?)としてピックアップしておきたい1曲。
★★☆☆☆
18thアルバム『Heart to Heart


LUNCH TIME WARS
日テレ系「ヒルナンデス!」テーマ曲として書き下ろしたOLの昼休み戦争ソング。槇原本人が女性目線で全面的に女性言葉の楽曲を歌うのは初めて。こういうことをすると間違いなくついにオネェな部分が!とか言われるのも必定だが、自主レーベルになったのでその辺も気にしなくなったのだろうか。かなりファンキーなノリで、サビもそのまま番組名を連呼するというものでタイアップには忠実だがある種お遊び曲的な部分もあり、番組出演者が踊る番組用のPVが制作されたり、発売前には「汐留OL編(うそ)」というサブタイトルも付記されていたという。なお2014年には今度は他局フジ系の「ノンストップ!」テーマ曲「Life Goes On〜like nonstop music〜」を担当。この際に槇原が「女性に向けた曲は初めて」とコメントしたことで、案の定今までのラブソングはすべて男相手だったのか!などと曲解がネット上の一部で広がったが、女性目線の曲が初めてだという意味である。ただそれにしたっておかしな話で、この曲の立場はどうなるんだという…。そもそも同じフジ系の「めざましテレビ」の企画でEarly Morningにも女性に向けた曲書き下ろして提供してたじゃないかよ!よって発言自体が番組のために書き下ろしたことの特別感を出すために適当にリップサービスしたものだったのかも…?
★★☆☆☆
18thアルバム『Heart to Heart


軒下のモンスター
主人公の「僕」が「好きになる相手がみんなと僕は違うんだ」と歌い、相手は「彼女もできずに結局夏祭りに僕を誘った君」と明確に主人公とその好きな相手のどちらも男性であることが明言された。このため当時はついにカミングアウトだと少々話題になったりもした。ここ数年徐々に状況を以前よりも特定してそれっぽいラブソングがチラホラ出てくるようになっていたけど今回は確かにこれまで以上にガッツリ踏み込んだなと思う。これも自主レーベルゆえか。非常にピュアな恋心が歌われているがそれをモンスターと表現し、ややトゲトゲしたサウンドに仕上げた辺りにはマイノリティの苦しさが見える。
★★★☆☆
18thアルバム『Heart to Heart


42nd 恋する心達のために
12年4月25日
韓国の舞台「コーヒープリンス1号」を日本リメイク版の舞台のために書き下ろした曲。そこにインスパイアされたのか純度の高いラブソング。基本的には主人公単独の葛藤が描かれているように思えるが、タイトルにもあるように「心達」とか「僕ら」とか複数形になっていて、同じ思いを抱えた同志たちと思いを共有しあうような歌詞がちょっと新鮮。自主レーベル移籍以降はアレンジのエヴァーグリーン度が格段に高まって、今作も曲の雰囲気はいいんだけど意外とメロディーが耳に残らなかった。
★★★☆☆
19thアルバム『Dawn Over the Clover Field』(Album Ver.)

C/W どんなときも。キャラメルVer.
森永ミルクキャラメルのCMタイアップ。CM用にリメイクしたのでそのままキャラメルVer.となったが、原曲よりもマイルドで優しくも、これまでのリメイクの中では最も原曲に寄り添った正当進化版のようなリメイク。特に『Best LIFE』での全編完全加工はあまりに遊びすぎでやりたい放題だっただけに、今回は真面目に作った感じ。
★★★★★
アルバム未収録

恋する心達のために


43rd 四つ葉のクローバー
12年10月24日
ドラマ「ゴーイングマイホーム」主題歌。初回を2時間SPでやり、起伏のない会話劇が淡々と進むという地味具合に1話リタイアしてしまった。確か公式サイトでもイントロ、ドラマ開始後にタイトルバックでかかった時もイントロ…と何故かイントロばかり使用されていたので、メロディーよりもケルト風味かつエヴァーグリーンなイントロの方が印象に残る楽曲になってしまったが、全体的にもそれなりに好きな楽曲だ。
★★★★☆
19thアルバム『Dawn Over the Clover Field』(Album Ver.)

C/W ゼイタク
タイトルからまた説教ソングか、ついには環境問題にでも切り込むのかと思ったら久々に恋人がいない1人の休日を満喫するもすぐに飽きて一緒にいることのゼイタクさに気づくというラブソング。大きなインパクトは無いが温かみは感じられる1曲だ。
★★★☆☆
19thアルバム『Dawn Over the Clover Field』(Album Ver.)

四つ葉のクローバー


Boys & Girls!
恋愛推奨ソング。年を重ねた余裕からか下の世代に向けて恋愛の素晴らしさを説き、恋をしようと啓発するという新境地な内容。Boys&Girlsと言っておきながらも"コンビニご飯1人食べて"などのフレーズから想定されているのは10代よりも20代くらいのいわゆる草食系と呼ばれる恋愛未経験の独身一人暮らし社会人といった印象。まあ20歳そこそこでももう槇原にとっては半分以下の年齢になったのでBoys&Girlsなのかもしれないが。1人の方が気楽という草食系の理由をほぼ1番だけで全否定しているので、一部では恋愛に興味が無いorモテない人達への挑発ソングとも揶揄され、個人的にも右から左へ言葉が突き抜けていった楽曲だった。
★★★☆☆
19thアルバム『Dawn Over the Clover Field

戻る