ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃

1969年公開の10作目。記念すべき10作目にして、本格的に子供向けになってしまった作品。初めて子供が主人公となり、出てくる怪獣シーンは全て主人公の少年の妄想世界となっている。タイトルになっているゴジラ・ミニラ・ガバラがメインとなっており、ガバラはゴジラシリーズでは今作にしか登場しないため、シリーズ唯一の「少年の妄想であって作品世界においても実在しない怪獣」ということになる。また「南海の大決闘」「ゴジラの息子」「怪獣総進撃」などの過去作品からの使い回し映像でカマキラス、クモンガ、アンギラス、ゴロザウルス、マンダ、エビラ、大ワシ(大コンドル)が一瞬だけ出てくるので一応オール怪獣大進撃というタイトルに嘘はない。

怪獣のシーンでは「南海の大決闘」からゴジラとエビラや大ワシ(当時はコンドルだったはずだがここでは主人公が「大ワシだ!」と叫んでいる)、飛行機との戦闘シーンをそのまま使いまわしている。また、「ゴジラの息子」からは、ゴジラがカマキラス3匹のうち2体を撃破して1匹が逃走する部分とクモンガとの戦闘シーン(雪が降る前に決着したように編集)がそのまま使われている。新たに撮影されたのはゴジラ・ミニラ・ガバラのシーンだけ。相当予算が削られた状態での制作だったようだ。

いじめられっ子で引っ込み思案な小学生、一郎(矢崎和紀)の両親は仕事が忙しく、家に帰っても両親がいない「鍵っ子」(鍵を持ち歩く子供のことを言うが今は死語だと思う)であった。帰宅した一郎は怪獣島と交信し、妄想の中で怪獣島へ足を踏み入れて様々な怪獣を見学。特にミニラとはお互いに言葉を交わすような仲となる。ミニラはいじめっ子怪獣のガバラにいじめられており、一郎はそんなミニラを激励するのだった。

一方で現実世界では5000万円を強奪した強盗2名が暗躍。一郎がこの強盗が落とした免許証を拾ったせいで奪還するために強盗は一郎を拉致。殺すつもりはないが、警察の警戒が強まっているので、一郎を人質に取って車を奪って逃げようと企む。再び妄想世界に出向いて、ミニラがガバラに立ち向かう姿を見た一郎は、現実世界においてもミニラを思いながら、勇気を出して強盗の元から脱出。一通りのいかにも子供向けらしいマヌケな強盗VS起用に逃げ回る少年の構図でドタバタが繰り広げられて、強盗2人を懲らしめて逮捕させる。

一躍有名人となり、自信をつけた一郎はいじめっ子にも勝利。彼らも仲間となるのだった。

 

これまでは子供っぽくなってきていても大人が主人公だったので良かったが、今回は演技もさほど上手くない少年が主人公ということで、かなり辛い内容になっている。テーマ自体は当時の社会問題(鍵っ子が中心だが、冒頭には公害問題を意識させるシーンが連続する)を取り入れているので、教育映画や時代を映したという意味ではいいのかもしれないが(そういう評価もあるが、逆にそうでもしないと評価できない)、やはり辛いものは辛い。

この映画を見たのは、ビデオで借りてきた小学6年生くらいの頃だったが、その当時の俺でさえ「子供すぎる…つまらない」と思ったものだった。タイトルに期待していたのに、ちょろっと出てきただけで、全然オール怪獣じゃないし、何より全部妄想世界というのが当時小6の俺でも「それはないだろ」って感じだった。子供は子供でこういういかにもな子供だまし的なやり方にはなめんなよ!とか思うものである。本当の当時の子供たちがどう捉えたかは不明だが、これで素直に喜べるのは(とにかく怪獣出てくればいいだけ)、せいぜい低学年までだと思う。しかも怪獣シーンの半分は使いまわしだわ、トドメにミニラは喋るわ…。悪夢のような作品だ。大人になって改めて見たけど、やはりきつかった。

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