BECK

2010年公開。監督は「20世紀少年」の堤幸彦。原作は漫画でアニメ化もされたことのある作品の実写映画化。主演は水嶋ヒロ。2009年2月に同じ事務所の絢香と無断で結婚。絢香は年内を持って活動を休止。水嶋ヒロは今作の公開が控えていたためか、今作の一連のプロモーションを終えると同時に退社して独立した。

平凡な日々を送っていた気弱な高校生幸雄こと通称コユキ(佐藤健)はある日、犬を助けた事をきっかけにニューヨーク帰りのギタリスト竜介(水嶋ヒロ)と知り合い音楽に目覚める。竜介は先に有名になったNY時代の仲間のエディに追いつくため最強のバンドを作ろうとメンバーを集めていた。ラッパーの千葉(桐谷健太)とベースの平(向井理)がメンバーに決定し、BECKとして活動を開始。コユキは学校の不良に目をつけられてギターを破壊されてしまい、竜介を怒らせるが竜介が住み込んでいる釣り堀の客だった斉藤(カンニング竹山)の店で働くことを条件に修理に出してもらう。さらに斉藤を師匠にしてギターの腕を磨いたコユキは転校生で音楽的に共感して親友になったサク(中村蒼)と共に竜介に認められバンドに加入。5人での活動が始まる。やがてコユキに天性のボーカルの才能がある事が発覚し、千葉のラップボーカルとコユキのロックバラードの2本の軸でバンドの認知度は上がっていく。ロックフェスへの出演が決まるが、欲望渦巻く業界の圧力により、フェスへの出演が妨害され、さらにNY時代の竜介とエディのやらかした事が原因で竜介が失踪する事態に発展し、バンドは存続の危機を迎える…。

バンドのサクセスストーリーということで大変に熱い内容。竜介の妹でヒロインに忽那汐里を起用しているが帰国子女という設定がそのままハマり、けっこうな当たり役になっている。

BECKは千葉のラップボーカルをメインにしていたが、途中からロックバラードでコユキがボーカルも取るようになる。で、桐谷健太は普通にラップを研究してラップボーカルを熱く披露しているのだが、佐藤健のその世界を揺るがす美声はオールカット。ボーカルだけ無音で表現され、映像がスローになり、音もゆっくりになったり、イメージ映像が入ったり、観客がノルことすら忘れて聞き入るといった演出が取られる。これが劇中で何回も出てくるのだが、最初は何だこれ…と思いつつ、とりあえず凄いんだろうなと無理やり納得していた。だが何度も何度もこの演出が繰り返され、クライマックスで千葉が熱く盛り上げた後の最終披露シーンでも下に英語詞の字幕が出て、バンド演奏もそのまま流れているのに、佐藤健の声だけが聴こえない。歌詞が出てもこれじゃメロディーが分からない。見ているだけで声が想像できるならいいけど、残念ながら歌メロが聞こえないインスト相手に、そのボーカルを想像することはできなかった。最後は「20世紀少年」で唐沢寿明が歌い切ったように歌唱力無視で音声を出してくれた方がたとえ下手でも感動できたのに…。ストーリーは良かったのに、近年稀に見る珍作だった。

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★★★☆☆

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