タイヨウのうた

『世界の中心で、愛をさけぶ』以降、ブームとなった純愛、病気、死という一連のブームの流れは2年以上に渡って続いている。今作もTBSが映画→ドラマのコンボで仕掛け、さらに『黄泉がえり』『NANA』で使われたような劇中歌大作戦で歌のヒットを狙うという何もかもベタベタな戦略であった。映画公開の1ヶ月後には沢尻エリカ・山田孝之主演でドラマ版も始まり、こちらは劇中歌こそ大ヒットしたものの視聴率的には不振に終わった。

雨音薫(YUI)はXPという病気で太陽の光に当たれない。夜しか活動できない薫は音楽という宝物を持ち、歌に生きがいを感じて毎晩ストリートライブをしていた。いつも窓から通りを通るのを見ていた孝治(塚本高史)に密かに好意を寄せていた薫は、ストリートライブの間に通りがかった孝治を追いかけて話しかける。孝治も薫の歌に感動し、やがて2人は仲良くなるが、薫の病気が進行して…。

という2人が純愛→病気進行→悲劇というある意味王道パターンの話。

ドラマを先に見てこれが予想以上につまらなかったのと、病気を題材に安易に泣かせる映画の連発にウンザリしていたので期待していなかったのだが、この映画からはこの2人の悲恋に泣きなさい的なあざとさはあまり感じられず、あくまで歌を大事に懸命に生きたという生き様、「前向きさ」が強調されている。登場人物たちが涙しまくるような悲しいシーンの部分に無駄に時間を使わず、ラストも薫が残した歌を胸に前向きに明るく生きる登場人物たちの描写に多く時間を使っているなど、ストーリーの割には印象は前向きで湿っぽくならずに非常に印象が良かった。

また役者として素人同然のYUIの起用もマイナス点の中和に多いに役立っている。全然染まっていないので、あざとさも何もない。YUI自身が学校と音楽を両立できずに学校を辞めてまでして音楽の道を強く希望して突き進んできたという音楽に対する真剣な想いは薫と重なって、多少台詞回しが素人でもとてもいい表情をしている。音楽活動では滅多に見せない笑顔もかわいい。薫の病気であるXPの描写がかなり作られた設定で、実際の症状から都合のいい部分だけ(「太陽に当たると死ぬ」)だけを抽出して、展開にあわせて他の症状(神経障害)をやはり抽出して使うなど、誤解を与えてしまうような描写はマイナスであるが、YUIの純粋さはそういうあざとさを吹き飛ばすだけの透明感がある。いい映画だった。

主題歌の『Good-bye days』もこの流れで聞くと凄く名曲。歌を通しての表現、想いにかけてはYUIと薫は完全に一体化していたように見えた。

ついでに友人の美咲役の通山愛里。なかなかいい感じだったが、出演作は少ない。ていうか元々04年に歌手としてデビューしていたようだが、よほど売れなかったのか1枚ポッキリでリリース停止。05年以降に演技方面に進出してきたという流れだった模様。その当時の所属先がソニーだった(YUIもソニー)。この繋がりは一体…。

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印象度★★★★☆

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