天国はまだ遠く

08年公開。加藤ローサ、徳井義実(チュートリアル)主演。チュートリアルの福田もおまけ的にチョイ役で出演している。瀬尾まいこによる小説の映画化。ほぼ原作通りに映画化されているが、徳井演じる田村の過去が一部付け加えられている。

仕事と人間関係、人生に疲れて絶望した千鶴(加藤ローサ)は自殺するために、電車で北へ向かう。タクシーの運転手にもとにかく北へ、誰もいないところへと注文を出した千鶴がたどり着いたのはほとんど開店営業状態の民宿たむらだった。そこには両親の死後、遺された民宿を継いだ田村(徳井義実)が1人でほぼ自給自足のような生活を送っていた。民宿に到着して、睡眠薬を大量に飲み自殺を決行した千鶴だったが、30時間以上ぐっすり眠っただけであっさりと目覚めてしまい失敗。自殺をあきらめた千鶴は民宿に残り、田村や村の人々との交流を経て居心地の良さを感じていく。

都会に疲れて傷ついた人が都会から離れた場所で癒されるという方向の話で派手な出来事は全く起きない静かな内容。監督の長澤雅彦はこういう地味な中に表情だけで見せたり語らせたりするのが非常に上手い人なので今回も安心感がある。監督の作風とかは他ではあまり気になることは少ないが、この監督だけは作風が非常に好きだ。千鶴のキャラクターは人生に一時的に疲れたという程度であまり深刻ではなく、けっこういい加減だったり態度でかかったり天然だったりするので自分では「うまくやっていけない」と言うが、見ている方は「この子なんだかんだ世の中幸せにわたっていけるタイプだな…」と思うはず。そういう意味では自殺まで決行するほど思いつめて来るものの、その後明らかになる本来の性格からは比較的軽いノリでやったみたいな感じもするので本当に疲れている人の共感はあまり呼べないかもしれない。そんな千鶴の挙動がかわいいのも見どころの1つだが、田村に関しては過去は多くは語られない。ただ千鶴よりも相当に深い何かを背負ってここにいるんだなというのは感じる。あまり演技経験のない徳井だが、地のままの関西弁でおふざけなしながら自然体な印象。

主題歌は熊木杏里「こと」。映画終了直前から1コーラスかかって、2コーラス目辺りから黒バックになるので比較的印象的にかかる。曲調は映画に合わせたようなシンプルなスローバラードなのでそこまで強力な印象は残さないが、映画の幕を静かに閉じてくれる。

 

★★★★☆

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