夜のピクニック

恩田陸による同名小説の映画化。高校の全校生徒が24時間かけて80キロを歩くという「歩行祭」が舞台。3年生の貴子(多部未華子)は3年間で最後のこの歩行祭で、ずっと意識していたが1度も話したことのないクラスメイトの融(石田卓也)に声をかけようとしていた。お互い避けるかのような様子に、クラスメート達はお互い好きあってると誤解して2人をけしかけるのだが…。実は2人は父親(既に他界。その葬式の時に初対面した模様。)が同じ異母兄妹だったのである。この複雑な関係ゆえに接する事が出来なかった2人の関係を変えることはできるのか?という青春ストーリー。撮影は05年夏ごろ。公開がその1年後の06年初秋となる。

2人が異母兄妹だという点は予告やあらすじでも堂々と書いてあり、実際に映画でも開始10分で明かされる設定である。しかし、これを重大なネタバレだと認識する人もいるみたいで、宣伝ではそこは隠すべきだという人もいるようである。感想レビュー系サイトでもこの点を隠して書いている人も多いが、そこを抜くと青春ラブストーリーと勘違いしてしまうし、設定の1つなんだから気を使う必要はないと思う。

人間関係を整理しておくと貴子と融がクラスメイトで異母兄妹。融の親友が忍(郭智博)で彼も同じクラス。この2人はずっと一緒に行動している。貴子の方はクラスメイトの梨香(貫地谷しほり)や千秋(松田まどか)らと最初は歩いているのだが、親友はクラスが別の美和子(西原亜希)とアメリカに転校してしまった杏奈(加藤ローサ)である。最初の方はクラスごとに行動しなければいけないため、親友の美和子は休憩時間にしか出てこない。後半の最後の20キロ(夜明け以降)からは自由歩行に切り替わるため、貴子と美和子、そして融と忍の4人がほぼメインになってくる。梨香千秋などのクラスメートの出番はほぼ皆無となる。個人的にはそこから先の方が友情や熱くはないけど当たり前のような青春が描かれていて良かった。

前半から夜にかけてのシーンも悪くは無いのだが(映像的には夜のシーンはキレイだし、昼間と違って日常からさらにかけ離れた世界に入っていく感じがして理由も無くワクワクしてくる)、ただ単に歩いてるだけではつまらないと思ったのか、やたらぶっ飛んだギャグやキャラが連発されたり、意味不明の寸劇風の妄想、貴子の心の葛藤を指摘するCGアニメキャラなど、ウケ狙いの要素を連発しているのだが、個人的に滑りまくりでことごとく笑えない。ひたすら寒いだけであった。80キロも歩くわけだから疲労によって段々と全体的にトーンがダウンしてそういったシーンが少なくなる後半はようやく青春モノっぽくなってくるし、貴子と融の複雑な状況を巡る話がいよいよ本筋に入っていくので非常におもしろかった。ギャグシーンさえ寒くなければ即DVD買ってもいいくらい後半は良かっただけに前半が惜しい。

主演の多部未華子を始めとして若いキャスト陣はどれもあまり知らなかったがとても印象が良い。唯一最初から知ってた加藤ローサが出てるのに何でこんなにクレジット位置が低いのかと思ったら既に転校しちゃってて出てくるのは回想シーンのみだったからだった。杏奈の代わりに去年も飛び入りで歩行祭に参加したという、杏奈の弟が唐突に登場するのだが…。まあ結果的に杏奈も現代では一切出てこないのに物語に大きく絡んでいくというおいしい役どころではあるのだが…。単純に加藤ローサはもっと見たかった。

特別版  通常盤 ピクニックパック

印象度★★★★☆

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