JUDY AND MARY シングル回顧1~1993-1996~
女性ボーカルに男性演奏陣というソニーとしてはREBECCAに続く存在として大ブレイクした90年代を代表するポップロックバンドJUDY AND MARY。
結成の経緯が変わっていて、元々恩田快人が既に別のバンドでメジャーデビューを果たしている中で、サイドプロジェクト的に始動。インディーズで作品をリリースするもあくまでサイドプロジェクトだったので1度解散したが、恩田快人の中で熱意が高まって再始動となり、この過程で参加できなくなったギタリストがTAKUYAへと変わって現メンバーが揃った。
このため恩田・五十嵐はデビュー時点で既にアラサー、YUKIとTAKUYAは20歳そこそこと年齢にやや開きがあった。さらにビジュアルが4人ともバラバラで全く噛み合ってそうに見えないといういびつさも異色だった。
初期~中期は恩田快人がメインライターだったが、中期以降ソングライターとしてギタリストとして、プロデューサー佐久間正英の後押しもあって自我を開放したTAKUYAがメインライターへと切り替わり、末期には編曲プロデュースまでTAKUYAの名義になってしまうなど、バンドの主導権は極端な偏りを見せた。それゆえに完全にやりきっての悔いの全く残らない全力で駆け抜けた短くも濃い活動期間となり、再結成ブームの中においても再結成される可能性が最も低いバンドの1つでもある。
1st POWER OF LOVE
93年9月22日
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
記念すべきデビュー曲。だが、後のパブリックイメージとはかけ離れたドタドタしたポップともロックともキャッチ―とも言い難い何とも言えないノリの楽曲。明確なサビも存在せずに淡々と進行する。インディーズ時代のアルバムにおいてもこの曲(と『BLUE TEARS』)の存在は若干浮いていた。へヴィメタル系のバンドに所属していた恩田快人がまだYUKIの歌声に合うポップ寄りな作風に合わせていくのに不慣れだったのか、とりあえず激しくしないようにしてみた!といった感じのサウンドメイクは結果的に妙に音がスカスカというどっちつかずな作風になってしまったようにも思う。
★★★☆☆
インディーズアルバム『BE AMBITIOUS』(原曲)
1stアルバム『J・A・M』
1stベスト『FRESH』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
2nd BLUE TEARS
93年11月21日
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
後年になるほど人気曲へ成長していった曲だが、実は100位圏外であり、全シングルの中で唯一O社売上記録が残っていない。これまた明確なサビが無い曲だが、前作と異なりむしろ全編サビのようなキャッチ―かつ少し切ないメロディーで駆け抜けていくウィンターソング。
どこか漂う切なさからは青春の匂いも感じさせるが、そこのところに目をつけたのか13年後、バンド解散からも5年が経過した2006年に映画『シムソンズ』主題歌として抜擢された。
インディーズ時代のアルバムでは正直この曲だけ方向が違う感じではあったが、後の方向性を予兆していたような作風だけに早くも初期の名曲オーラが漂っている。ただ本格的にこの曲いいなと思ったのは映画『シムソンズ』を見てからだった。歌詞がそこまで映画の内容にハマっているわけではないんだけど、ストーリーと曲調は非常にマッチしていた。
★★★★☆
インディーズアルバム『BE AMBITIOUS』(原曲)
1stアルバム『J・A・M』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』(ラストの吹雪の音が長い)
3rd DAYDREAM
94年4月21日
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
1stアルバムからのシングルカット。またしても作風がコロッと変わっており、今作に関しては同じ女性ボーカル+男性演奏陣体制のレーベルの先輩バンドREBECCAの王道を再構築した感じ。REBECCAとはキーボードサウンドの比重や時代が変わった事による音の響きなどで大きく違いがあるものの、この曲に漂う疾走感は80’sの匂いが漂う。当時はこのレトロさが微妙だと思っていたが、慣れてくるとこれはこれで普通に聞ける。またこの曲でMステやCDTVゲストライブに初出演したためか、初期映像として特に00年前後のCDTVのゲストライブ特集映像でよくかかっていたので初期3作の中では1番最初に印象に残った。
★★★☆☆
1stアルバム『J・A・M』
1stアルバム『J・A・M』
1stベスト『FRESH』(完奏するバージョン)
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』(完奏するバージョン)
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』(完奏するバージョン)
4th Hello! Orange Sunshine
94年8月21日
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
トップ20入りもしていないものの10万近いヒットを記録した。後追いで聞くとここから本格的にJUDY AND MARYが始まったと感じられるガールポップでキャッチ―な楽曲。前3作ではどうにも軸が定まっていない感じがしていたが、この曲で進むべき方向性を見出したようなイメージ。
YUKIの放っておいても漂うような幼い雰囲気とパンキッシュなサウンドをぶつけるのもそれはそれで味があったけど、もっとストレートに生かしていくとなるとキャッチ―でポップで耳障りのいい今作の方が断然売れ線でもあった。
後に活動休止~休止明けの時期にかけて恩田快人はWhiteberryの初期作品の作編曲プロデュースを手掛けたが、当時リアル中学生だったWhiteberryに概ねこの頃の雰囲気を継承させていたような印象がある。
C/Wの「ラジオ」もベスト盤皆勤賞であり、C/Wの中では最も知名度の高い名曲。
★★★★☆
2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
5th Cheese “PIZZA”
94年11月2日
作詞:YUKI、作曲:TAKUYA
前作のポップさを継承しつつもレゲエ調なのでどこかゆったりまったりした印象も受ける曲。レゲエ調ゆえのまったりさが災いしてかなんだか妙に存在感が薄く、ベスト盤『FRESH』にスルーされた四天王の1曲、しかも四天王の中では唯一シングルカットではなかった曲という憂い目にあっている。四天王全てファン投票ベストでは選曲されているので不人気というわけではないだろうけど(『FRESH』未収録だったシングルは全部救済されているので被りを考えたファンが集中的に投票した可能性も)…。
ピザのチーズのとろけ具合と、恋にとろける様子を重ね合わせた歌詞の視点は独特でユーモラスだ。
C/Wの「クリスマス」はキャリア唯一のクリスマスソングで直球ストレートなポップロックナンバー。「Cheese “PIZZA”」がレゲエ=夏というイメージに対して季節が真逆なので2曲の対比を考えるとなかなかバランスのいいシングルだと思う。
★★★☆☆
2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
6th 小さな頃から/自転車
95年1月21日
これ以前にも公式サイトや現在のウィキペディアの表記が両A面になっているシングルはあるがいずれもジャケットには思いっきり2曲目を「C/W」として表記していた。今作が当時のシングル盤ジャケットにおいてもC/W表記が無く、2曲が並列表記された初の両A面シングルとなる。
小さな頃から
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
どちらかというとバラードに分類されそうなミディアムナンバー。映画『シムソンズ』では挿入歌として使用された。「BLUE TEARS」にも通じる世界観で小さな頃の純粋さを思い出して明日への希望を見出す歌詞の内容は初心を思い出させてくれるためか、目標へ向かっていく時にこの曲に励まされた、この曲を聞くと学生時代が蘇るというリスナーも多そう。TAKUYAにとっては当初弾いているだけだったギターを今作辺りから自身の色を出せるようになったとも語っているそうで、ひたすら淡々としているリズム隊に対してアルペジオなどギタープレイが光る。
★★★★☆
2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
自転車
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
次の「Over Drive」へ続いていくようなストレートな王道ポップロックナンバー。同系統でいい曲がたくさんあるのであまり特筆すべき点は無く、シングルの中ではやや影が薄いところはあるがTAKUYAが主導権を握る前のポップでストレート、そしてこれまた子供の頃を思い出させる無邪気な元気さが眩しい。恩田快人にあってTAKUYAに無い作風ってここのところのセンチメンタルさかなと思う。
★★★☆☆
2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
7th Over Drive
95年6月19日
作詞:YUKI、作曲:TAKUYA
ブレイク作に位置付けられ、同時にファン人気No.1でもある代表曲中の代表曲。切れ味のいいギターのイントロから抜群に爽快。ポップでロックでキャッチ―であると同時に年月を経ても色褪せない普遍性もある永遠のスタンダードのような…。個人的にはまさにこれが90年代半ば以降のJ-POPバンドの王道だと思う。リアルタイムでは聞いていないんだけどイントロを聞くと90年代が一瞬にして蘇る。
★★★★★
3rdアルバム『MIRACLE DIVING』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
8th ドキドキ
95年10月21日
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
大ヒット作に挟まれているのでやや影の薄い立ち位置だが、これまたとびきりポップでキャッチ―なナンバー。ドキドキというより抑えきれないワクワクとかウキウキ感がにじみ出ていて問答無用に明るい気持ちになれる。
解散後に曲が始まる前の未公開音声が追加されていくという2段変化を果たしていった稀有な経歴を持つ曲でもあり、『The Great Escape』では曲前にYUKIによるカウントが追加され、『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』ではカウントの前にさらにYUKIの喋っている声が追加された。
★★★★☆
3rdアルバム『MIRACLE DIVING』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』(YUKIによるカウント追加)
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』(カウントの前にYUKIの喋りがさらに追加)
9th そばかす
96年2月19日
作詞:YUKI、作曲:恩田快人
アニメ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』初代OP。当時まだまだアニメはアニメソングでありヒットを狙うものでは無かったが、ビーイングが『スラムダンク』で主題歌占拠を行い大ヒット。ソニーもそれにならってこのるろ剣でヒット作を生み出した(完全に占拠はせずに一部は他社も参加)。すぐには乱用しなかったが、ドラマタイアップやCMタイアップで容易くヒットが飛ばせなくなった00年代序盤以降のソニーはアニメ主題歌占拠によるタイアップ御用達レーベルみたいな状態になり、「BLEACH」「NARUTO」「銀魂」を筆頭にこのパターンを乱用。ソニーアニメタイアップパターンの最初の1歩がこの曲だったともいえる。
ただメンバーはるろ剣を全く知らなかったらしく、しかも突如アニメタイアップが決まったから3日で書けという緊急案件として話を受けたため、詳しい内容も知らされず、仕方ないので知っていたアニメ『キャンディ・キャンディ』をイメージしたという。そのせいもあってか明治初期を舞台にした剣術バトル作品であるるろ剣とは全く共通するところが無いタイアップ曲となったが、当時は人気アニメにJ-POPが主題歌というのと、結局アニメを見ている子供たちは聞くきっかけがあっていい曲であればハマるというのを証明するかのように自身最大のミリオンヒットを記録。
作品内容と全く関係が無かろうと当時の子供たちにはるろ剣=この曲であり、それはドンピシャ世代の中川翔子がJUDY AND MARYのトリビュートアルバムでこの曲を取り、自身のアニソンカバーアルバムで今作の後任OPとなった川本真琴「1/2」を選曲しているのも分かりやすい一例といえる。そう考えるとみんな好き勝手にタイアップチャンスとして仕事受けていた中でタイトルに作品名の英訳を入れたT.M.Rは律儀であり、後にアニソン専属アーティスト化したのも納得…。
個人的にも初めてリアルタイムで聞いたのがこの曲。ただしるろ剣は全く知らず、大ヒットしていたので知ったという感じ。そのせいばかりでもないがサビよりも何故かAメロを聞くと96年当時の空気感を思い出す。当時はとにかくキャッチ―ということで聞いていたが改めてCDでちゃんと聞いてみるとこの曲なかなかとんでもない。イントロからギターが暴れまわるが、キャッチ―な歌メロに対してギターは終始ギターソロを弾いてるかのように縦横無尽に暴れ回っていてなんだかとんでもないことになっていて凄い。
「Over Drive」がTAKUYA作曲ながら恩田快人がリードしてきたJUDY AND MARYを踏襲した曲だったのとは真逆で今作は恩田快人の作曲だが、TAKUYAがリードしていくこの先のJUDY AND MARYだった。結果的に恩田快人の最終A面曲にもなったが、ここで綺麗に主導権が入れ替わったのを象徴する1曲でもあると思う。
★★★★★
4thアルバム『THE POWER SOURCE』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
10th クラシック
96年10月28日
作詞:Tack and Yukky、作曲:TAKUYA
勢いのままにこれも大ヒット。今作もまたギターは暴れ回っているが、よりメロディーの良さが際立っていてメロディーメイカーとしてのTAKUYAの素晴らしさが最も出たのが今作だと思う。本当にグングン上り調子だったんだろうなぁ…。YUKIが赤いドレスで歌うPVの印象も強い。
★★★★★
4thアルバム『THE POWER SOURCE』
1stベスト『FRESH』
2ndベスト『The Great Escape-COMPLETE BEST-』
3rdベスト『COMPLETE BEST ALBUM 「FRESH」』
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