鈴木あみ シングルレビュー〜1998-2000〜

「ASAYAN」は見ていなかったので、小室プロデュースで何か大規模オーディションで選ばれた子らしい、というのが当時の印象。勘違いしてはいけないのは同じ「ASAYAN」のモーニング娘。とかと違って、小室が選んだわけでも、審査員が選んだのでもなくて、視聴者の電話投票でグランプリになったという点である。だから小室にしてはそんなに高音押しでも無ければ、歌唱力も危うかったのである。当時投票したという80万人にとってはかわいければ良かったのである。たぶん。また小室の名前が通じた最後の歌手でもあり、アイドルというよりかはアーティスト的な印象が強かったのもその後つんくが塗り替えるJ-POPシーンとは様子が異なっていた(SPEEDもそうだったがアルバムがドカ売れしている点からそれが分かる)。

1st love the island
98年7月1日
明るいアイドルサマーポップ。当時の小室は既に売れ線を離れ始めていた時期で、雲行きが怪しくなっていたもののデビュー作から派手な実験をすることもなくヒット性のある1曲である。かなりロボボイスながらけっこう限界ギリギリのキー設定にしてあるようで、その辺りのギリギリ感ある種の儚さを呼んでいる。計算していたなら凄い。なおこのシングルのみ絶滅の一途を辿り始めていた8センチシングルだった。また01年になって事務所と親が揉めて引退状態に陥った際にはファンが奮起。一斉に今作を購入してデイリー50位に送り込むという運動が巻き起こった。当時既に8センチCDがJ-POPシーンから駆逐された直後だったので、探すの大変だったんじゃね?という気がしなくもない。これを受けてベスト盤の発売が決定した。
★★★★☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


2nd alone in my room
alone in my room 98年9月17日
前作と同じ線でもう1曲!という印象のある曲。サビで「寒くなってきたね」と歌っているので初秋の曲なんだけどイメージが夏っぽくて、前作からすぐにリリースされた印象があるのでしばらく混同していた。ただ前作に劣る印象は微塵もなく、2番煎じ感は無い。どちらもいい曲である。それにしてもジャケ写は何でこんなにふてくされているのだろうか…。曲中の切ない思いを表現しているのか?
★★★★☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


3rd all night long
all night long 98年11月5日
一転してシリアスでカッコいい曲調。PVでも黒っぽい格好していてカッコよかった記憶がある。ただサビがカッコいい割にそこに至るまでは平たんすぎて印象皆無。しかもかっこよくてもロボボイスという妙は絶妙というよりかは若干微妙な感じもしなくもない。ただかなり実験的なサウンドながらそれだけにとどまらずカッコいい印象が勝っているのでこれはこれでOKだったのかなとも思う。個人的に1番好きなジャケ写。
★★★☆☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


4th white key
white key 98年12月16日
ウィンターソング好きな俺としては当時初めていいなと思った曲。50万枚を越え自身2番目のヒット曲となっている。結局CDを手に取る(レンタル)のは1stアルバムまで待つことになるんだけど、1stの中では1番好きな曲だった。R&Bっぽさもありつつ、極めて聞きやすいJ-POPとしてまとまっているのでバランス加減も絶妙。2年後にはかなりとんでもないことになってDNAごと破壊していく小室にとってもこの頃はまだ時代の中心にいて計算通りだったのだろうか。ただよく見るとクレジットは部下の久保こーじと共作な上に久保の名前が前になっている…。限界ギリギリのBメロからサビで一転して低音になる構成はなかなか面白い。なおwhite key探すより自分に合った曲のキーを探した方がいいということになったのか、鈴木亜美が2011年にベスト盤であみ時代の曲を収録した際は全面歌い直しのついでに全面キー下げを敢行している。
★★★★☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


5th Nothing Without You
Nothing Without You 99年2月17日
ついに1900年代最後の年となって、混沌とした世紀末の空気が漂う中、時代をリードしてきた小室もいよいよ混沌としてきたのがこの年である。妙にサウンドに凝りまくった結果、かなり複雑怪奇なことになっているが、ヤケクソ気味のサビは意外とキャッチーで耳に残るというマニアックとポップ性がせめぎ合う奇跡の1曲。タイアップがゲーム「モンスターファーム」だったので当時はモンスター感を表現しているのだろうかなんて思っていた中2の冬。個人的に笑顔が1番カワイイジャケ写。
★★★☆☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』


6th Don't leave me behind/Silent Scream
Don't leave me behind / Silent Stream 99年3月17日

Don't leave me behind
前作から1ヵ月、アルバム1週間前にリリースされた超先行シングル。Marc&Amiのクレジットで本人が初めて作詞に参加したA面曲。前作に続いて複雑怪奇な楽曲で、トラック自体は凝っているのでそれなりにいいんだけど、メロディーのキャッチーさが皆無。こんな分かりにくい曲をわざわざアルバムの1週前に切らなくてもいいんじゃないか、というかただでさえアルバム曲少ないのに減らすなよ…という気がしなくもない。ただ実際アルバム曲の宣伝としてはある意味でこの上なく正しい曲であった。要するにアルバム曲はパッとしない曲ばかりだったのである…。
★★★☆☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)

Silent Scream
両A面だがこの曲も普通にアルバムに収録。CMタイアップがついているからシングルにしただけと思われるが扱いは完全にC/Wというかアルバム曲といった感じ。なおこの曲のみ完全に部下の久保こーじとMARCだけで制作されており、小室が作詞作曲編曲に関与していない(プロデュースのみ)。
★★★☆☆
1stアルバム『SA』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


7th BE TOGETHER
BE TOGETHER 99年7月14日
TM NETWORKのカバー。同時発売のモーニング娘。「ふるさと」との「ASAYAN」対決では余裕で蹴散らし(モーニング娘。は春までの勢いから一気に低迷して6位、危機に陥る)、浜崎あゆみ「Boys&Girls」との接戦も制して初の1位を獲得。2週目にはあゆに抜かれてあゆは更なる大ブレイクミリオンを果たして一気に浜崎あゆみの時代が到来する事となるが、87万枚を売り上げて鈴木あみにとっても最大のヒット作となった。TM NETWORKも再注目されて再始動、この曲はTM NETWORKにとってはアルバムの1曲でシングルではなかったが、大幅に知名度を上げたので以降のTM NETWORKのベストでも優遇されるようになった。当時の他の曲と比べてもストレートにキャッチーな1曲で、鈴木あみというとやはりこの曲というイメージ。TV出演などではサビの「Be Together Be Together」を始めとする英語部分はテープ音源で、あみは「今夜は〜」「朝まで〜」「踊るよ〜」「Shake my soul」しか歌っていなかった。その事を同級生に突っ込まれた同級生は「C/WのBAND MIXでは全部歌ってるんだよ!」とマニアックな反論をしていたのが印象的。シングルでは初めてレンタルした1曲だが当時テープ録音だったので現在は音源が手元にないのだが、確かにC/Wの別バージョンではあみ本人が早口で全編歌っていたような記憶がある。
★★★★★
2ndアルバム『infinity eighteen vol.1』(Shadow Dancing Mix)
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


8th OUR DAYS
OUR DAYS 99年9月29日
初のバラード。前作の勢いを恐れたKinKi Kidsスタッフが緊急で「雨のMelody/to Heart」の発売を1週ずらした(このシングルには発売日が9月29日のまま印刷されている)。実際には同時発売だったらKinKiが1位になっていたのだが勝手に敵がいなくなってくれたので余裕で1位獲得となった。切なさ漂う1曲だが、盛り上がるとまた元に戻ってしまい一向にサビがやってこない。チャート等でかかっていた「Just the way you are」の部分が登場するのは何と最後の最後。1回焦らしてAメロに戻る程度の曲はけっこうあるが、最後までサビを焦らす曲は珍しい。当時はまったりしていてそんなに好きな曲ではなかったが改めて聞いてみるとトラックもメロもけっこう好きな曲だ。
★★★★☆
2ndアルバム『infinity eighteen vol.1』(Orchestral Winter Mix)
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


9th HAPPY NEW MILLENIUM
HAPPY NEW MILLENNIUM 99年12月22日
限定生産シングル。ミレニアム(2000年)をテーマにした曲。ミレニアムという瞬間というかこの時期の世相は新時代の幕開けという期待以上に何か混沌とした感じで、特にJ-POPシーンは宇多田ヒカルやらDragon Ashやらとかつてない音楽性が押し寄せてかなり混沌としていた。同じ新世紀をテーマにした曲では広瀬香美もかなり複雑化した方向に走っていたし、小室が安室に提供した「LOVE2000」もかなり混沌としていた。そんな混沌としまくりの状況の中だけにこの曲も全くハッピーではない。イントロからAメロまではクリスマスっぽい雰囲気が漂っているものの、サビで何故か暗くなる。ラストサビになるとようやくサビにタイトルが登場するが、「もうすぐ時代は生まれ変わろうとする 2000回目の楽園をふたりでお祝いしよう」とこのメロとトラックで歌われても全くお祝いする空気ではない。むしろその前に書かれている「すぐ世界はメチャクチャになりそうな世紀末」というフレーズの方がこの曲を的確に表現しているし、実際この後911テロだなんだで世界はメチャクチャになった事を考えるとあながち間違ってはいなかったのかもしれない。作詞は前田たかひろと鈴木あみの共同名義だが少なくともこのフレーズを考えたのがあみだったら末恐ろしい高校生(当時)である。1000年に1度しかこのテーマで曲は作れないので文字通り1000年に1度の怪曲
★★★☆☆
2ndアルバム『infinity eighteen vol.1』(2G Mix)
1stベスト『FUN for FAN』


10th Don't need to say good bye
Don’t need to say good bye 00年1月26日
本人も作詞に参加した(小室哲哉、小室みつ子との共作)卒業ミディアムバラード。極端に売上を下げたわけではなく、むしろ初動で27万も出したものの5位。そう、あの伝説の週だった。さらに夏に「BE TOGETHER」で勝利したモーニング娘。がとんでもないことになっており2度目の対決では大敗。時代の移り変わりは早かった…。というわけで物凄いメガヒットが生まれまくっていたので正直かなり埋もれてしまった感はあるが、鈴木あみ時代末期屈指…じゃなくて唯一の名曲。切なさも漂っていて卒業ソングとしてはグッドな内容だが…しかしそこはやはり末期。そこはかとなく不気味な感じも漂っておりそれは全編にわたって施されたオートチューン。ボーカルが終始震えまくっており、CDなのにテープが擦り切れたかのようである。確かに音程は危うい方だとは思うが、それは小室がオーバーキー設定や無茶なメロディー展開にするからであって、この曲に関しては少なくともそんなにかけまくるような曲とは思えない。技術がどんどん進歩していったのでよっぽど試したかったのだろうか。オートチューンの無駄遣いのお手本のようなロボトミーボイスが響き渡ってせっかくの名曲が微妙なことに…。
★★★★☆
2ndアルバム『infinity eighteen vol.1』
1stベスト『FUN for FAN』
2ndベスト『Ami Selection』(キー下げリメイク)


11th THANK YOU 4 EVERDAY EVERYBODY
00年4月12日
紅白で全く歌えていなかったのでお茶の間レベルにもその怪曲っぷりを存分に知らしめたポップの皮を被った怪曲。パッと聞きはけっこう明るいポップソングだが、それは巧妙なフェイクである。無駄に低音&適当すぎて音程が取れないAメロからして何かがおかしい。サビはそこそこキャッチーだが既に音程がガタガタなので立て直すのも苦しく、「明日をのぞきたい まだまだ怖くない」という普通に前向きな歌詞の直後に「だけどDNAはたしかに くずれさって日々へってく」という破壊的ワードが繰り出される。この曲が一部では聞き手のDNAを破壊する怪曲と揶揄されるのはまさにこのフレーズ故である。1番では続けて「だけど THANK YOU 4 EVERDAY EVERYBODY」と歌われるが、連続で「だけど」ってもう意味が分からない。このDNAくだりの歌詞は前後と全く繋がりが無く(他の部分は女の子の日常)、そもそも最初の「だけど」の時点で何が「だけど」なのか意味が分からない。サビだけでなく2番Aメロでも日常をDNAのせいにしているが、何故いきなりこの歌詞の中で遺伝子レベルの境地に行きついてしまうのか。作詞は小室、前田、あみの3人共同名義。3人もいたのに誰もおかしいと思わなかったのだろうか…。直後にリリースされた3rdアルバムはなんと前作から2ヶ月でのリリースという謎の急仕上げでシングルが今作しか無く、またミリオン売った前作のあまりに手抜きな出来にリスナー離れが超加速して40万枚程度に沈んだ。こうして小室神話が崩壊した。
(星も崩壊)
3rdアルバム『INFINITY EIGHTEEN VOL.2』
1stベスト『FUN for FAN』


12th Reality/Dancin'in Hip-Hop
Reality/Dancin’in Hip-Hop 00年9月27日

Reality
前作で既に末期状態だったが、その先には崩壊した後の何も残っていない荒廃した大地に佇んでいるかのような境地が待っていた。抑揚無さすぎなまるで鎮魂歌。キャッチーさ放棄、生きている気がしない元気のない歌声、そうとしか歌えないような覇気の無いメロにアレンジ。どこからどうとってもこの曲の良さを語る事は難しい。キャッチーさの薄れた地味なR&Bが流行っていた時期ではあるが、これはそれらとは様子が違い、マジ平坦。
★★☆☆☆
1stベスト『FUN for FAN』

Dancin'in Hip-Hop
3rdアルバムのアウトテイクかのような謎のヒップホップ。日本語詞が2フレーズしかなく全編にわたって英語詞。ラップをしているのはあみというよりゲストラッパーであり、あみは同じメロディーをひたすら繰り返すのみ。ていうかダンシンヒップホップ♪以外にこれといったメロディーが無いって手抜きどころの騒ぎじゃねぇ…。怪曲も鎮魂歌も通り越してもう何物でも無い。何物でも無いのなら一体何だというのか?表現不可能、正体不明のトラックである。この頃には親と事務所が契約関係で揉めて裁判に突入。紅白で国民のDNAを崩壊させたのちに無期限の休止を余儀なくされ、結果的には鈴木あみ時代最後のシングルとなった。騒動に小室は関係なかったはずだが、既にやる気が無かったのか、曲が書けなかったのかは不明である。なお作詞は小室とあみの共同名義。
★☆☆☆☆
1stベスト『FUN for FAN』

 

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