三大怪獣 地球最大の決戦
前作から8ヶ月、同じ1964年に公開された5作目。「空の大怪獣ラドン」、前作「モスラ対ゴジラ」の続編という扱いになっており、ラドンが阿蘇山から復活するところは『ラドン』の設定のオマージュ。ただし『ラドン』では2匹とも阿蘇山で絶命しているため、別個体、もしくは死んだ2頭の子供という説もあるが明言はされていない。前作に続いて小美人(ザ・ピーナッツ)が登場し、「2匹いたモスラのうち1匹は死んじゃった」と発言したり、他にもモスラがゴジラに勝ったことがあるなどの台詞でそれが示されている。登場怪獣はゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラの4体だが、キングギドラが宇宙怪獣で今回の敵なので「三大怪獣」とはキングギドラ以外を示している。ただし71年にリバイバル上映された時には「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 地球最大の決戦」と改題されてしまい、何故かラドンだけ表記されないという哀しい事態になっていたという…。前述のように前作でモスラは双子の幼虫2体だったが今作では1体は死んでしまったとされ、1体のみの登場で幼虫のままで成虫姿は登場しない。
また2作目主人公である月丘を演じた小泉博、前作のヒロインだった星由里子(今回もまたヒロイン)、3作目に出ていた若林映子、1,2作目の山根博士を演じた志村喬(髪型が思いっきり変わっている)、1作目(芹沢博士)や3作目でも別の博士役で出演していた平田昭彦など、これまでの作品に出演していた俳優陣が大挙して再出演しているが、小美人を演じたザ・ピーナッツ以外は全員別人の役である。ザ・ピーナッツの小美人は今作が最後。
冬だというのに異常に暖かい日々が続いている地球で異常気象が起こりまくる。黒部ダム付近には謎の巨大隕石が落下。一方でセルジナ公国のサルノ王女(若林映子)の乗る飛行機が暗殺犯により撃墜されてしまう。直前に謎の声の導くままに脱出した王女はその後、金星人と名乗り各地に出没して地球が危ないという旨の警告を出す。誰も予言は信じていなかったが、予言どおりにラドンが復活し、王女が乗らないほうがいいと言った船はゴジラに襲撃された。
死んだはずの王女=金星人ではないかと考えた警察官の進藤(夏木陽介)は単独で捜査を開始。その妹でマスコミ関係者の直子(星由里子)は、金星人の予言をネタにしようと彼女を保護する。その矢先、滞在するホテルを暗殺犯が襲撃。テレビ出演のために来日し、金星人の予言に何か感じるものがあってついてきていた小美人の機転で窮地を脱した一行は、王女の記憶を取り戻すために塚本博士(志村喬)を訪ねる。
検査の結果、異常は見つからず、王女の祖先がかつてキングギドラにより金星が壊滅した時の生き残りであると語られた。キングギドラの出現を予知する金星人。直後に隕石からキングギドラが出現。一方でゴジラとラドンはケンカを続けていた。
キングギドラの強さは驚異的であり、単独では勝てないという。小美人はモスラを呼んでゴジラとラドンを説得してもらい、一緒に戦えば勝てると提案。モスラを呼ぶが、ゴジラとラドンは「いつも俺たちをいじめてきた人類を守る必要はない」(訳:小美人)と絶妙のコンビネーションで揃って拒否。仕方ないのでモスラが単独勝負を挑むが、幼虫なので戦いようがなくあっさり吹き飛ばされてしまい、見かねたゴジラとラドンが参戦。激しい戦いの末に、キングギドラは敗走。またこのドタバタによる山崩れ等で暗殺犯は全滅し、金星人も王女の意識を取り戻したのだった。
なんといっても今作はキングギドラの登場シーンだ。岩から煙が舞い上がってその煙がキングギドラの形になっていくというCGもないこの時代にしては恐ろしいほどかっこいい登場シーンは必見である。全体的にSF娯楽色が強くなっており、今回はついに金星人が登場。不気味さとインパクトはあるが、次はX星人とか出てきちゃうのでまだマイルドか。どっかの国の王女なのに全員あからさまに日本人、日本語なのはご愛嬌。またゴジラが人間っぽく描かれるようになったり、地球を守るヒーローのような立場に変わっていくのも今作からだったので転機の作品だったともいえる。
戦闘シーンではゴジラの熱線が何故か1作目のような白い息に戻っていたり、直撃を受けたラドンがあまりダメージを受けていなかったり、そもそもキングギドラとの対戦時に一切熱線を使わないなど謎が多い。キングギドラ相手に岩を投げたり突撃したりするだけなのは何故なのだろうか。キングギドラは容赦なく光線を連発するが、これも「イテテテテテ!」っていう感じで手で抑えるだけ。今作では光線の弱体化が激しい。ラドンはゴジラを運んで飛行までしてしまうなどなかなか強い。
ますます3作目の巨大ゴリラの弱さが浮き彫りに…。そんな強いラドンだったがけっこう出てて善戦してるんだけど(モスラを乗せて飛んだりとサポートもバッチリ)、羽ばたくか突撃するか突っつくしかないのでどうしても地味になってしまうのは仕方ないか。結局、決めたのは幼虫の姿ではほとんど活躍機会がなく、作中大半で説得仲裁役、戦闘では吹っ飛ばされ要員になっていたモスラの唯一の武器であるマユ攻撃で、これにぐるぐるにされて身動きが取れなくなったキングギドラはゴジラの体当たりを受けて、そのまま宇宙へと敗走。イマイチ強さが際立たなかったが、この後のシリーズでは出るたびに総リンチされていく哀れな最強怪獣なので、まあこんな程度なのだろう。★★★☆☆