四日間の奇蹟
天才ピアニストの如月敬輔(吉岡秀隆)は自身の公演終了後に強盗に襲われた家族に遭遇。両親が銃弾に倒れ、犯人に狙われる千織(尾高杏奈)を助けた敬輔は指の神経をやられてピアニスト人生を絶たれてしまった。両親を失った千織はサヴァン症候群で脳に障害を持った少女だったが天才的なピアノの実力を秘めていた。それを見出した敬輔は千織を引き取り各地の施設を慰問しながら暮らしていた。今回2人が訪れたのは敬輔を初恋の人として慕っている岩村真理子(石田ゆり子)が待つ療養センターだった。敬輔は真理子のことを覚えていなかったがいつもは人見知りする千織は真理子によくなついた。しかし2人が仲良く遊んでいるとそこに落雷が直撃し、落ちてきた風車の破片が突き刺さり真理子は意識不明の重傷になってしまう。ほぼ無傷で目を覚ました千織だったが千織は「私は真理子だ」と言い出す。
というわりとよく聞く落雷のショックで魂が入れ替わってしまいましたという話。状況は映画『秘密』に近く重傷で死にかけているほうの魂が無傷だった方に乗り移ってしまったという展開だが違うのは限定4日間で、4日後には真理子が死亡、魂は千織の体に千織のものが帰ってくるという設定になっていること。
各所での評判もそんなに良くない。それは見飽きたテーマの複合みたいなもんでしかもここ数年続いていた『黄泉がえり』『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』などの「死」「純愛」ブームはさすがに去った後だったというタイミング的な問題などが大きいようだ。ヒットはしなかったが『天国の本屋 恋火』とかここ数年でそんなテーマの映画は確かにけっこう見た。
まあそこまでつまらなくはなかったのだが確かに泣けそうで泣けないまま終わってしまった。これがブーム最盛期に出て来た映画でも評判はそこまで良くはならなかったと思う。尾高杏奈はサヴァン症候群から入れ替わった後の真理子(要するに石田ゆり子の演技を真似る)までかなり素晴らしい演技をしているのだがそうなってしまうと当の石田ゆり子は序盤から最後まで意識不明で寝たまま、出番それだけになってしまう。この映画ではあくまで吉岡、石田がトップキャストで尾高杏奈は3番手。よってかなり初期の段階から尾高杏奈が石田ゆり子に切り替わりまくる。こういう演出は最後の最後の消える時に本当の石田ゆり子の姿が見えて「ありがとう」とか言っちゃったりするから感動するわけでそんな最初の頃から頻繁に石田ゆり子に切り替わっていたのではややこしいし感動も薄れる。尾高杏奈があまりに下手だったとかなら分かるがかなり素晴らしく真理子になりきっているのだからそんな必要はなかったと思う。
ラストシーン、教会のステンドグラスにこめられた意図なんかは気づくとかなり感動的なのだがなんだかしっくりこない展開であった。出演者はみんな良かったんだけどなんだか設定がうまく生かせていない。
印象度★★★☆☆