GODZILLA 星を喰う者

2018年11月公開。3部作完結編。

メカゴジラシティは壊滅。ナノメタルとの融合を拒んで先に脱出していた地球人は一部がナノメタル化の犠牲になりながらもエクシフのメトフィエスの手引きもあって安全な場に逃れていた。しかしすっかり心折られてしまい、その心の隙を突いたメトフィエスはハルオがナノメタルの浸食を受けずに助かった奇跡は神の加護によるものだと説き、生き残った地球人の大半がメトフィエスの教えの信者と化していく。学者のマーティンやその側近のジョシュなど一部地球人はナノメタル浸食を逃れたのはフツア族の鱗粉によるものだと気づいていたが、宗教化していく状態の中で不信心だと糾弾されるのを恐れて静観。マーティンは母船アラトラム号ではハルオの処遇を巡ってビルサルドと地球が決裂状態にあると聞いたため、ハルオが逃亡した事にして判断を保留させるなどできる範囲で行動を起こしていた。

ユウコがナノメタルの浸食により生きてはいるが脳死状態だと判断され、絶望に打ちひしがれていたハルオ。フツアでは勝利とは生きる事、負けるとは死ぬ事という価値観があり、命を繋ぐと称してフツアの双子巫女の1人マイナと一夜を共にする。

メトフィエスはさらに本性を現し、信者たちを生贄にして全員を捧げ(ギドラに喰わせる=死亡)、さらに母船に残っていたエクシフもまた同様の儀式を行っており、これによりついに別次元からギドラが降臨。母船アラトラム号はパニック状態のまま何が何だか分からずに消滅させられ(エクシフの仲間も一緒に自ら喜んで死亡)、地球には3つのブラックホールから3つの長い黄金の龍が降りてきてゴジラを襲撃。ゴジラからは触れる事さえできないのにギドラはゴジラに干渉できるというチート状態でゴジラななすすべがない。

マーティンの分析により、メトフィエスが鍵だとしてメトフィエスの元へ向かったハルオだったが、メトフィエスは片目に神器「ガルビトリウム」を埋め込んでおり、ここからの幻術にやられて精神世界をさまよってしまい、洗脳されそうになってしまう。卵のモスラを介したマイナとマーティンの導きにより復活したハルオは媒介になっていたガルビトリウムを破壊。実体化したギドラはゴジラに瞬殺され、戦いは終わった。

生き残りのマーティンら旧地球人らとハルオはフツアに受け入れられ、さらにマイナはハルオの子を妊娠。もうすぐ生まれそうだという時期まで平和に暮らした中で、マーティンはヴァルチャーの再起動に成功したと告げる。ゴジラの脅威はあるものの(もう倒せるとは思っていない)、ナノメタルを使えばある程度の文明を築くことが可能だと告げるマーティン。しかしハルオは文明が栄えれば再びギドラが降臨する可能性が高い事、フツアには憎しみの感情が無く、他の生き残りの地球勢も強い憎しみを持っている者はいないため、憎しみを抱いている自分がいればいつかフツアに悪影響をもたらすと考え、ナノメタルに浸食されて脳死状態のユウコと共にゴジラに特攻。ナノメタルと憎しみをこの世界から消し去る道を選ぶのだった…。

 

怪獣バトルをしないという意志は3作貫かれ、ギドラは首だけで胴体は出てこない。やたらと神々しく迫力はあるものの、長い黄金の龍が上空から伸びてくるとDB神龍感が…(神龍は黄金ではなく緑だけど)。一部ではあれじゃキングギドラじゃなくて金色の光っているだけのマンダ、すなわちゴールデンマンダじゃないか、とも。視認以外は触れる事すらできず、ギドラだけ一方的に干渉できるというチートなので光線も出さずに巻き付いて噛み付くだけ…とバトルアクションはほぼ皆無。

前作から匂わせていたモスラは卵のまま。前日譚小説では2048年の地球外惑星移民計画発動後、つまりハルオらを乗せたアラトラム号が飛び立った後に地球に残された人類の味方として成虫モスラが出現、鱗粉で熱線を跳ね返してかろうじてゴジラを追い払う事に成功するも負傷し、残された卵を日本に移動させる作戦を展開。その陽動のために人類との共闘で再度ゴジラに挑むも勝ち目が無く、絶命。今回出ている卵はその時の卵が無事でそのまま2万年経過したわけではなく、無事に日本へ移動していた卵がこの数千年前に目覚めて1度ゴジラに挑んだが破れ、墜落してできた地下空洞でフツアが暮らし、朽ち果てたモスラの死体に残されていた卵が今の卵、これが目覚めるにはまだ数百年かかる、という設定らしい。モスラの卵って数千どころか万年単位だったのかよ…。

そんなわけで、モスラはハルオの精神世界でちょろっと姿を見せるのみ。怪獣が出てこないどころか、ほとんどまともなバトルも無いところ、キングギドラとモスラの登場を期待させておいてこの扱いというのも前作のメカゴジラからしてやはりそうなったかという感じなので耐性ができていたとことがある。

 

前回のビルサルドに続いて今回はエクシフの終末論とでもいうべき、滅びの美学が炸裂してほとんど宗教的台詞の応酬。エクシフはギドラに滅ぼされたと言っていたが、実際は繁栄を極めすぎて宇宙に永遠など無いという真理に行き過ぎてしまい滅びこそが救済と考えて、自らギドラに捧げて滅んだという。一部その教えを祝福として広めるために生き残って活動しており、地球が格好のターゲットになった、と。

実際にメトフィエスがギドラを呼び出して終焉という祝福をもたらすのにここまで機が熟すのを待つ必要も無かったらしく、従者のエンダルフ(当初見た目的に年上のこっちがトップと思われていたが神官なのはメトフィエスで、エンダルフは従者だった)も、メトフィエスがハルオに固執するのだけは納得がいかない様子でメトフィエスに真意を訪ねたりもしていた。メトフィエスはハルオを相当お気に入りだったようで、ハルオもまた信仰はしなかったもののビルサルド以上に精神的な支えとしてもメトフィエスを信頼していたので、メトフィエス的にはハルオを滅びの道へ導く事に相当執着していたようだ。この辺りの複雑な関係性も含めてなかなか深いような…深すぎて分かりにくいような…。

気になったのはこんだけ独自の世界観構築してて怪獣映画の期待をことごとく外してきているのに、マーティンとその部下がギドラの実況中継役状態となってしまい、驚き&分析解説要員化してしまい、そこだけなんだかとっても怪獣映画になってしまっているのが妙に笑えた。前2作もマーティンに説明台詞は多かったが、ここまで典型的な解説要員ではなかったはずだが…。

ただなんだかんだ1〜3作目まで重要な分析・解説役として存在感を見せてきたマーティン。どこか空気を読めないところもあったが、終わってみれば適応力、判断力、周りに流されない強さなど兼ね備えていて地球人生き残り代表としてふさわしい人格者だったかも。

「命を繋ぐ」などと表現はしていたが、ハルオがマイナを妊娠させる展開は正直いらなかったような…。年齢不詳設定とはいえ、明らかにマイナミイナは2人ともロリ系でビミョーな背徳感が漂うし、ユウコに好意を寄せられてキスまでされた直後にユウコを実質失ってショック状態のままに及んだ事、そしてフツア族的には「命を繋ぐ」のは自然行為とはいえ、このタイミングでお前何やってんだっていう。しかも1度ミイナに迫られて拒否して、マイナは受け入れ、その理由がミイナの方がハルオに友好的だったもののあくまで儀式然とした態度だったのに対して、マイナは当初警戒するような態度を取っていたがこの時はハルオが死んでしまう事に恐怖を抱いていると気持ちを告げたため…という事で何だか妙にこの辺りの設定に凝っているんだけど、そこまでして盛り込む必要のある話だったのかなと。結末としても子供もマイナも放置してハルオは自殺してしまう事になってしまったのでやるならやるで生まれてくる子供に対してもう少し何か思いを伝えるくだりがあっても良かったんじゃないか。小説版ではこのくだり全面カットで成立しているし。

ハルオの自殺に関しても、ギドラの降臨を恐れてという事だがギドラ降臨にはエクシフ神官のアイテムを介する必要があるわけで、警戒するならばナノメタルによる文明再興よりもエクシフ神官がこの2万年後の世界でまだ宇宙のどこかにいて地球を狙ってくるのかというところでは。ナノメタルを滅するという点も、フツア族は強度の高いナノメタルを矢じりとして使用しており、これは銃撃以上の威力を発揮していたわけで、ここまでナノメタルを滅されてしまってはフツアの戦力ダウンも必至。フツア族の今後も心配になってくる。

 

そして結果的にアラトラム号はギドラに破壊され全員死亡。エクシフ・ビルサルド勢は全滅したので、地球人がマーティンら数名のみ生き残った。設定上、アラトラム号以外に別の星を目指して旅立ったオラティオ号があり、そちらの方が収容人数も2倍だが、距離が長く100年かかるため冷凍睡眠技術や亜空間飛行も使うそうで、物語開始時点で既に交信不能。アラトラム号が地球に戻るのに亜空間飛行を使って2万年も未来の世界に移動してしまったため、オラティオ号がどうなったのか最早知るすべもない。2万年経過した現在も目指した先の星で繁栄しているのかも分からない。この世界で生き残った地球人に女性がいないことも含めて(というかユウコ以外に女性隊員の姿が…)、2万年後の世界で旧地球人絶滅確定である。

今回の一件で人類が滅亡確定というのはなかなか衝撃的な末路だ。1作目の作戦であれば2048年当時のゴジラを確実に倒せていたわけで、もし2048年時点でこの作戦に行き着いていれば…。実際の宇宙船での経過年数は20数年、しかも宇宙船上生活では兵器開発等含めて20数年あったところでそれほど進められたとも思えず、対ゴジラ戦術は20数年前までの過去の地球でのデータを研究してハルオが導き出したものだったわけで、2048年までの間に誰かがあの戦術に至っていたら…とか必然の結末ではなく色々IFの余地があっただけにやりきれない終末でもあった。小説版ではモスラとの戦闘を間近で見たハルオの父や残った研究者たちがゴジラがシールドを張って攻撃を無効化している事に初めて気づくくだりもあり、何かが違えばハルオの作戦でゴジラを倒せる未来は確実にあったと思う。

 

3作通して、1作目は地球人、2作目はビルサルド、3作目はエクシフ…と主人公ハルオを中心にそれぞれの価値観のぶつかり合いが主軸のSFドラマが展開したわけだけど大枠では新しいゴジラ映画としては斬新で面白かった。ただ結末が暗すぎるのはやはりどんより、ずっしりとのしかかってくる。そういう意味で記憶に残る3作品ではあったし、色々と考察しがいのある作品でもあり、なんだかんだゴジラ映画の中でも印象深い作品になった。

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★★★★☆

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