名探偵コナン 絶海の探偵
2013年公開。防衛省・海上自衛隊協力のもと、イージス艦を舞台にした初のスパイミステリーをテーマにした作品。今回の声優以外のゲストキャラは謎の女性自衛官として登場する柴咲コウのみ。主題歌は前年に続きビーイング外部で、斉藤和義が担当している。
イージス艦の体験航海に参加することになった蘭、園子、小五郎、灰原以外の少年探偵団御一行。しかし直前に近くで某国のものと思われる不審船が発見されており、自衛官たちは「X」と呼ばれる某国スパイの存在を密かに探っていた。演習のはずが妙に緊迫したムードになり、他の乗客は面白いアトラクションだと思っていた未確認物体の接近が明らかにマジだったと気づいたコナン。女性自衛官が嘘をついている事を見抜き、とりあえず捜査を開始しようとする。そんな中、自衛官の腕が発見され、小五郎が捜査に介入。いつもの面々やその他関係者も一堂に集結して乗客には伏せたままで捜査が開始される。
スパイモノだが、正体を明かしていない極秘捜査をしている自衛官もいるため、全員がまとまるまでに一苦労。また殺人事件の方はこういった結末になるのは映画史上初めてじゃないだろうか。ここは斬新だった。
今回のイージス艦は携帯持ち込み禁止なんだけど、コナンは腕時計に仕込んだ新メカの衛星電話を使って阿笠博士、灰原、平次らに情報を流して必要な情報を調べてもらうといった手法を取っていた。その衛星の電波が発信されているのを探知されてしまい、自衛官の間ではXが暗躍しているのでは?という疑念が広がってしまう。コナンが入手して博士たちに送信した情報のなかには国家機密レベルのものもあった。やがて他にも衛星電話で連絡を取っていた自衛官がいたのでコナンは衛星電話は全部その人のせいにしてしまう始末。
そしてついに正体が発覚した某国スパイ様は蘭と格闘を演じるものの、結局自国への密かに連絡を取ったり、情報をどこかに送信したりといったスパイらしい行動を取っている様子が全く描かれず、いつもの悪党犯人像と変わらなかった。これにより終わってみたら国家機密を平然と博士や灰原、平次に横流ししまくり解析しまくっていたコナン一派の方がよっぽどスパイみたいな行動を連発していたという…。国家の危機って人知れずそっちだったんじゃ…!?という高度なスパイミステリーだった。
さらに最後はお約束のようなその回の舞台を生かしたような主要人物の大危機展開。これまで通り、事件とは無関係になる。これまでもコナンや蘭が命の危機に立たされるなどクライマックスお約束なのは分かるけど散々煽った某国スパイだの国家の危機だのといった危機感が捕まえたスパイからは何一つ感じられなかったのでもう少しその辺のスパイのバックボーンを掘り下げるようなエピソードを投入してほしかったところ。ただ近年の『沈黙の15分』を筆頭に、犯人の動機と行動が噛み合ってないほとんどギャグのような珍妙な設定になってしまうというのもそろそろネタポイントとしては面白味に欠けたし、本職以外の声優参加大量連発も厳しかったし、今回はその辺を変えてきてスパイとそれに関与した人たちの明確な目的を描かずとにかく某国スパイの一言で押しきってしまったり、本職以外を柴咲コウ1人に絞ったのは逆に良かったのかもしれない。
★★★☆☆