地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン
1972年公開の12作目。登場怪獣はゴジラ、アンギラス、キングギドラ、ガイガンの4体だが、「怪獣島」の設定が復活しており、『怪獣総進撃』の映像の使いまわしでラドン、幼虫モスラ、カマキラス、クモンガ、ゴロザウルス、ミニラなどが1ショットずつ登場する。今作の怪獣島は特に人間が管理している設定は無く、ただ単に怪獣が揃って住み着いている島という設定のようで、ゴジラもアンギラスも自由に出入りしている。戦闘シーンでは夜のシーンのはずが真昼間になるなど編集がガタガタだが、昼のシーンは過去の映像の使いまわし(分かったのは『三大怪獣 地球最大の決戦』のキングギドラの光線を浴びてゴジラがイテテッ!となるところと『怪獣総進撃』でアンギラスがキングギドラに空中から落とされるところ、ゴジラがキングギドラの首を踏みつけるところ)。
『怪獣総進撃』が未来の話だったので今回のキングギドラはまだ死んでいない初代という説もあれば、公開順に考えて2代目とする説もあるようだ。怪獣島の管理までは行われていないため、製作側には管理が進んだ未来の『怪獣総進撃』以前の話という意識もあったのではないかとも思える。
今回はゴジラとアンギラスが吹き出しで会話するという唯一のシーンが存在する。また子供向け施設の「世界子供ランド」が舞台になっているにも関わらず、2作続いていた子供の出演者は一切出てこない。
売れない漫画家の小高(石川博)は、知り合いのトモ子(菱見百合子)から建設中の「世界子供ランド」の怪獣をデザインする仕事にありつく。しかし、仕事に向かった時に謎の女がテープを落として逃げていくのを目撃する。さらにそこの会長が棒読み口調な17歳の少年(藤田漸)で、年配の事務局長(西沢利明)と揃って実態の見えない「平和な世界」を理想として連呼するなどどこか不思議な雰囲気だった。後日、先ほどの逃走者マチ子(梅田智子)が、兄の武士(村井国夫)が子供ランドに監禁されていると言い、高杉(高島稔)と共に小高の前に現れる。テープを再生しても謎の怪音波が出るだけで意味不明だったので、子供ランドの周辺を調査した3人は、会長と事務局長が既に死んでいることを突き止める。
一方で、音波を察知したゴジラはアンギラスに偵察を命令。「急げよ」と急かされて単身海を渡ってきて上陸しようとしたアンギラスだったが、防衛軍に侵略と判断されて集中砲火を浴びてしまう…。
テープを取り返しに来た事務局長に殺されそうになった3人だったが、トモ子が格闘の達人だった事が発覚し撃退。武士を奪還するため、子供ランドのゴジラ塔に潜入した小高、トモ子はトモ子の格闘で2人を瞬殺するも、銃を持った3人に囲まれて断念。武士とと共に、彼らがM宇宙のハンター星雲の住民だった事を明かされる。その正体はゴキブリのような生物で人間を着ぐるみに使っていたという宇宙人。彼らがガイガンとキングギドラを操り、地球攻撃命令が下された。
上陸したゴジラ、アンギラス対ガイガン、キングギドラの死闘が始まった。アンギラスがほとんど使い物にならないため、実質2対1で苦戦するゴジラ。特に体が刃物になっているガイガンの飛行攻撃によって肩から流血するなどしたゴジラは追い詰められ、さらにゴジラ塔からのビーム攻撃で滅多打ちにされて敗北寸前に。一方で使えないアンギラスもキングギドラに無策無謀な突進を決め込み、見事に返り討ちで流血していた。
残されたマチ子と高杉の救出作戦でゴジラ塔から脱出した3人は、自衛軍と連携し、ゴジラ塔のエレベーターに大量の爆薬を詰め込んで上へ向かわせた。襲撃と勘違いした宇宙人はこれを銃撃し、大爆発炎上。宇宙人は全滅し、ガイガンとキングギドラへの命令も途絶えた。
しかし、ゴジラの劣勢は変わらずについには完全に気絶状態に。もう終わりかと思いきや、ガイガンが崩壊しかけたゴジラ塔にゴジラを突っ込んだところ、この衝撃と塔の崩壊と同時に意識がはっきりしたようで復活。キングギドラへ攻撃を仕掛けてそこを狙ってきたガイガンを交わして、同士討ちさせるなど頭脳プレイを駆使して逆転する。びびったガイガンは逃走しようとするが熱線で打ち落とされてしまう。さらにキングギドラも、ゴジラの羽交い絞め+アンギラスの突進攻撃でグロッキーになったところ、背負い投げを3連発(全部リピート映像…)、トドメに首を滅多打ちにされてしまい(『怪獣総進撃』の使いまわし)、お待ちかね恒例の逃走。ガイガンも追従して敗走し、戦いが終わるのだった。
やはり子供の役者が出てこないほうがドラマが締まる。ストーリー自体はそれなりに面白い。宇宙人がゴキブリでした…というオチや、ここ数作続いている環境破壊への危機感や科学万能主義へのアンチテーゼを打ち出していたりと、悪くない。吹き出しの会話は…。まあ空飛ぶよりは状況が分かりやすくていいんじゃないだろうか。むしろ問題は予算の関係で、過去の映像を使いまわしたせいで、戦闘シーンが夜なのに何度も昼になったりしてしまうところである。また伊福部昭の音楽も無断使用だという…。
それにしてもアンギラスの使えないっぷりが酷い。少し前のラドンから相棒交代したようだが、まだ空を飛べるラドンの方がマシだったような…。最後に背中から突進する以外にはちょっと噛み付いた程度でほとんど戦力外。
あと会長の少年が異常な棒読みだったのは下手なのではなく、宇宙人っぽさを演出するためだったんだろうか。
★★★☆☆