幻遊伝

台湾映画。日本・台湾・中国・香港の精鋭スタッフと豪華キャストの大コラボレーションにより製作された超話題作ということだが、日本の役者は田中麗奈とその父親役である大杉蓮くらいで後は現地スタッフ。台詞もほとんどが字幕で、田中麗奈も父親との会話以外は中国語を話している。なお田中麗奈とチェン・ボーリンは同年『暗いところで待ち合わせ』でも主演同士で共演している。台湾主導のこっちに対して日本主導のあっちという感じなのかな。

タイムスリップ、SF、ホラー、アクション、恋愛とありとあらゆる要素を詰め込んだ大作ということで実際に色々な要素が組み込まれている。そのせいで何が何だか分からない話になってしまっているが一応展開は以下の感じ。

現代の台湾で薬屋をやっている父親(大杉漣)にいつも日本に帰りたいと言って反発する小蝶(シャオディエと読む)(田中麗奈)。ただ生まれも育ちも台湾であり、日本には行った事が無いらしい(だから名前も日本名じゃないのか?)。ある日の深夜、友人たちと時代劇の撮影用の映画村に忍び込んだ小蝶は何故か大昔へタイムスリップしてしまう。しばらくは映画の撮影だと勘違いして、かみ合わない会話にキレまくる小蝶だったが、悪霊退治の霊力を持つ百鶴道士(リー・リーチュン)に悪霊と勘違いされてしまう。激怒した小蝶は百鵺を追い回すのだった。

一方で洪水で飢饉になった故郷の村を救うため盗賊をしたハイション(チェン・ボーリン、現代では薬屋の店員として二役)とアーゴウ(ホン・ティエンシャン)は脱走に成功するも、百鵺の連れていたキョンシー(死体を操る術で百鵺は死体を故郷に連れ戻すための旅をしている)に襲われてしまう。これがきっかけで事情を把握した百鵺は2人にキョンシーのフリをすれば関門を突破しやすいので弟子入りさせるついでに旅に同行させることにする。追いかけてきた小蝶も含めて4人での旅が開始。また小蝶はこの時代の女義賊である青醍子(田中麗奈が二役)と勘違いされてしまう。百鵺だけは小蝶が時代が越えてきた存在だと気づく。

やがて、盗んだ金を巡ってのいざこざでバラバラになりながらもハイションと小蝶は故郷の村を目指す。その途中で謎の少女に欠片を託される。やがて村にたどりつくが伝説の魔王を呼び出す秘宝を狙う国師、浄心道士(ミャオ・ツーチィエ)が現われる。どうやら欠片が必要らしい。獄中で先ほどの少女にそれを聞かされた百鵺はアーゴウと共にキョンシーを使って脱走し、現場へと急ぐ。そして欠片が揃ってしまい、魔王が光臨する。果たして彼らの運命は…。クライマックスへ。

みたいな。基本はRPG的な冒険モノでSF色はキョンシーを操る術という程度なのだが終盤で突然魔王がどうとか言い出すので驚く。で、魔王登場して対決となるのだがクライマックスなのにアクションがしょぼくさほど盛り上がらないままに対戦は終了。定番の涙のお別れ劇の方へと話が移ってしまう。元々、登場人物たちが戦士でもなければ能力があるわけでもなく百鵺はそこそこ戦えるものの、あとの男2人は普通の人たちなので、ド派手な戦闘は無理である。

また、随所に登場する青醍子も謎が多いままに出番終了。セーラームーンのタキシード仮面みたいなマスクは笑うべきなのか、そのアクションのかっこよさと無口な姿にカッコイイと見るべきなのか迷う。最終決戦では戦闘要員がいないので戦闘力のある人選を投入する上では必要だったかもしれないが、何故この人まで登場して助けてくれたのかよく分からない。同じ顔の小蝶と真正面から仮面取れて対峙してちょっと驚くものの魔王を退治したら去ってしまうし何がしたかったのかよく分からない。公式ページではこの人を主役にして第2弾を作りたいという監督の意向が載っているが正直無理だろう。そもそも一度同じ方法で魔王を倒したのに他人に乗り移って復活してしまったわけで同じ倒し方で魔王が倒せてしまうのも分からない。つーか描写同じだし、魔王逃げただけじゃ…。

アクションを期待していたのにろくな戦闘にはならないし、恋愛描写に関しても展開が急すぎてはまりこめない。SFやRPG的な要素を詰め込むならもう少し登場人物に攻撃力なり能力なり、それこそ旅の中でアイテムなり修行なりの結果として持たせれば盛り上がったのに…。

結局のところ見所は気が強くてテンションの高い田中麗奈のかわいさくらいである。話は意味不明だったがこれで十分魅力的だった。衣装も多彩で前述のタキシード仮面みたいな仮面姿から、露出の高いギャル系ファッション、ブルーの中国風の衣装、女の子らしいピンクの中国風の衣装と場面ごとにいくつかパターンがあり、そのどれもが今までの映画で見せた事のない貴重な姿なので新鮮である。

田中麗奈は「ゲゲゲの鬼太郎」での猫娘役で初コスプレで新境地という事だが伏線にはこの作品が確実にあると思う。この作品において十分にはじけている。

ついでにこの作品の予告映像(『暗いところで待ち合わせ』DVDのCMに入ってた)はわけの分からないコメディ風のテンションだったので結局この映画はアクションじゃなくてコメディなのか?それにしては予告に比べて雰囲気はマジメそのものだったんだけど…。

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★★★★☆(田中麗奈ファンなら見て損なし。それ以外は★3つ以下)

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