Godzilla, King of the Monsters!(怪獣王ゴジラ)
1956年アメリカで公開。『ゴジラ』をアメリカで再編集したもので、アメリカで新規撮影したアメリカ人の主人公を新たに加えて、元の映像に吹き替えを被せて再構築した内容となっていて日本側での新規撮影は無い。1957年には日本でも公開され『怪獣王ゴジラ』が邦題。その後日本でも一応DVD化、Blu-ray化されており、Amazon Prime等の配信でもゴジラシリーズの中の1作としてラインナップに加わっている。
アメリカ人記者スティーブ・マーティン(レイモンド・バー)がゴジラ襲撃に巻き込まれて病院に運び込まれ、知り合いの恵美子(河内桃子)と会話するところから回想する形で物語が始まる。知り合いの芹沢博士(平田明彦)に会うために来日にしたスティーブだったが、空港で警備員トモ(フランク岩永)から芹沢は研究で忙しくしばらく会えない事を知らされる。ここ最近漁船の沈没事故が続いている事を聞かされ、何故か調査に参加する事になったスティーブはトモと大戸島への聞き取り調査に同行。その夜大戸島は嵐によって壊滅してしまうが、住人たちはゴジラのせいだと口にする。その後、山根博士(志村喬)、恵美子(河内桃子)、尾形(宝田明)ら調査団にも同行して再度大戸島を訪れたスティーブは彼らと共についにゴジラを目撃。
ゴジラは東京を襲撃。1度目の襲撃ではスティーブは無事だったが、高圧電流作戦が失敗した2度目の上陸では東京が火の海と化し、記録コメントを録音し続けていたスティーブのいたビルにもついにゴジラが迫り、建物と倒壊に巻き込まれてしまう(冒頭のシーンへ戻る)。
恵美子から芹沢博士が開発した恐ろしい兵器の話を聞かされた尾形とスティーブ。2人は恵美子に芹沢を説得すべきだと言い、負傷でまだ動けないスティーブは尾形と恵美子に託し、芹沢はデータを破棄して1度だけという条件付で使用を許可。回復したスティーブも見守る中で尾形と芹沢は共に海底に潜り、兵器を作動させる芹沢だったが、尾形を先に上がらせて自分は命綱を切り、ゴジラと運命を共にする。
元のストーリーにスティーブをねじ込むという強引な手法がなかなかとんでもない珍作。どうしたってねじ込みででは物語を進められないので回想録のような形でナレーション処理して物語を進めていく場面も多い。どうしても会話が必要なところでは顔を映さない恵美子・芹沢・尾形・山根の影武者を用意して会話している風に装い、声は全員英語に吹き替え。しかし徹底しておらず、はぁとかへぇとかの感嘆詞や各々が名前を呼ぶ部分などは何故かオリジナル俳優の日本語音声を残して使用しているため、特に会話する場面の多い恵美子・芹沢・尾形の3人は会話の途中で 声 が 別 人 になる。例えば恵美子が芹沢、尾形、お父様(山根)を呼ぶ時はそのままの日本語なんだけど続く会話が吹き替えの英語に切り替わり別人の声になる…といった具合。どうせなら全吹き替えしてくれよ…。
またオリジナルをかなりカットしており、特に水爆・被爆関連のメッセージ性の強い台詞や場面は全部カット。一応大戸島で放射能が高いから近づかないようにと注意している場面や水爆実験で誕生したという最低限外せない山根博士の説明は残しているんだけど、最後のこれが最後の1匹ではないかもしれないという山根博士の台詞もカットしてしまうし、なんか巨大怪獣が出てきて大災害になったけど超兵器で退治しましたというだけでの怪獣映画にまとめてしまったような印象。アメリカでは2004年までオリジナルが公開されずに、この珍作が1作目のゴジラとして親しまれていたというのだからこれはかなり印象が違うのでは…。
今作はオリジナルのように丁寧なリマスターは施されていないが、最初の時点でオリジナルよりも明るめのコントラストにしているのか、大戸島の台風のシーンとか暗すぎて良く分からなかったのがゴジラらしき影が横断していくのがハッキリ分かるようになってるし、暗い場面で良く見えなかった部分が分かりやすくなっていてその点は良かった。
なお1984年版『ゴジラ』(平成VSシリーズの起点)も翌年に『GODZILLA 1985』として同様の手法で再編集、当時60代半ばになっていた今作の主人公スティーブ・マーティン(レイモンド・バー)を再度主人公として制作したとされており、当時VHS化まではされていたらしいが、今作と違ってDVD以降では放棄されているようで配信のラインナップにも当然入っていない。どうせならそっちも見てみたいがどこでこんな差がついた…。
今作も日本でのDVD化は2005年のBOXの特典映像が初、近年はオリジナルの『ゴジラ』の4KリマスターBlu-ray盤に特典映像として収録されているようだが、シリーズを一斉発売してきた東宝DVD名作セレクション、東宝Blu-ray名作セレクションには含まれておらず、単品での発売は『隔週刊 ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX』シリーズの2017年1月のVol.14だけのようだ。よってレンタルDVDのラインナップには入らないし、4K環境が無いのに4K買ってまで見るものでもない。Amazon Primeが最もお手軽かも。
国内初DVD化 単独DVD 4Kリマスタター盤Blu-rayの特典映像として収録
★★★☆☆