ゴジラ(1984)

1984年末公開。9年ぶりのゴジラ映画。正式タイトルは『ゴジラ』で1954年の1作目と全く同じなためカッコで(1984)や(昭和59年度)などと表記することで区別する事が多い。今作は昭和最後のゴジラ映画となっているが、ストーリーは平成VSシリーズに繋がっていくため、平成VSシリーズの1作目として分類される。ただし次回作までは5年の歳月を要している。またこれまで50mに設定されていたゴジラの身長は都会のビル群の中ではかなり小さく見えてしまうためか80mまで巨大化された。しかしそれでもビルより小さい。

前作『メカゴジラの逆襲』とは全く繋がっておらず、今作では30年前にゴジラが出現したという世界で、今回それ以来のゴジラ復活という扱いになっている。このため1作目の『ゴジラ』以外とは繋がっていない。1954年のゴジラは死んでいるため別のゴジラと思われるが、ゴジラ復活だけではなく"ゴジラは生きていた"と報道されている描写もある。ゴジラは長年眠っていたが大黒島の噴火により地表に押し出されて目を覚ましたと説明されており、このゴジラが何故誕生したのかは今作では明かされない(次の次の『ゴジラVSキングギドラ』で明かされる)。

 

大黒島で噴火の影響でゴジラが復活。付近にいた漁船が行方不明になるが、後日ヨットで航行していた新聞記者の牧(田中健)が発見。船内ではゴジラに寄生していた影響で巨大化した巨大なフナムシ(ショッキラスという名称だが劇中で使用されない)が暴れて船員を皆殺しにしていた。船内の奥では1番若い奥村(宅間伸)だけがかろうじて生き残っていた。

救出された奥村の証言からゴジラが復活した事を確認した政府はゴジラ対応に追われる事になる。頼りがいのある三田村総理(小林桂樹)が対策を練っていく中で、奥村の大学の恩師である林田教授(夏木陽介)はゴジラ初上陸の際に原発で放射能を吸収している様子を間近で観察した事で帰巣本能がある事を偶然発見。超音波でゴジラを三原山に誘導し、三原山を人工的に噴火させるという作戦を考え付く(なお三原山は映画公開から間もない1986年にリアルに噴火している)。

三田村総理はアメリカとソ連が核兵器でゴジラを攻撃する提案を非核三原則により拒む。自衛隊による秘密兵器スーパーXでの攻撃の準備を進めさせつつも林田教授の意見を聞き入れて林田教授の作戦も同時進行で行う事を決意する。一方で林田教授は奥村、その妹の尚子(沢口靖子)、牧と共に超音波発生装置の完成を目指す(三原山爆破の準備は早々に完了)。牧は奥村兄妹の再会を美談に仕立ててスクープしてしまったので当初は関係が悪化していたがこの流れの中でなし崩し的に和解。

しかしそんな中でゴジラがついに東京に上陸。この際に核兵器の発射スイッチを備えたソ連の船が巻き添えになり、何故か発射装置が作動。宇宙衛星から核ミサイルが発射されてしまう。散々じらして出動したスーパーXは囮のパラシュートでひきつけて口をあんぐり開けたゴジラにカドミウム弾を撃ち込む事でゴジラの動きを停止させることに成功。

その近くのビルでは未だに林田教授が研究を続けており完成したもののゴジラが暴れていたのでビルから出られなくなり、気流が不安定なのと最終的に装置を三原山に運ぶことが優先され、牧と尚子だけ取り残され、2人はプチラブロマンス&ビル脱出&瓦礫の街をサバイバー

ソ連の核ミサイルはアメリカによって迎撃してもらえたが、成層圏での爆発とはいえ電子機器に影響が出て雷が発生。それらすべてのエネルギーが集約してゴジラに降り注いだのでゴジラが目覚めてしまう。ゴジラ見物に来ていた無謀な国民が逃げ惑う中で、スーパーXが再始動するが実はもうカドミウム弾は尽きていた。通常攻撃で奮戦するも全く通じず、むしろ辺り一帯の破壊に貢献した後に機能停止。ゴジラに直接破壊されるのではなく、倒壊したビルの下敷きで破壊されるという哀れな末路に…。その頃、林田教授の作戦が起動。導かれるようにゴジラは三原山へ。噴火口に来たところで噴火を誘発し、ゴジラは噴火口に転落していくのだった。

 

ということで実質的には主人公は田中健のような気がするが、クレジットでは総理の小林桂樹がトップ。子供向けの要素が全く無く、1984年時点の日本にゴジラが登場したら現実的にどう対処するのか?というリアル路線。怪獣映画的な盛り上がりが皆無という極めて地味な異色作になっている。これはゴジラ映画が当時30周年であり、9年ぶりの復活ということもあって84年当時の子供たちではなく、昭和シリーズ当時に子供だった84年当時の大人向けに制作したためと思われる。他のゴジラ映画はどれも少年時代のワクワクを思い出させるような童心に帰る感覚があり、特にリアルタイムで見ていたVSシリーズに関しては加えて懐かしさもハンパ無いんだけど、今作(と次回作も少々)はそういう感覚があまり無い。むしろ大人になってから見た方がしっくり来た。ラストシーンでアドリブらしいんだけど噴火口に沈んでいくゴジラを見て総理が泣きそうな顔になっているのも妙に印象的。

まあその割に昭和シリーズを無かったことにしてしまったのは英断だとも思うけど。昭和シリーズを見てきたファンは無かったことにされたというのはけっこう残念だったのでは。ミレニアムシリーズ以降でVSシリーズが全く触れられず、『FINAL WARS』でも昭和シリーズ怪獣オンリーでVS以降の怪獣が総スルーされたのとか個人的にはかなり残念だったんだけど、それと同じ感覚が当時あったんじゃないかと思う。

おなじみのゴジラのテーマ曲も使われていないし、確か最初に見たのはVSシリーズまっただ中の90年代半ば(小学校4〜6年辺り)になってからだったと思うけど今作だけはほとんど印象に残ってなかった。ただ今作をしっかり描いたことがVSシリーズに繋がっていく事を考えると重要な1作ではあると思う。

完全にヒーロー化していた昭和シリーズ末期のゴジラを再び脅威として描いたのも良かったんだけど、かなりの犠牲者が出ている割には凄惨さはほぼ感じられず、あくまで政府のゴジラ対策に挑む姿だけリアルという感じもした。林田教授は存在感は良かったんだけど、ゴジラがすぐそこまで来ているのに避難せずに超音波発生装置を作り続けるどころか、窓ガラスの向こうまでゴジラが迫っている時点でも逆に完成した装置が有効か実際に試させるなど地味に頭のネジが飛んでいるところはシュールだった。ほぼ政府視点なせいか一般人の危機意識もかなり軽い(眠ってるゴジラを見物に来た挙句にゴジラ復活後には逃げ惑うという愚かっぷり)。

また極めつけはデビュー年でこれが2作目の映画出演だったヒロイン沢口靖子の超絶棒読み。そのかわいさはともかく、演技の酷さは伝説級とも称されており、東宝シンデレラ初代グランプリということもあってか挿入歌まで歌うねじ込みっぷり。あまりに棒読みが酷かったせいなのか中盤以降は出ている割に極端に台詞が少なくなったような…。ここから女優としての地位を確立できたんだからそれ相応の努力をしたんだろうなぁ。

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★★★☆☆

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