ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
03年公開のミレニアムシリーズ5作目。毎回設定がリセットして1作目をアレンジした新設定になり繋がりの無いミレニアムシリーズだが、今作だけは前作のそのままの続編になっている。前作の出演者である総理(中尾彬)ら政府関係者はそのままの役で継続出演。しかし前作の主役だった釈由美子は序盤で出張という扱いで今回の主役の金子昇にバトンタッチする形で退場する。
また前作で1961年の映画『モスラ』の出来事が過去に起きたという設定だったが、今回はその設定を生かし、『モスラ』に出演していた中條(小泉博)が当時のままの役者、役名で出演。小泉博は90年代半ばを最後に俳優活動が引退していたが今作で復帰した。
ゴジラと機龍との死闘から1年。機龍の修復は未だに完了しておらず、アブソリュート・ゼロの装備は予算の関係上からも不可能とされていた。
1961年、インファント島調査隊に同行し、その後にさらわれた小美人の奪還に現れたモスラの東京襲撃の際に、小美人救出に活躍した中條の前に43年ぶりに小美人(大塚ちひろ、長澤まさみ)が出現。ゴジラの骨格を使用した機龍は人間が手を出していい領域を超えていると警告し、機龍を海に返すように要望する。その代わり、モスラがゴジラを命がけで倒すという。
総理と友人だった中條はその件を総理に伝えるが、モスラが当時の東京を襲撃したのは事実だし(モスラとしてはたださらわれた小美人の元へ向かうための通り道にたまたま建造物がいっぱいあっただけ)、ゴジラ打倒には機龍が必要なのでその要望を素直に受け入れるわけにもいかない。
さらにその場に居合わせた機龍の整備士である中條の甥である義人(金子昇)にとってもそれは受け入れがたいことだった。ちょうどその直後に、茜(釈由美子)ら3名の以前機龍を操作していた隊員が海外修行に旅立った。義人に「機龍はもう戦いたくないのかもしれない」という言葉を残して茜は去っていく。代わりの隊員には秋葉(虎牙光揮)や義人とは旧知の仲の梓(吉岡美穂)が選ばれる。
ゴジラは行方をくらましていたが、九十九里ではゴジラに襲撃されたと思われる巨大生物カメーバの死体が打ち上げられる。
やがてゴジラが出現。1年前の戦地である品川なら既に壊滅しているので問題ないだろうということで品川に誘導。機龍の出撃は見合わせていたが、ゴジラは機龍の場所へと向かっているという。また中條の孫が、かつて中條がモスラを呼び出したインファントの紋章の話を聞いて同じ方法でモスラを呼び出す。モスラとゴジラの対決が始まった。今回のモスラは平成シリーズのようなビームが使えず、相変わらずひっかくか羽ばたくかしか攻撃方法が無い。あっさりと足を噛み千切られたモスラは死亡フラグである鱗粉を乱発し、一時苦しめるもパワー切れで墜落。
モスラの奮闘を見た政府は機龍の出撃を決定。機龍が駆けつけ例によってミサイル攻撃を駆使するがあまり効かず、お約束のように機能停止してしまう。義人が駆けつけて修理を行うことに。
その頃、双子のモスラ幼虫が誕生し戦場に駆けつけた。繭攻撃を駆使するが大して効かずに吹っ飛ばされてしまう幼虫たち。親モスラの元に出向き親子3人のモスラ会議が始まろうとしていたが、容赦ないゴジラは会議中の親子に熱線で攻撃。最後の力でこれをかばった親モスラは爆発炎上。キレて赤い目に変わった幼虫モスラだがやはり繭攻撃かしっぽに噛み付くかしかできずなす術がない。
復活した機龍は肉弾戦に持ち込んで熱線を出す暇を与えずに、スパイラルクロウでゴジラを貫く。トドメの光線攻撃を連発。そこに幼虫モスラの繭攻撃でグルグルまきにされて身動きが取れなくなったゴジラにいよいよトドメというところで再度制御不能になってしまう。再び暴走の悪夢がよぎるが、機龍はゴジラを運んでゴジラと共に海中に滅するという自我に目覚めたのだった。身動きのとれなくなったゴジラを空輸すると、復活したゴジラにやられてしまうというジンクスがVSシリーズ時代にはあったが(メカキングギドラとかバトラとか)今回は最後の反撃もなく、そのまま機龍とゴジラは海底に消えていった。モスラは島へ帰り、人類は失敗を学んで成長するのだった。
ゴジラの骨格を使用したという点がネックとなり、前作に続いて機龍の運命というところに焦点が置かれており、これまでのメカゴジラとは一線を画す展開になっている。結局帰るべき場所に帰るという結末はなかなかだが、ついに自我を持つとは…。それにしても前回の熱線に対して防御力皆無という反省が全く生かされていないどころか、最大の武器のアブソリュート・ゼロもない機龍は普通に弱かった…。モスラもモスラで小美人経由で命がけでゴジラを倒すと宣言しておいて命かけてもお約束のパターンで敗北ってどうなのよ…。せめて平成シリーズのようなビーム攻撃くらいは駆使してほしかった。
『モスラ』とのリンクで中條が大活躍するのはいいが、平成モスラシリーズならともかく、43年も前の映画だけにメインターゲットの子供たちには中條が出てきても何の感慨もないのではないか…。オールドファンじゃないと、この登場は楽しめない。70年の映画『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』に出演したカメーバが死体とはいえ33年ぶりにスクリーン復帰したり、親モスラが倒されて双子の幼虫が繭でグルグル巻きにするっていう流れはまんま『モスラ対ゴジラ』と、昭和の怪獣映画とのリンクがこれだけあるのは当時を知る親世代に楽しんでもらうためだったのだろうか。
また金子昇と吉岡美穂の関係はもう少し盛り上げても良かったような…。吉岡美穂、ヒロインなのに出番が異常に少ないし。
★★★★☆