ゴジラ対へドラ
1970年公開の11作目。子供向けオールスター的内容が続いていたが、久々に1対1の対決路線となった。環境公害問題を前面に押し出したシリアスな内容となっており、娯楽色の強いミニラや怪獣島などの設定も全て出てこない。ゴジラはどこからか現れてどこかへと去っていく存在として描かれているなど独立作品色が強い。前作までに起きた事件を出演者が記憶しているかのような続編的なニュアンスもなくなった。ただ前作に続いて子供が主人公になっており、比較的この少年の視点で物語が進行する(この子供のいったとおりにゴジラが出現するなど、子供目線で展開する出来事が序盤に多い)。子供にとってはゴジラは憧れの対象で、ヒーローに近い存在というような扱いは続いている。
ゴジラが熱線で空を飛ぶというトンデモ描写が話題になったが、製作の田中友幸(1作目〜「VSデストロイア」まで)の反対を押し切って坂野監督が強行したらしく、以降この監督は今作の続編の構想もあったらしいが、起用されなかった。
公害が問題になり、大量のヘドロで汚染された駿河湾の河口でおたまじゃくしのような謎の生物が発見される。調査に乗り出した矢野博士(山内明)だったが、海底でこの生物に襲われてしまう。その子供の研(川瀬裕之)はこの生物をヘドラと呼び、ゴジラが倒しにやってくるんだと宣言する。
やがてその生物はタンカーを次々に沈めて、夜の街へと上陸。工場の煙を吸ってパワーアップしたヘドラは、やってきたゴジラと対決。死闘の末に、ゴジラがヘドラを仕留めたかに見えたが、攻撃はさほど効いておらずヘドラは逃走。
一方で矢野はこれ以上、ヘドラが進化したら取り返しがつかないと、怪我をおして研究を続け、乾燥させて倒すための装置を自衛隊に用意させるように進言。
ヘドラは飛行形態となって、飛び回り、硫酸ミストをばらまく。ヘドラが飛行した後は、金属はボロボロの錆だらけ、人間も骨だけになって死んでしまう。再びゴジラと対峙したヘドラだったが、ゴジラの攻撃はほとんど通用しない。圧倒的な強さを見せるヘドラ。ゴジラは片目を潰されたり、片腕を溶かされたりして、何度も倒されながらも懸命に戦い続ける。一時は完全にダウンしてしまい、飛行形態で運ばれた挙句に山中の穴に突き落としてヘドロ漬けにされるなど、決定的な場面もありながらも何とか体勢を立て直して(ここの経緯が少し曖昧になっている。ヘドロ漬けにされている時に突然現れた自衛隊が酸素を投下。この後に描写が曖昧になり、別の場面に移る等よく分からないうちにこの場を離脱)、何とか戦闘を続けるが勝機は全く見えない。
自衛隊の乾燥作戦の準備が進み、ヘドラをおびきよせるが、電線が破壊されてしまう。放射できる位置にヘドラが来たが、修理が間に合わない。そこにゴジラが登場し、何故か熱線を電極板に当てると放射が開始。ついにヘドラに決定的なダメージを与える事に成功。崩れたヘドラから謎の球2つを取り出し、これも乾燥させたので勝利かと思いきや、中身から本体が脱走。飛行形態で逃げていくヘドラを追うために、ゴジラは熱線を放射しながら飛んで追撃。弱っていたらしいヘドラをのして、再び飛んで帰ってきたゴジラはこれも再び乾燥させ、完全に消滅させることに成功。いずこへと去っていくのだった。
全体的に人間のシーンが短く、ゴジラとヘドラのシーンが非常に多い。前作で映像を使いまわししまくっていた事を考えると凄い気合の入りよう。それでも序盤の少年視点の展開は辛いものがあった。また公害問題を前面に押し出しており、イメージ映像を何度も挟んだり、変な歌が出演者の1人によってOPから何度も熱唱されたり(「水銀、コバルト、カドミウム〜♪」など、直接的な歌詞と直球な歌謡メロディーが物凄いインパクト)と、これまでの作品とは一線を画す独特の作風になっている。犠牲者の数も、下手したら1作目とかより多いのではないかという勢いで、人が骨になる描写は連発されるわ、バタバタ倒れるわ、久々に主役サイドの仲間も死ぬわと凄惨。それでいて少年視点だったりもする前半は少しどういう方向なのかつかみにくいところがある。後半は少年放置(ていうか何で少年と死んじゃった青年の恋人(主題歌の女)の2人だけあの位置で生き残れたのか…)で、戦闘シーンのみになるので見やすくなる。
恐らくヘドラは、ゴジラ映画史上最強の敵だったのではないかと思う。ここまで歯が立たずに苦しんだ相手は他にいないし、モスラ以外にはここのところずっと最強・楽勝ムードだったので、今回の大苦戦は凄く印象的。
ただ、薄暗いシーンが多いので非常に見にくく、戦闘シーンも前述の窮地脱出の謎など飛び飛びで分かりにくいところが多かったのが残念。
★★★☆☆