劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影
2012年公開。漫画・アニメ「HUNTER×HUNTER」の初の映画作品。99年にもアニメ化されており、原作が途中で止まったため追いついてしまい、以降はOVAという形で継続していたが、2011年に制作会社、放送局を移動して再び最初から作り直している。今回はその2011年開始版のアニメの進行具合に合わせて、幻影旅団編終了後くらいの時期という設定になっている。またクラピカの過去を描いた原作漫画が存在し、そこからオリジナルで話を膨らませたストーリーとなっている。これは公開当時にジャンプ本誌に掲載されたほか、「0巻」と称して劇場来場者100万人に配布された。
クラピカの目を奪われる事件が発生し、ゴン、キルア、レオリオが再び集結。犯人は元幻影旅団のNo.4オモカゲだと判明し、幻影旅団も交えて戦いが繰り広げられる。
とざっとこんな話。ゴンとキルアがそれぞれの固有の能力を会得するのはこの後なので、「ジャジャン拳」も電撃を使った能力もまだ覚えてない。よってこの2人はオーラを纏うくらいしか出来ない、レオリオはそもそもその段階ですらない、というのがストーリー上かなり痛い。
要するに主人公パーティー4人のクラピカ以外の3人はまだまともな戦闘力を兼ね備えていない上に、ゴンとキルアが必殺技習得前なので、主人公の必殺技でガツンと締めるというバトルモノアニメ劇場版のお約束が出来ないわけで…。
ゴンとキルアはオーラをまとって突進するだけという全く盛り上がらないど根性一直線みたいな活躍しかできない始末。クラピカも旅団にしか使えない能力を元旅団相手にOKとみなすというムチャクチャな理由で使用し始める始末。原作ファンからメチャクチャに叩かれてしまう散々な映画となってしまったのは、主にこういった「設定に対する認識の甘さ」が原因だろう。
とはいえ制作側もかなり原作設定に遠慮して、原作にあった要素を抽出して登場人物同士の関係性を描いたり、よくありがちなアニメオリジナルの勝手な必殺技とかは極力出さないように気を遣っている気はした。その結果が突進するだけのゴンとキルアになってしまったなら時系列無視してでもジャンケングー!して良かった気がするけど。
また本来子供向けアニメならある程度の矛盾は許容範囲内だし、実際2011年版のアニメだけ見ている子供たちならまあそこまでおかしくは感じないと思う。
この映画がこれだけ不評なのは「HUNTER×HUNTER」という作品のファン層にある。原作がこの時点で30冊程度だが、実際には98年連載開始。何度も連載が止まりながら続いてきている上に、2011年のアニメ化まではこれといったメディア展開が無い時期が長年続いていた。現在は子供達より元子供達のファンの方がたぶん多い。連載開始当時に中学2年生だった俺がもう30手前だ。連載開始当時の10代以下も漏れなく元子供達になっているくらいの年月が経過している。設定の緻密さも人気の要素だけに、大人になっても読み続けている読者はそういった細かい設定にはこだわる人が多くなるのは必定。そんな状況下でこんなツッコミどころ満載の話を作ってしまえばそりゃこうなる。
なんかそれなりにキルアの葛藤とか、クラピカの過去とかそれっぽく描いてはいて子供の頃だったらまあこんなんでもそれなりに納得したんだろうけど、原作で幻影旅団編に差し掛かったのは大体01〜02年頃で当時高校生だったのでたぶんその当時に見てても微妙。さらに10年以上も経って見れば、確かにこれはちょっときつすぎる。
もちろんいいところもあってオモカゲの倒し方とかは綺麗にまとまっていて良かったと思う。
あとオモカゲ役の藤木直人はまあいつもよりサイコな藤木直人程度でありなんだけど、パイロ役の川島海荷が棒読みすぎ。これは毎年コナンの映画で出てくる声優素人のタレントどころか、1シーン出演の子供たちの声優体験ハイパー棒読みレベル。川島海荷のドラマや映画での演技は別に下手だと思った事は無かったけど、声優になるとここまで下手だとは…。
★★☆☆☆