キングコング対ゴジラ
1962年公開の3作目。7年ぶりのゴジラ映画となり、今作からカラーになった。アメリカで人気のキングコングを破格の契約金で出演許可を取り、怪獣対決モノの流れを決定付けた作品だという。当時は映画自体がブームだった事もあり、今作がゴジラ史上最大のヒット作で、1255万人を動員したという(末期のゴジラシリーズは100万割れ)。そのため、破格のキングコングの契約料も軽く元を取ったと言われている。1作目で芹沢博士を演じた平田明彦が、重沢博士という別人の役で、ゴジラやキングギドラの行動解説・指南役として登場している。これ以降、以前の作品で主要人物だった役者が全く繋がりのない別人の役で再度出演するというパターンが増加する。平田明彦も昭和シリーズでは色々な役で何度も出演した。今作から「南の島」「原住民」が頻繁に出てくるようになって、重厚な雰囲気よりも娯楽色が強くなっていった。
パシフィック製薬の部長・多胡(有島一郎)は、自社が提供するテレビ番組の視聴率(劇中ではTVの歴史がまだ浅かったせいかラジオで使用される「聴衆率」と言っている)不振を打開すべく、南国のファロ島で「伝説の魔神」を日本につれてきて話題をかっさらおうと画策。部下の桜井(高島忠夫)と古江(藤木悠)を向かわせる。現地住民たちは日本語が通じず、完全な原始人スタイルでドンドコ踊り、歌っているような連中だった。拒む島民に対して、2人は通訳を介してラジオ受信機やタバコなどの文明の利器で島民を釣ることに成功。協力を約束させる。やがてその魔神とはキングコングだと判明。村を襲った大ダコを一蹴したキングコングだが、用意していた睡眠薬の紅い実で眠りに落ちて日本へと輸送される。
一方で、ゴジラは北極の氷山の中から復活。
前作で日本の北の海で氷に埋められていたのでゆるっと繋がっているようだが一応日本の領土内だったはずで北極レベルではなかっ日本へと向かう。輸送中のキングコングも目覚めて脱走して、怪獣の本能によりゴジラを追ったキングコングは那須高原で対峙する。しかし、ゴジラの熱線にうろたえたキングコングはあっさり敗走。キングコング、ダメじゃね?ムードが高まる。その後、高圧電流作戦でゴジラの足止めに成功した防衛軍だったが、キングコングも誤って電流を浴びてしまう。
もうあんなデカいだけのゴリラにつきあいきれねーよというムードの中で、電流を浴びたキングコングは帯電体質になりパワーアップ。人間の美女好きという設定を生かしたのか、桜井の妹であるふみ子(浜美枝)を、破壊した電車の中からつまみ出して、握ったまま国会議事堂前へ。ここで再び紅い実の睡眠薬作戦により眠らされ、ふみ子を救出後、帯電体質になったから今度は勝てるんじゃないかということで、再度ゴジラと戦わせようと巨大風船と輸送機を使ってゴジラの元へ空輸。空輸されるキングコングが滑稽すぎる。空輸されたキングコングだったが降ろし方がかなり雑で、山の斜面に落とされたため、斜面を滑り降りた勢いでそのままゴジラに勢いよく衝突。豪快にゴジラを吹っ飛ばす偶然の初撃に期待させられるものの、早速隠れて様子見する始末。以前ほど熱戦にはビビらないものの、やはりゴジラ相手には自慢の怪力も全く通じず、やられる一方のコング。死んだフリ作戦などで不意打ちを試みるも効果なしで、死んだフリどころかリアルに焼き殺されそうになってしまう。
しかし、そこに落雷が!落雷により帯電体質がさらに強化されたキングコングは復活。手から放電しながらゴジラを苦しめ、ようやく自慢の怪力が出てゴジラを投げ飛ばすなど、らしい戦いを見せる。ようやく互角になった戦いだが、結局決着はつかないまま2匹は組み合ったまま熱海城を破壊して海へ姿を消してしまう。その後、海上にはキングコングのみが現れて南の島へ帰っていくのだった。
小学校当時にビデオで見た印象は「最後は2人で海に落ちてキングコングだけ出てくるけど、ゴジラ本気で戦ってなかったような…」というもの。どことなくキングコングに配慮しているなぁ…という感じを子供心に感じたのを記憶している。大人になって見てみるとよりそう思った。せっかく借りてきた人気キャラだけに雑には扱えないとはいえ、気を遣いすぎで結局雑に扱ってしまうという本末転倒な展開だ。
本家のキングコングは見た事がないが、そもそもキングコングはただの怪力巨大ゴリラ。光線を放ったりできるわけではなく、岩を投げるだけのコングに対して、核の影響で誕生し熱線も吐ける大怪獣であるゴジラ相手ではどう考えても相手にならない。ゴリラベースの巨大生物VS大怪獣では最初から話が釣り合っていない。
実際、最初の戦いではコングは熱線を前にビビッて逃走。少しパワーアップした様子で再戦するもまるで相手にならない始末。岩投げても効かない。しっぽをつかもうとするので怪力を生かして投げ飛ばすのかと期待すれば、しっぽの力だけで振り飛ばされてしまうなど、力の差が歴然。怪力が聞いて呆れる。帯電体質で、両手をバチバチしだすとようやく互角になるものの、この頃にはもうゴジラは足元にのみ熱線を撃って直撃させないなど配慮してくれている(?)ため、どうにもゴジラの方が圧倒的に強い印象が拭えない。当時の人気怪獣の夢の対決ということで、当時の人々は熱狂したのだろうけど、後追いで見ると、ちょっと対戦相手としてはネームバリューだけで実力がつりあってなかったのではないかと思う。妙に遠慮しているかのような戦闘描写と無理やりドローに持ち込んだ曖昧な決着からのコングだけ再登場して去っていく不自然なラストシーンなどから制作側も分かってたっぽいけど…。
また、人間側は多胡を典型的なギャグキャラクターとして描くなど娯楽色が一気に強くなっている。前作まではあれほど恐れていたのに、視聴率のためなら、怪獣まで連れてきてしまうというマスコミの恐るべき実態はむしろこの時代以降を風刺しているようにも思え…。
★★★☆☆