Godzilla: King of the Monsters
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

2019年公開。モンスターバースシリーズとしては2014年の『GODZILLA ゴジラ』、2017年の『キングコング: 髑髏島の巨神』に続く第3弾GODZILLA ゴジラ』はそのまま公開年の2014年の設定だったが、『キングコング: 髑髏島の巨神』は1973年が主な舞台となっていた。このため時系列としては2014年の『GODZILLA ゴジラ』の5年後という設定の続編となる。芹沢(渡辺謙)ら一部出演者が続投している。

2014年のムートーとゴジラの派手な戦いで怪獣の存在が世間に認知された。それまで極秘に怪獣の存在を研究していた芹沢らが所属する「モナーク」は怪獣は抹殺すべきとする世論や政府内での意見の高まりから組織としての存在意義を問われつつあった。そんな中、2014年のゴジラ出現時に幼い息子が巻き添えとなったモナークの一員エマは生き残った娘のマディソンと共に怪獣との共存を考えながら卵の状態のモスラを管理していた。幼虫モスラが誕生し、怪獣を制御可能な音波装置「オルカ」でモスラを鎮める事に成功した直後、環境系テロリストに2人は誘拐されてしまう。

芹沢らはオルカの開発者であり、エマの元夫であるマークに協力を要請。マークは息子の死以降モナークを辞めていたが、元妻と娘のために復帰。オルカの音波と再度出現したゴジラが南極へ向かっている事を感知したモナークは南極へ向かうが、そこではエマらがモンスターXを復活させようとしていた。攻防の末にモンスターXが復活。向かってきたゴジラとの激しい戦闘が繰り広げられるが、ゴジラは敵わず、モンスターXは飛び去ってしまった。

モンスターXを呼び覚ます際、確かにエマが自ら爆破スイッチを押していたのを目撃したマーク。間もなくエマから声明が届き、怪獣たちは地球の環境を正す存在であり、怪獣たちを呼び起こすことで地球をリセットし、オルカを使ってその後人類と怪獣は共存すべきだと語る。唖然とする一行だったが、ほどなくしてラドンも目覚めてしまう。モナークがラドンを誘導してモンスターXに向かわせてぶつけ合わせたところラドンはあっさりやられてしまう。そこにゴジラが駆けつけて奮戦。首を1本もぎ取る活躍を見せるが怪獣パニックに焦った軍隊は極秘に開発していたオキシジェン・デストロイヤーを躊躇なく使用。ゴジラとモンスターXに直撃するが、まさかのモンスターX無傷。しかしゴジラは弱ってしまい一旦は死亡認定されてしまう(ギリギリで生きていたことが後に判明)。

失った首も再生させたモンスターX改めキングギドラとして世界に君臨し、オルカでの制御も効かず、キングギドラの呼びかけで各地に眠る怪獣たちが目覚めて暴れ始めてしまう。ゴジラは恐らく地球の怪獣の王としてかつて君臨していてキングギドラは地球の法則を完全に超越している事から宇宙からやってきた存在でかつて地球の王をかけてゴジラと争ったのだろうと推測され、ここにきてオキシジェン・デストロイヤーによりキングギドラに唯一対抗できたゴジラだけをぶっ倒してしまった事に気づいて唖然とする一行。

その頃モスラが成虫となり、ゴジラとは共生関係にあるようでモスラの導きでゴジラが海中深い古代都市の跡地で力を回復させている事が判明。モナーク一行は古代都市で眠るゴジラを発見するが回復には時間がかかりそうなので手っ取り早く核爆弾で力を与えて起こすことに決まり、芹沢が自らを犠牲にしてゴジラに世界を託すことを決意。

暴走する母親のエマについていけなくなったマディソンはオルカを奪い去って、キングギドラを誘導。芹沢の犠牲で復活したゴジラも駆けつけて最終決戦となる。モスラも駆けつけて増援するが、そこにキングギドラに屈服したラドンが襲来。2VS2の激しい戦闘が繰り広げられる。

火を司るラドンの攻撃に焦げまくりで劣勢となったモスラだったが、ギリギリのところからの不意打ちの爪の一撃でラドンを撃破。ゴジラはキングギドラ相手に一旦は敗北してしまうが、代わって特攻して散ったモスラのパワーを吸収するとバーニングゴジラ状態となって復活。体内放射の連発でキングギドラを圧倒して粉砕すると最後に残った首も熱線で破壊してついに勝利。

実は生きていたラドンも含めて蘇っていた怪獣たちはゴジラを王として認め、ゴジラはその頂点で王としての雄たけびを上げるのだった。

 

 

ド派手な怪獣バトル映画としてのゴジラが現代に蘇った、といった装いの1作。新解釈もあるけど、今作は相当深く歴代の日本のゴジラへの敬意、オマージュが込められていてシリーズを知る者ほどその描写に胸が熱くなる。

ストーリーは前作ほどメインになっていないが、主人公一家とモナークを中心に進行。トラブルメーカーとなったエマのけっこうなクズっぷりはいいにしても、ついに1954年初代以来の登場を果たしたオキシジェン・デストロイヤーのぞんざいな扱いに始まり、核兵器や放射能の扱いなどお国柄というか考え方の差異が出ている場面に関しては日本ではやや違和感…という部分もある。ただド迫力な戦闘シーンと昭和シリーズ、平成VSシリーズ、ミレニアムシリーズと歴代の要素を組み合わせたような各怪獣の設定はやはり熱かった。またオキシジェン・デストロイヤーにしても1作目にして禁断の化学兵器という印象が強いが、良く考えたら1954年時点で偶然とはいえ製造できたものが41年経った95年に再現に到達できず(VSデストロイア)、65年経っても未だに作れないで伝説の兵器のまま…というのもどうかというところもある。とはいえ聖域化しているオキシジェン・デストロイヤーを国内シリーズで再度出すには相当な勇気が必要でたぶん誰もやろうとしないだろうから、ここでポーンと出してしまえるのはアメリカならではなのかも。

特に1作目へのリスペクトは国内でも何度も行われてきたが、ミレニアムシリーズ以降は設定リセットが基本だったし、『FINAL WARS』で登場した怪獣も昭和オンリーだった。しかし今作では初めて平成VSシリーズ以降がオマージュされているような要素が含まれていてこれが平成VS世代としては嬉しかった。制作側がどの時期かというのに偏らずにかなり平等にゴジラシリーズ全期に渡って相当な熱いファンだったことは間違いない。ざっと列挙していくと…

ゴジラやモスラのテーマ曲をアレンジして採用。このためエンドクレジットの中で曲名と作曲者として故・古関裕而故・伊福部昭の名前が出てくる。

・2017年に亡くなった坂野義光中島春雄への追悼(中島氏は写真付)も最後に表示される。坂野義光は『VSヘドラ』の監督で、ゴジラが熱線で空を飛ぶという描写が原因で田中友幸を怒らせ2度と監督させてもらえなかった事で知られるので正直日本のゴジラシリーズに長く関わった人物ではない。しかし晩年にIMAXによる3Dゴジラ短編映画の製作権を獲得したものの出資が得られず断念するもこの企画がハリウッドに持ち込まれて採用されて前作が制作される事になったので、前作ではエグゼクティブ・プロデューサーの立場で参加していた。中島春雄は初代ゴジラのスーツアクター。今やCGでゴジラを動かす時代となっているが、ゴジラを長く演じた役者への敬意をしっかり見せている点に愛情深さを感じた。

・ラドンが火山から登場するのは初代の阿蘇山イメージ(『空の大怪獣 ラドン』)を彷彿とさせる。炎を司る能力は『VSメカゴジラ』のファイヤーラドンの設定を引き継いでいる。

・モスラに小美人は出てこないがモスラの卵の監視を担当していたモナークの幹部が代々双子の女性の一族という設定になっていて(1人2役だが、一方は1シーンしか出てこない)、小美人をオマージュしている。

・モスラが黒焦げになる、やられて爆散するなどの展開はミレニアムシリーズで何度か出てきた展開で、モスラがゴジラにやられて爆散してキングギドラにパワーを与えるのは『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』でやっていて、メカゴジラにやられて瀕死のラドンがゴジラにパワーを与えてゴジラが圧倒的にパワーアップして復活する展開は『VSメカゴジラ』でやっている。今回の展開はこれらが組み合わさった感じ。

・キングギドラの設定は歴代の設定をうまい事融合させている。地球の怪獣ではない、宇宙から来たというのは初代の設定。モンスターXという当初の呼び方はX星人が『怪獣大戦争』で怪物0、『FINAL WARS』(正確にはキングギドラではなくカイザーギドラ)でモンスターXと呼んでいたもの。再生能力まで兼ね備えていて、こちら側が通常時では歯が立たず、パワーアップしないと勝てないほどの圧倒的な実力は『モスラ3』での最強設定をだいぶ引きいでいる。

・終盤のゴジラのパワーアップは『VSメカゴジラ』『VSスペースゴジラ』『VSデストロイア』で出てきた展開で、特にバーニングゴジラ的な雰囲気と体内放射だけで敵が激しくダメージを受けていく圧倒的な威力というのは『VSデストロイア』を彷彿とさせる。

・怪獣を守り神のように扱う神話的な設定は『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』に近い。この映画ではゴジラが悪役でモスラ・キングギドラが協力関係にあってゴジラを倒そうとする展開(モスラがゴジラの熱線で爆散してその粒子がキングギドラをパワーアップさせる)なので今作と関係性は異なるがやろうとしている流れは似ている。

そんなわけで色々な要素が詰まっているが特に『VSメカゴジラ』、『VSデストロイア』、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』辺りの影響が強いのかなと感じた。

そんなわけで今作、シリーズのファンであれば多少の違和感を抜きにしても問答無用で楽しめる1作だと思う。一方で今作には主人公一派の物語はある程度予定調和的なものになっているので、人間ドラマや駆け引きもほとんどない。ほぼ新しい解釈で新たなゴジラを作り上げた『シン・ゴジラ』を特に絶賛…というか今までゴジラ見てなかったのに『シン・ゴジラ』だけを大絶賛していた人々には昔のシリーズノリがふんだんに盛り込まれた怪獣バトル祭りみたいな今作は受け付けないだろうなとも思った。

★★★★★

B07XH5X2NJBlu-ray B07XD878L5DVD

戻る