暗いところで待ち合わせ

交通事故の影響で全盲になってしまったミチル(田中麗奈)は父(岸部一徳)と暮らしていたが、開始10分足らずで父が死亡。1人暮らしとなる。友人のカズエ(宮地真緒)が外に連れ出してくれる以外は外部との関わりなく、引きこもりに近い生活を送る中で、ある日、在日中国人のアキヒロ(チェン・ボーン)が家に侵入。家の前の駅のホームで突き飛ばされて死亡したアキヒロの上司(佐藤浩市)を殺した容疑で警察に追われている人物だった。やがて気づかれないようにミチルを見守っていくアキヒロ。2人の奇妙な共同生活の行方は…・

という感じのお話。乙一の同名小説の映画化だが、アキヒロの設定が在日中国人(ハーフで中国育ち)でそれも理由に差別されるということで、原作と日本人らしいのだが職場いじめを受けていた末の上司への殺意という点を強調するためだろうか。

話はゆっくりと進む。共通の「孤独」を背負った2人が、やがて奇妙な連帯感の末に成長していくだけで話が終わるかと思いきや、どうもそれだけではない伏線が徐々に大きくなっていく。ミチルの家に侵入してからは、ずっと窓から現場のホームを見ているアキヒロ。何度も回想される「殺害」シーン。いくらアキヒロにとって忘れられないシーンだからって繰り返しすぎだろと思っていたら、徐々にシーンが増加していき、終盤ではかなり大きく物語が動く。予想していなかった展開だけにこれはおもしろかった。その結末は思いのほかあっけなかったのがちょっと微妙だったが、設定が斬新だったし期待よりもおもしろい映画だった。

田中麗奈は実に99年の『GTO』以来の短髪。ハットリくんに続いての盲目者だったが、今回は作りこみが違う。「はつ恋」以来の傑作だったと思う。なお田中麗奈は中国の連ドラに進出するなどして中国語もマスター。今回共演のチェン・ボーンとは連続共演で「幻遊伝」にW主演で出ている。

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印象度★★★★☆

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