モスラ2 海底の大決戦
97年公開。平成モスラシリーズ2作目。前作のそのままの続編になっており、エリアス姉妹のモル(小林恵)、ロラ(山口紗弥香)、ベルベラ(羽野晶紀)が続投。ただし舞台が沖縄に移り、3人の衣装も大幅にチェンジされている。また『ゴジラ』1作目から1番偉いポジションの製作を手がけていた田中友幸はこのシリーズでは企画、原案のポジションについていたが、今作の後に亡くなったためこれが最後の作品となっている。
沖縄では海にゴミが溢れ返っており、そこにヒトデに似た謎の生物ベーレムが大量発生。それは古代文明ニライカナイが生み出し、結果的にニライカナイを滅ぼした伝説の怪獣ダガーラの復活の予兆であった。
危機を察したエリアス姉妹は石垣島に飛ぶ。石垣島ではニライカナイから来た小動物ゴーゴが出現していた。偶然ゴーゴを発見した少女、汐里(満島ひかり)はクラスメイトの男子2名といさかいを起こしていたがそこにベルベラがゴーゴを奪いに出現。難を逃れるために手を組んだ3人はその後にエリアス姉妹と出会い、ニライカナイの遺跡にダガーラを倒す秘宝があると知り、秘宝を求めて海へ出る。一方のベルベラもお宝を狙うハンター2名をそそのかして海へ出る。
やがてゴーゴの力で海上に巨大ピラミッドが出現。内部へ潜入した一行は秘宝を探すが、そこにダガーラが本能的に危機を察して出現。ピラミッドを攻撃し始める。エリアス姉妹はモスラを呼ぶことを決意。
前作でデスギドラを寄せ付けずに瞬殺したモスラは今回も多彩な攻撃でダガーラに攻撃を加えるが、決定打を与えられない。ダガーラは得意の水中戦に持ち込み、水中から竜巻を起こしてモスラをベーレムまみれにしてしまう。力が出せなくなったモスラは海中に引きずり込まれ、水死寸前に。何とか脱出してピラミッドの頂上に着地したモスラだが行動不能に陥ってしまう。エリアス姉妹は波動を連発してベーレムを剥がそうとするが数が多すぎて断念。秘法の力にかけることにしてたのか、あきらめて汐里らを追う。
あまり明確に導いてくれないゴーゴのせいで、難航していたピラミッド内の冒険だったが、ついにピラミッドの深部に辿り着いた。そこに登場した王女(野波麻帆)は、ゴーゴこそが秘宝でありゴーゴは汐里を選んだと告げる。
ピラミッドの頂上では再び襲い掛かってくるダガーラを光線で一時的に吹き飛ばし、何とかしのいでいた行動不能になっているモスラをゴーゴの「命の水」の能力が救えるという。
崩壊するピラミッドから何とか抜け出した汐里たち。ゴーゴが消滅するとモスラに光が降り注いだ。こうして復活したモスラはレインボーモスラへと進化し、ダガーラを圧倒。得意の海中へ逃げたダガーラだったがモスラはさらに水中モードのアクアモスラへと変身し、水中でもダガーラを圧倒。最期は王女に呼応するようにピラミッドごと消滅させる事に成功するのだった。
今回も環境問題、主に海へのゴミ捨て問題を取り入れているものの、前作ほどではなく特に最後に「環境を大切にしないとな」的なオチにはなっていない。むしろ純粋な子供たちと、ハンター2名の悪い大人たちが対比されていて、最終的に純粋な子供たちに悪い大人が救われるという子供の真っ直ぐさとそれに未来を託す的な内容になっている。
トレジャーハンター的要素を組み入れていて冒険色は強いのでワクワク感は強いが、せっかく沖縄が舞台なのに中盤以降はピラミッド内部がメインになってしまうのでなんだかもったいない気がした。まあ伝説の迷獣キングシーサーが出てくる余地はないとは思うけど。
またゴジラシリーズでも過去の怪獣のリメイクが多く、このシリーズでも前作はデスギドラというキングギドラのパチモンみたいのが出ているような流れで、今回のダガーラは完全なオリジナル怪獣で珍しい。凶悪な雰囲気な上に、ただ悪いだけではなく自分の得意な方向に敵を引きずりこんで攻めるという卑怯っぷりが悪役としてはグッド。
今回は沖縄の雰囲気に合わせたのかモルとロラは妙に明るすぎる色合いの衣装になっていて、髪形も変な感じになっている。『ゴジラVSモスラ』時代のコスモス衣装をカラフルにアレンジした程度だった前作の衣装、髪型の方が良かった…。相変わらず、人類を憎んでいて今回も一貫して敵側だったベルベラだが最後にみんなを助けるなど少しだけいいところを見せていた。
また、子役側の主人公で、沖縄出身の健康的な日焼け美少女として、モスラシリーズ3作の子役の中でも特に鮮烈な印象を残している満島ひかりは今作がデビュー作。公開当時12歳(撮影時は11歳?)の小学生だった彼女はFolderとしてデビューした直後で当時は最初にして唯一の演技経験だった。今作の主題歌もFolderの2ndシングルとなっている。Folder時代はバックにいるメンバー程度だったが、後に女子5人でFolder5としてリニューアル。数年のアイドル経験を経た後に、Folder5が突然活動を停止し自然消滅。以降各メンバーは散り散りとなったが、満島は「モスラ2」での経験が元となったようで、05年以降に女優として本格的な復帰を果たしている。モスラシリーズに限らず、「学校の怪談」シリーズ等、この頃に子役として活躍していたそのほとんどが子役時代のみで俳優活動を終える中で、異例の経歴をたどって再デビューを果たしている。そのためか、「モスラ」「モスラ3」といった前後作のDVDの特典では監督や製作者側のオーディオコメンタリーやインタビューしか収録されていないが、今作のDVD特典のみ満島ひかりのオーディオコメンタリーやインタビューが収録され、当時の思い出を語っているという。なお満島の次の映画出演は9年後の「デスノート」における妹、粧裕役である。
また究極の美少女的な雰囲気でドレスアップして出てきた王女役は当時高校生の野波麻帆で彼女も今作がデビュー作である。
★★★★☆