モスラ
1961年公開。モスラの初登場映画。日本は日本のままで出てくるが悪役となるアメリカ人がアメリカではなく、架空の国「ロリシカ」(ロシア+アメリカからの造語)となっており、ニューカーク市なんていうのも出てくる。映像はカラーになっているのものの、日本は外国人への捜査が思うようにできなかったり、日本の空港で出入国者を検査をするのを日本人ではなく、在日軍が主導権をもってやっていたりと、今となっては違和感のある状況も描かれている。小美人はザ・ピーナッツが演じており、有名な「モスラの歌」も出てくる。小美人は続く『モスラ対ゴジラ』でもザ・ピーナッツが演じており、今作で成虫になったモスラが「モスラ対ゴジラ」では卵を産んで寿命がつきる寸前で再登場するなど話が繋がっている。96年の『モスラ』とはタイトルが同じため今作が1961、96年版は1996と年号をつけて区別する事が多い。この2作に繋がりはない。
43年後、03年の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』は今作と同一世界の設定となっていて、今作で中條を演じた小泉博が再び同じ役で出演。今作での出来事に触れるセリフがある。
座礁した貨物船の乗組員がインファント島に漂着。ロリシカ国による水爆実験による汚染で死の島とされていたインファント島に漂着したのでは生存は絶望と思われたが、全員検査を受けても何の異常も見られなかった。インファント島への調査隊が組織されて、インファント島の探検が始まるが、指揮をとるネルソン(ジェリー伊藤)は怪しげな行動を連発。紛れ込んだ新聞記者の福田(フランキー堺)は言語学者の中條(小泉博)と共にネルソンへの不信感を募らせる。
やがて小美人に遭遇した一行だが、捕まえて帰ろうとするネルソンに対して中條ら日本人調査団は猛反対。ドンドコ原住民が迫ってくる中、仕方なくネルソンもあきらめて小美人を原住民へと返した。この島はそっとしておいたほうがいいと判断し、調査隊全員は帰還後も口を閉ざしたままだったが、ネルソン一行は再度インファント島へ出向いていた。小美人を拉致し、迫り来るドンドコ原住民を容赦なく一掃したネルソン一行は、日本に戻り、小美人を見世物にした「妖精ショー」でぼろ儲けを始める。福田らの反対にも耳を貸さずにネルソンは商売を続けるが、小美人がショーで歌っている曲はモスラを呼ぶためのものだった。話をすることだけ許可された福田らを信用して初めて日本語で喋り、モスラのことを話す小美人。しかし福田らの再三の説得でもネルソンを止める事はできなかった。
ほどなくしてモスラが卵から孵化し、東京へとやってくる。防衛軍による爆撃で死んだかに思えたモスラだが、しれっと別の場所に出現。福田らが危機を回避するために持ってきた遮断カバーを悪用してネルソンらはそのままロリシカへ逃亡。小美人の居場所が分からなくなったモスラは最終的には当時まだ出来て数年だった東京タワーをポッキリ破壊し、そこで繭を作り始めた。
ロリシカが提供した原子熱線砲で繭を焼き尽くし、ついにモスラは倒されたかに見えたが、焼かれたのは繭だけで中からは成虫が飛び出した。それを知らなかったネルソンは安心して遮断カバーを外してしまっており、モスラはロリシカへと向かっていく。
敵は出てこないどころか戦闘もない。悪役は人間。悪い人間が小美人を見世物にして、主人公らが止めようとするもそこにモスラが救出に登場。モスラとしては助けに来ているだけで破壊する気は無いのだが、結果的に歩くだけで町中を破壊してしまうため、防衛軍は攻撃せざるを得なくなり、事態が余計悪化していくというパターンは後に『ゴジラVSモスラ』でも採用されている。
記念すべきモスラ初登場作として感慨深いものはあるが、特にこれを見ていないと『モスラ対ゴジラ』の内容が分からないということもない。こっちがオリジナルとはいえ、世代的には悪い人間が小美人を見世物にしてモスラが助けに来るというプロットをなぞっている『ゴジラVSモスラ』のリアルタイム世代なので、それを先に見てしまうとオリジナルは今作なのに、見たことのある展開が繰り広げられていて不思議な感じがした。
何でも当初の完成形ではネルソンがモスラの追撃に遭うという、ストーリー展開的に当然の流れが用意されていたのに、アメリカ側の要望でカットになってロリシカを襲撃するという内容に急遽変更されてしまったらしい。元のバージョンで見たかった。
★★★☆☆