モスラ

96年公開の平成モスラ3部作1作目。前年にゴジラシリーズが『ゴジラVSデストロイア』で完結。ゴジラが復活するまでの3年間はこのモスラシリーズが公開されていた。61年の『モスラ』とは何の関連もなく、またゴジラシリーズとの繋がりも全く無い。最初に出てくる成虫は技も容姿も『ゴジラVSモスラ』に出てきたモスラと同一だとも思えるが、小美人の設定や登場人物がモスラの名前さえ知らないなどの描写から繋がりは無いとされている。

主人公は少年少女を中心とした4人家族でファミリー向けとなっているが、環境問題を大々的に盛り込んだり、環境破壊を報道している善人ぶった記者が身勝手な奴だったりとけっこう社会派な描写も目立つ。またゴジラ映画でも数少ない、怪獣の被害にあった人で溢れかえる野戦病院状態の描写も登場する。

また小美人はこれまでキャストが変わっても一貫して2人は同じ衣装で同じ台詞をユニゾンで喋っていたが、今回はそれぞれに名前がついていて衣装も違えば、性格も違うなどキャラ設定がなされている。

北海道の森林伐採現場で出現した古代遺跡。何も考えずに遺跡のメダルを外した裕一(梨本謙次郎)はそれを東京の自宅に持ち帰り、ペンダントにして娘の若葉(藤沢麻弥)にあげる。しかし、これはデスギドラを封印していた「エリアスの盾」という超重要アイテムだった。

エリアス姉妹のモル(小林恵)、ロラ(山口紗弥香)はメダルの行方を追うが、一足先に黒い妖精ベルベラ(羽野晶紀)が若葉の元へ駆けつけていた。メダルを奪ったベルベラは若葉を操り、兄の大樹(二見一樹)をボコにした後に、母の真紀子(高橋ひとみ)を拘束。そこにエリアス姉妹がフェアリーモスラに乗って駆けつけ、ベルベラが乗るガルガルと激しい室内空中戦を繰り広げる。容赦なくビーム攻撃を連発する双方の激しい戦いで、リビングに置いてあった物はほぼ全て破壊しつくされ家はメチャクチャに。最終的にはベルベラは逃亡。

事情を聞かされた3人は父が向かった北海道の遺跡へと急ぐが既にデスギドラは復活寸前だった。ファミリーの活躍でメダルだけは奪還したものの、デスギドラは復活。エリアス姉妹は、卵を産んで寿命が突きかけている親モスラを呼ぶことにする。やってきた親モスラはいきなりビームや鱗粉、電流などを駆使したフルパワー攻撃を仕掛けるがデスギドラの頑丈さの前に歯が立たず、劣勢になってしまう。力尽きる寸前のところで、親を救うために早めに孵化した幼虫が駆けつける。七色の糸を吐き出し、糸がスパークするなど歴代モスラには無かったかつてないほどの強力な攻撃に見えたが、デスギドラは気合でそれを振り切ってしまうなど最強ぶりを見せ付ける。噛み付かれて黄色い血を流しながらも、さらに幼虫はモスラ幼虫史上初となるビーム光線をひっくり返って胸部から放つという離れ業を見せるがこれも効かず。親子の連続攻撃でも全く歯が立たずに2体は追い詰められていく。

勝てないと悟った親モスラはダムにデスギドラをおびき寄せてわざと破壊させ、水流で動きを止め、その間に幼虫を抱えて逃走。しかし、直後に力尽きて海面へ落下してしまう。幼虫の必死の助けも虚しく、二度と飛び上がれずに水没していく親モスラ。

幼虫はその後、屋久島の樹齢1万年の屋久杉に繭を作って変身。新生モスラとして生まれ変わり、再度デスギドラへと挑む。正面からぶつかりあっても吹っ飛ぶのはデスギドラのほうというほどの圧倒的なパワーアップを見せた新生モスラはさらに多彩なビーム攻撃を駆使して一方的にデスギドラを始末する。実力の半分も出してない程の圧勝でデスギドラを再封印した新生モスラは破壊された森林を修復して去っていくのだった。

 

個人的には劇場に見に行った最後の怪獣映画が今作だった。当時も面白かった印象があり、特に親子の共演と親モスラの最期、新生モスラの圧倒的な強さなどが非常に熱くて印象的だった。

さらに当時は室内空中戦におけるCGの駆使を始め、戦闘シーンにおける光線のカラフルさなどはけっこう凄かった記憶があったが、今見ると全体的にまぶしすぎる印象もあった。CGが一気に進化した時代だったので、使いまくりたかったのだろうか。

さらに当時は気にならなったが、エリアス姉妹に「こっちに逃げて」と山の中を逃げていった大樹と若葉は何であんな険しい岩山なんていう怪獣よりも危険なところに行き着いてしまったのか?とか、ベルベラは単にイタズラ好きでみんなをいつも困らせるとか言ってたけど、度を越えてないか?とか、そもそもデスギドラを操ろうとしていたけどベルベラ程度じゃ無理だったんじゃないの?とか色々思うところはあった。

ただ環境問題を始め、メッセージ性も分かりやすく詰め込まれているし、人間的なエリアス姉妹の設定や、進化したモスラの設定などは今見ても十分面白いと思った。ただ人間的な小美人や何でもアリになってきたモスラに対する新設定が受け入れられない昭和シリーズファンも多いような気はする。

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★★★★☆

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