そのときは彼によろしく
市川拓司原作の小説の映画化。『いま、会いにゆきます』『ただ、君を愛してる』などと同様の難病ファンタジーラブストーリー。主演は長澤まさみ、山田孝之、塚本高史。とりあえずキャストが豪華で、他にも北川景子、国仲涼子、黄川田将也、小日向文世、和久井映見と連ドラ常連にして主演級キャストがずらりと勢ぞろい。
幼馴染と約束した夢であるアクアプランツショップ「トラッシュ」を開店した智史(山田孝之)の前に、突然トップモデルの森川鈴音(長澤まさみ)がやってくる。最初は気づかなかった智史だが、やがてそれが幼馴染の1人である花梨だと気づいた智史。もう1人の幼馴染であり、画家になると誓った佑司(塚本高史)である。音信不通になっていたため行方が分からなかったが、ある日佑司の彼女(北川景子)から佑司が事故で昏睡状態だと知らされる。また花梨もずっと抱えていた病が悪化して残された時間はわずかだった。
という市川作品はこれしかないのか?といい加減思ってしまうかのようなパターンの難病ファンタジー恋愛モノ。『いま、会いにゆきます』はまだ慢性的な体調不良程度だったのと、最初の映画化だったので良かったとしても、『ただ、君を愛してる』の「成長したら死んじゃう」病気といい、今回の「眠ったら目覚めなくなる」病気といい、なんか普通のトーンであっさり説明されてもあまりにストーリーに合わせたかのような都合の良さでイマイチはまりきれない。展開自体もファンタジーとはいえどんどん強引になっていくし、もう市川作品の映画パターンは限界じゃないかと途中までは思っていた。
だが恐らく前2作を見た人なら容易に想像できる「手紙」「タイトルコール」要素の出てくる彼女側視点からの再展開という3作共通のお決まりパターンがけっこう時間の残っているうちに終わってしまい、話が続いていく。新パターンである。少年時代のエピソードを随所に挿入してうまく絡めて行くのも良かったし、終わってみれば今までに無い結末。けっこう好きな映画だった。
それにしても長澤まさみの破壊力は今回も抜群。よく考えたら子供時代の2人にキスシーンがあるのに、長澤まさみと山田孝之のキスシーンが存在しない。そのくらいの徹底ガードぶりなのに何かもう存在感だけで気にならない。どこまでも清純派。
一方で3人一緒に番組宣伝もしていたし、設定でも3人の幼馴染の1人であるはずの塚本高史。「王様のブランチ」での宣伝ではヒゲメガネというやさぐれた風貌で終始うつむきがちで発言も最小限、正直見ててあまり宣伝にならない山田孝之の代わりに長澤と塚本の2人で笑顔を振りまいて宣伝していたのが印象的だった。映画ポスターやジャケットでも長澤まさみをトップに塚本、山田で並んで映っているのでてっきり3人がもっと絡んでいくのかと思ったら、塚本だけ全然出てこない(当然、彼女役の北川景子も出番が異常に少ない)。下手したら塚本の子供時代をやっていた子役の方が出てたんじゃないか?という勢いである。宣伝とは裏腹に圧倒的に長澤と山田の物語だったのは意外だった。
けっこう不評のようだし、実際強引なところは多いし、あまり泣けたりもしなかったんだけど、それでも個人的にはけっこう好きな結末だった。名作一歩手前という感じ。
★★★★☆