怪獣総進撃
1968年公開の9作目。これまで出てきた怪獣以外にもゴジラ映画には初登場となる他の作品の怪獣も大挙して出演。地球怪獣としてゴジラ、ミニラ、ラドン、幼虫モスラ、アンギラス、バラン、バラゴン、ゴロザウルス、マンダ、クモンガ、宇宙怪獣としてキングギドラが登場。最終作の『ゴジラFINAL WARS』までは登場怪獣最多であった。また今作では舞台設定が20世紀末とされており、当時よりも30年近く未来の世界が舞台となっている。劇中の新聞に94年と出ているため94年頃を想定したと思われるが当然のごとく公開から26年後に実際に訪れた94年とはかなり世界観が異なっている。
主人公は前作に続いての出演で3度目の久保明。5作目となる田崎潤や佐原健二、3作目となる土屋嘉男を始めとして当銀長太郎など相変わらず繰り返し出演の俳優が多い。
20世紀末。文明は進歩しており、宇宙開発が進み、月にはスイスイと調査隊が行くようになっていた。また地球でも世界の驚異だった怪獣たちを小笠原諸島にある島通称怪獣ランドに集結させて徹底管理していた。しかし怪獣ランドに突如異変が発生。毒ガスが充満して職員たちは行方不明に。
その後世界各地で怪獣たちが出現して破壊活動を行う(何故かパリにゴロザウルスが出現しているのに、ニュースキャスターがバラゴンが出現したと間違えている…)。原因を探るべく、月ロケットのムーンライトSY-3を使って山辺(久保明)が怪獣ランドに調査に向かう。するとそこにはキラアク星人と名乗る女性型の宇宙人が友好的な笑みを浮かべながら、怪獣たちをコントロールしたと宣言。話し合いを要求するキラアク星人だったが、職員たちも操られており、明らかに侵略目的な様子に激怒した山辺らは反撃。激しい銃撃戦の末にその場を脱出する。
その後、コントロール装置を破壊するため月へ向かってキラアク星人の拠点を攻撃した山辺達は破壊に成功。さらにキラアク星人は鉱物生命で低温になると人間型を維持できず鉱物になってしまうことが判明。冷凍攻撃だと息巻く人類だったが、結局のところ冷凍攻撃は実施されずに、怪獣たちのコントロール権を奪い返したので怪獣を集結させてキラアク星人の地球での拠点を破壊する事にする。
キラアク星人は「地球の怪獣が宇宙の怪獣を倒すことはできない」と、迷言を冷静に告げて、キングギドラを送り込んできたが、7対1では勝ち目が無く(マンダ、バラン、バラゴンが姿さえ見せておらず参戦していない。またラドンも途中からいなくなってしまう)、アンギラスを空中から叩き落したくらいしか見せ場がないままに、総攻撃を喰らってリンチされてしまう。過去2回のように逃走するスキもないまま噛み付かれるわ、連続で踏まれるわでボッコボコにされたキングギドラはミニラの円盤状の熱線を首にすっぽりはめられてついに絶命。
続いてキラアク星人はファイアードラゴンという高速飛行する火の玉を送り込んできた。キングギドラ戦で序盤以降、姿が見えなかったラドンはこいつと戦っていたらしいことが判明する中で、ラドンやゴジラの攻撃を振り切ったファイアードラゴンは、作ったばかりの地球側のコントロールセンターを破壊。何故か勝ち誇るキラアク星人だったが、先ほどアンギラスが落ちた際に地形が崩れて、キラアク星人の基地が丸見えになっていた。そこをゴジラに見つかり、熱線で攻撃されてしまう。熱線は防いだのに何故か足蹴りであっさり基地は崩壊し、操られていた地球人含めてキラアク星人は全滅。ファイアードラゴンもムーンライトSY-3の無敵ぶりの前にあえなく墜落、大炎上。その正体はキラアク星人の宇宙船だった。
その後、再び回復したコントロールシステムを使って怪獣たちは怪獣ランドに集結させられたのであった。
というわけでオールスター的な豪華な内容だが、ゴジラシリーズでは初めて見る怪獣も多く、「あんた誰?」と言うものが多い。ただし他の東宝怪獣映画では1度は出てきたことのある怪獣ばかりなので、全部チェックしていた当時のファンにとっては夢の共演だったのだろう。しかし、バランやバラゴンに至ってはほとんど出てこないのためどれがそれだったのか分からないほどだし、最終決戦でも全員は集結していなかったりもする。
今回未来設定ということで、いかにも当時が思う未来みたいな近未来風のハイテクが描かれるがさすがに今見ると笑ってしまう。地球でも宇宙でも万能で幾度の攻撃にも決して壊れないムーンライトSY-3の万能っぷりは凄い。便利すぎ。
X星人以来となる地球侵略を目論む宇宙人として登場したキラアク星人。X星人の強烈なインパクトに比べて、このキラアク星人は非常に印象が薄い。そもそも7対1でもキングギドラが勝てると自信たっぷりだったアホっぷりがその原因だろう。意味不明な余裕も主な敗因だった。
とにかくキングギドラへの総攻撃はほとんどイジメに等しい。ただでさえ過去2度の敗走で、「逃走怪獣」「弱いんじゃ?」と疑われていたキングギドラだが、最期はあまりに無残だった。なすすべもなくズタボロに嬲り殺されるラストシーンは正直胸が痛いほど悲惨だった。しかも全く参加していなかったミニラが唯一放った輪投げみたいなしょぼい攻撃がトドメとはね…。合掌。
★★★☆☆