すべては君に逢えたから
2013年11月公開。東京駅開業100周年記念作で東京駅を舞台に10人の男女の6つのストーリーが展開するオムニバス型のラブストーリー。以下の6つのストーリーが絡み合いながら進行する。それぞれのストーリーは1話ずつ展開するわけでは無く同時進行する。JR東日本の全面協力で制作されているためか、JRのCMに出ている役者が多く起用されている。いわゆるクリスマス映画でクリスマス前からクリスマスにかけての話となっている…が実際には暑い時期の撮影だったらしい…。
Story1〈イヴの恋人〉
黒山和樹:玉木宏、佐々木玲子:高梨臨
レンタルビデオ屋でバイトをしながら小さな劇団で役者を続けてきた玲子は役者を辞めて故郷へ帰る事を決意。最後に贅沢しようとレンタル屋のお得意さんに高級レストランやバーを教えてもらった玲子はそこでWeb会社社長の和樹と出会う。いきなり金目当てだと失礼な事を言ってきた和樹に腹を立てた玲子は「彼氏が死んだ」と嘘泣きして和樹を慌てさせる。その後も偶然再会した2人は徐々に距離を縮めるが…。玲子の劇団が劇を披露するのがStory4の舞台の養護施設。また和樹の姉がStory5の沙織(大塚寧々)という繋がりがある。全く境遇の違う2人の嘘から始まったラブストーリーということで王道といえば王道だけど、嫌味な奴かと思った和樹が案外いい奴だったり、結末にかけての盛り上がりは良かった。ただあんまり東京駅が関係してない…。
Story2〈遠距離恋愛〉
山口雪奈:木村文乃、津村拓実:東出昌大
ドレスメーカー勤務のデザイナー雪奈と、建設会社勤務で転勤により仙台で復興事業に取り組んでいる拓実の2人が遠距離恋愛ですれ違いながらも…というラブストーリー。明るいキャラの雪奈がとにかくかわいい。もっさりした拓実のはっきりしなさはちょっとイラッとしたが…。雪奈が通勤で利用し、遠距離の2人が久々に再開し、ラストシーンでも東京駅、と今作のテーマに1番沿ったストーリー展開。実際、Story1よりもメインで描かれており、この映画の主役は木村文乃といってもいいくらい出番も多い。遠距離なので2人が会うために経由するのが東京駅であり、最も東京駅が舞台という前提に沿ったストーリー展開ながら、他のストーリーとの絡みが一切無い。Story3〈クリスマスの勇気〉
大友菜摘:本田翼
ケーキ屋でバイトする菜摘は憧れの先輩がいるが告白できずにいた。しかしケーキ屋店長の琴子(倍賞千恵子)に過去の大恋愛の話を聞き、さらにその続きを目撃した事で告白を決意する。映画冒頭で通勤のために東京駅に登場して最初に喋っているのが菜摘だが、この話だけStory6の後見人的なサイドストーリーで憧れの先輩も語られるだけで姿は出てこない。せっかく本田翼を起用しておいてStory6の聞き手役で終わりというのはちょっと残念かも…。前述のようにStory6と密接しており、Story5の正行(時任三郎)が客としてやってくる。
Story4〈クリスマスプレゼント〉
岸本千春:市川実和子、寺井茜:甲斐恵美利
養護施設の職員とそこの子供の話。サンタを信じている健気な姿に思わず遠い目になるが、終盤で「サンタの手紙が日本語だからこれはきっとお母さんが会いにきてくれた」と超解釈する茜の高回転な頭脳にちょっと驚愕した。施設メインで展開するので東京駅は無関係。Story1と密接している。Story5〈二分の一成人式〉
宮崎正行:時任三郎、宮崎沙織:大塚寧々、宮崎幸治:山崎竜太郎
JRの運転士だった正行は不治の病を宣告され退職。息子の幸治は学校のイベントで10歳を記念した二分の一成人式を行うことになる。幸治が20歳になる頃には60歳なので余裕だと思っていた正行は胸をつまらせるが、息子に何か残したいとつい口うるさくなってしまい、関係にひびが…。これはズルい。余命の話持ち出して時任三郎に大塚寧々、さらに子役を置いた家族の話にした時点で完全に泣かせに入っているし、実際これは泣けるんだけど、この映画の中ではちょっと浮いているというか。正行が運転士だったという以外は東京駅とも無関係だし、正行がケーキ買いに行く店が琴子の店なのはまだいいけど、とってつけたように和樹が沙織の弟だと設定したのもなんだか泣かせる話を入れるためにねじこんだっぽい感じ。
Story6〈遅れてきたプレゼント〉
大島琴子:倍賞千恵子、松浦泰三:小林稔侍
菜摘(本田翼)がバイトしているケーキ屋の琴子の話。49年前、駆け落ちしようと約束した相手と東京駅で待ち合わせしていたのに来なかったという大失恋を菜摘に語る琴子。もう大昔の事だから忘れたという琴子の前に謎の老人泰三(小林稔侍)がやってくる。49年という年月を経た話と予想を少し外した展開がなかなか良かった。何で50年にしなかったんだろう。
終わってみれば強く残る話ではないけど、夜景は綺麗だし、暖かい気分になる映画だ。
★★★★☆