ただ、君を愛してる

03年、松田龍平と広末涼子主演で公開された映画「恋愛寫真」。これに感銘を受けた市川拓司が書いたアナザーストーリーである「恋愛寫真 もうひとつの物語」の映画化。アナザーストーリーって何かと言うと、簡単に書けば主人公の名前から話の大筋の流れは一緒でキャラクターの違いやそれに伴う話の流れが違う半分カバーのような作品。

大学入学の日に気弱で人と付き合うのが苦手な誠人(玉木宏)と個性的な幼い風貌の静流(宮崎あおい)は出逢う。なんとなく意気投合して友達になった2人だったが、積極的な静流に対して、同級生のみゆき(黒木メイサ)に片思いしている誠人。成長して大人の女になると決意する静流だったが、初めてのキスを最後に失踪してしまう。数年後NYから届いたエアメールを頼りに誠人は静流を探してNYへと旅立つ。しかし、そこに静流の姿はなく…。

いい感じになる→静流失踪→NYにいるらしい→旅立つ→姿はなく、代わりの人物登場→そして真相。流れは確かに「恋愛寫真」の大筋をたどっている。予告編などの意味深な煽り文句からして何となく予想はしていたが、NY展開になった時点で完全に話が読めてしまった。それでもそこへ向かう人影にわずかな希望を託していたのだが…。裏切られた!「恋愛寫真」における小池栄子の役回りが、黒木メイサだったので、突如暗黒に高笑い始めたらどうしようかと思ったがそこは変えてきたので一安心。

でも「恋愛寫真」自体が好きじゃなかったので今作も結末には納得がいかなかった。これでは誠人の想いはどこへ行けばいいのか分からないし、あんな風にスッキリはできないんじゃないかと思う。市川氏が得意な特殊な病気による理由付けも今回ばかりは話に合わせたようなもので、あまりに強引。その上サラリと台詞で説明するのみで説明不足な点が目立つ。

宮崎あおいのかわいさだけはすさまじいものがあり、ダサい格好してても普通にかわいい。メガネ外したり、大人っぽくなった姿の出てくる終盤はもうハンパじゃない。この映画の印象があまり悪くならないのは宮崎あおいによるところのみといってもいいほど。ストーリーは前述のように納得が行かないし、そもそも好きオーラ全開の女の子に対して、あっさり裏切ったり踏みにじるような発言と言動ばかり繰り返す誠人は、最強に鈍感…を通り越してひどい男にしか見えない。失って気づいたみたいな感じだろうけど、後悔すべき点は多かったはずでそれが唐突に知らされる真相の後であんなスッキリした笑顔を見せるのは鈍感ゆえなのか…本当に理解できない。泣ける映画というよりかは残酷な映画だなと思ったし、救いは感じなかった。これだったらまだ「恋愛寫真」の結末の方がよかった気がする。まあ結末自体は同じようなもんなんだけど、過程とかね。

それでも気合の入っているクライマックスのキスシーンは印象的だったし、そこに至るまでの流れは部分的には良かった場面も多かった。その後で「恋愛寫真」の展開にこだわらなければ良かったんじゃないかと思ったんだけど、そもそもそれありきの話だったわけでそれじゃ本末転倒か。う〜ん、惜しい。やっぱハッピーエンドがいいや。

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★★★☆☆

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