劇場版 とある魔術の禁書目録-エンデュミオンの奇蹟-
2013年公開。アニメ「とある魔術の禁書目録」の映画版。アニメ第2期の7話と8話の間、という設定でこの時点で登場させる事が可能な主要キャラクターが勢ぞろいしている。7話と8話の間、と言われてもピンと来ないが、「残骸」の直後で「大覇星祭」の前となり、黒子が「残骸」事件での負傷で車椅子、一方通行は「残骸」に引き続きまだ入院中の時期となる。
アリサという歌手志望の女の子を巡る魔術と科学のあれやこれやが起きて、上条がいつものようにアリサを助けるために奔走し、他の主要キャラもそれぞれの活躍をするという事でかなりゴッチャゴチャな内容。ほとんどバトルしまくりなので映像的には迫力があって面白いんだけど、90分の尺ではちょっと凝縮しすぎた感じもする。ただ商業的に考えれば、主要キャラをほぼ1回は能力使用で活躍させた上に、新キャラのバックボーンもしっかり描いて、アリサは歌手設定なので歌唱シーン連発でキャラソン展開もバッチリ…と、作品のファンと昨今の流行を同時に押さえたかなり優秀な作品だと思う。
とりあえずアニメを見ていて出てくる主要キャラを知っているなら、勢いだけで見れるし楽しめる。あちこち説明を端折っているので、前日譚とされているゲームの中で語られた琴とアリサが知り合いになった経緯は今作だけでは不明のままとか、クライマックス後の展開もそいつはそれでどうなったんだ…という後日談もほとんど無しで余韻が少ないままに終わってしまうとかアレ?と思うところもけっこうあるけど…。
あと音楽を主軸にしたのはいいけどアリサ(三澤紗千香)の持ち歌が多すぎ。90分の間に6曲も披露するので(シングルではなくミニアルバムとして発売)、結果的に1曲も耳に残らなかった。こういうのってひとまず代表的な1曲をまずドンと印象付けるものだと思うんだけど、特に劇中でアリサの代表曲というのは明言されず、ひたすら今人気があるとされるのみ。歌唱シーンのたびに違う曲にするとかなんと斬新な…。なんとなくボーカルにリバーブかけたり、絵で発光させたりしているのでテーマになっている「奇跡」感を演出しているものの、最後のデュエットで聞かせる奇跡の見せ方が弱くなってしまったし、演じている三澤紗千香を大々的に売り出すにしてもシングルで出せる1,2曲に絞った方が良かったんじゃないか。アリサがインデックスといる時に歌詞が思いついて全裸サービスカットと共に書き下ろし、インデックス(井口裕香)とアリサが一緒に歌おうと約束するのに、最後にアリサが一緒に歌うのが日笠陽子で、井口裕香は劇中で不使用のイメージソングという形で歌手デビューというのもなんだか複雑な事情があるのかないのか…。
★★★★☆