東京フレンズ The Movie
歌手の大塚愛の主演映画。05年に全5巻(5話)発売されたDVDドラマの続編。特にあらすじ説明もないままに始まるのでDVDを見ていないと状況が分からない。事前のDVD版鑑賞は必須である。
DVD版は東京に行けば何か変わると高知の田舎から上京してきた岩槻玲(大塚愛)が、居酒屋「夢の蔵」でバイトを始めるところから始まる。バイト先でひろの(松本莉緒)、涼子(真木よう子)、真希(小林麻央)らと出会い、友情を深める一方でボーカリストが脱退した直後のバンド「サバイバル・カンパニー」のギタリスト隆司(瑛太)に「声が好きだから」と加入させられる。やがて歌という夢に目覚めた玲だったが、サバイバル・カンパニーがいずれは玲のバンドになると感じた隆司は別のバンド、フラワーチャイルズへ加入。地道に人気をつかんでいくサバイバル・カンパニーに対してメジャーデビューも決まってどんどん大きくなっていくフラワーチャイルズだったが…。
映画版では紆余曲折あってNYにいるらしい隆司を探すために玲がNYへ旅立ち、その恋の結末と夢の行方が描かれる。
DVD版最終話においては失踪していた隆司がNYへいるとの情報が真希から寄せられて、玲がNYへ旅立つところで終っていた。この映画版は開始45分まではDVD版最終話の後半を再構築したものとなっている。基本的にははしょられていたストーリーを加える形になっているが(DVD版ラストでは半ば放置されたまま終了になってしまったひろののエピソードを補強したり、NYへ向うに至る過程を大幅に補強)DVD版と重複するシーン(結婚式のシーンとNY行きを宣言するシーン)も全て映画用に新たに撮り直しされており(結婚式のシーンは台詞もほとんど一緒だが贈られてきた真希の絵と手紙が置いてある位置が違うし、NY行き宣言は全体的に位置が違う)、一部の設定・展開も変更されている。そのためそのままDVD版の続きとして見るとストーリーに明確な矛盾が生じる。
例えば、DVD版ではインディーズデビューが決まってレコーディングを経て「シングル1000枚」プレスしていたのだが、映画版では「アルバムでインディーズデビュー決定」に変更されている。この流れで語られていた小さなインディーズレコード会社の和田さん(古田新太)が今の隆司とも被るところもあるようなエピソードが何故か丸々カットされているので、DVD版終盤で見せた和田さんの音楽に対する姿勢や人間性を示す部分がなくなってしまった。結果、ライブハウス支配人(松重豊)とのキャラの差もあまりなくなってしまった。この点が少々残念。
その辺の矛盾を差し引けば、基本的にDVD版の流れを引き継いでいるのでDVD版が楽しかった人なら文句のない結末へ向けて楽しめると思う。基本サクセスなので悪い人とか出てこないけど、夢のあるストーリーとしてはこの上ない仕上がり。けっこう感動した。こんな都合のいい夢ばかり叶うわけが…とか言ってしまうともう身も蓋もない。素直に楽しむべきだ。
NYロケとか若干の派手さが加わったという以外にあまり映画でやる必要性が感じられないところはあるものの(そもそもDVD見た人しか話が分からないなど映画でやるにはかなり閉鎖的)、話としては非常に良かったのでOK。キャストも知っているキャストがぞろり。何気にかなり豪華である。しかもフラワーチャイルズのボーカルも、何か聞いたことある歌い方だなと思ってたら元MOON CHILDの佐々木収だったし。
★★★★★