ゴジラVSキングギドラ

91年12月公開。前作から2年ぶり。今作から昭和怪獣のリメイク登場路線がスタートするが、出自はVSシリーズオリジナルの新設定となっており、宇宙怪獣だったキングギドラも地球の怪獣(23世紀のペット用ミニモンスターのドラット3体が合体して怪獣化した)となっている。またゴジラ誕生のきっかけも1954年ラゴス島でゴジラザウルスが核実験の影響でゴジラ化したとされている。今作では前2作の80mのゴジラが一旦消滅し、新たに100mに巨大化したゴジラが誕生する。ただしタイムパラドックス含めて様々な矛盾が多く、前2作の話は本来無かったことになるはずだが歴史改変後もあった出来事として設定されている。前作ではメインテーマを使用しただけだった伊福部昭だったが今作では全面的に音楽を担当した。

92年、UFOが出現。UFOの行方を追っていた自衛隊機が撃墜される中で、UFOからウィルソン、グレンチコ、エミー(中川安奈)の3人が登場し、23世紀から来たと告げる。ゴジラによって23世紀の日本は滅んでいるので、1954年のラゴス島でゴジラになる前のゴジラザウルスをどこかに転送させるという作戦を告げる未来人。政府はあっさり信用するが、撃墜された自衛隊機2機に関して何か触れないのかよ!

その頃、ライターの寺沢(豊原功補)は戦時中の1944年のラゴス島にゴジラザウルスが現れてアメリカ軍を撃退してくれたおかげで生き残れたという元日本兵の話からゴジラ誕生の秘密を取材していた。

未来人はこの本を書いた(92年当時はまだ執筆前)寺沢と寺沢が協力を仰いでいた恐竜の研究者である真崎(佐々木勝彦)、国立超科学研究センターのゴジラチーム所属になっていた三枝未希(小高恵美)を指名し、エミーとアンドロイドのM11と共に1944年にタイムスリップ。ゴジラザウルスをベーリング海に転移させる。

これにより前作『VSビオランテ』後から海中で行動を停止したままのゴジラは消滅。しかしエミーがドラッド3匹を置いてきた事からゴジラに代わってドラッド3匹がキングギドラとなり92年に出現。福岡が早速破壊される。未来人は23世紀には経済大国になりすぎた日本を潰すためにキングギドラを生み出して操っていたのだった。政府に脅しをかけるウィルソンたちだったが、元々日本人であるエミーはここまでするとは聞いていなかったと激怒。寺沢の元へ出向いて寺沢たちに真実を伝える。

キングギドラに対抗するには転移させたゴジラザウルスにもう1回核をぶつけてゴジラ化すればいいんじゃね?という無茶な提案が浮上する中で、未希はもうゴジラは復活していると感じる。ゴジラを転移させた付近に核物質があったらしい。さらに44年当時の日本軍隊長で現在は帝洋グループ会長の新堂(土屋嘉男)はゴジラザウルスに恩義を感じており、今回も私たちを助けてくれるはずだと原子力船をゴジラの元へ送り込み、これを破壊したゴジラは80mから100mに巨大化して完全復活。主要人物たちが「前より大きくなっている」とか連呼するんだけどイマイチ20m大きくなった感じが実際のゴジラの姿からは分からない。

北海道へ上陸したゴジラの元へ、未来人はキングギドラを差し向ける。優位に戦いを進めてゴジラを何度も踏みつけるキングギドラだったが、その頃、エミーと寺沢とエミーの命令を効くようにプログラムを差し替えたM11は未来人のコンピューターを破壊。日本政府を支配するために送りつけるはずだったコンピューターという説明だったが、何故か船内全部が火花を吹き始める大クラッシュになってしまった。

これによりコントロールを失ったキングギドラは一気に劣勢に。それでも絡みついて締め上げるなど奮戦。ついにはゴジラに泡を吹かせるまでに至るが、ゴジラはピンチの時の必殺体内放射で振りほどき、熱線で中央の首を吹き飛ばす。敗走しようとしたキングギドラだったが撃ち落とされてTHE END。またエミーはウィルソンたちが乗っていた母船をゴジラの眼前へ容赦なく転送。これにより未来人はエミー以外全滅した。

ゴジラが再び東京へ向かっている事が判明し、エミーは未来でキングギドラを回収して改造して再び戻ってくると約束。東京が破壊される中で、メカキングギドラが襲来。しかし何故か操縦しているのはエミーでM11は電子頭脳のみに。しかも操作はエミーでM11はアドバイザー。最初からあまり優位とは思えない劣勢な戦いとなり、一時はエミーも気絶。何とかゴジラをアンカーで固定して海中まで運ぶもメカキングギドラは破壊されてしまいゴジラと共に海中へ。エミーは無事に脱出して挨拶もせずに未来へ帰還。ゴジラは海中で目覚めてTHE END!

 

過去へ行って未来を変えるという大胆な設定で、だいぶ子供向けにシフト。勢いで見れるので面白いことは面白いが、設定にかなり矛盾が多いので細かく考えてはいけないストーリーとなっている。

まずゴジラ誕生を1954年に設定する必要が無いどころか、1954年に出現したゴジラをオキシジェンデストロイヤーで葬った事に関しては公式設定になっているVSシリーズでは今回のゴジラ誕生を同じ1954年に設定した事でややこしくなってしまった。何の説明もされていないが、54年の第1作で描かれたゴジラとは別のゴジラが同じ1954年にラゴス島で誕生していたが84年まで眠っていた、ということになるはずなんだけど…。

また過去を変えたものの歴史が改変されたのは「ゴジラが現在地から消滅した」事だけで、歴史が変わったはずなのにこのゴジラが存在していたという人々の記憶には影響していない。また昭和シリーズが無かったことになっているはずなのでキングギドラはこの世界には1度も登場していないはずなのに何で最初からキングギドラと認識しているのかなどツッコミどころも多い。

ただそれ含めても個人的にはそれなりに好きな作品だ。VSシリーズの中ではどうしても1番下になってしまうし、唯一のゴジラとキングギドラの単独決戦なので、キングギドラはもうちょっと強く描いてもいいんじゃないかという気はもちろんするんだけど。

また映画公開時はバブル崩壊直後だったようだが、制作時はまだバブル真っ只中だったらしく、23世紀の日本は超大国になっているなどという設定が盛り込まれている(ただしメカキングギドラを作るためにエミーが23世紀に1度戻った時は繁栄に溺れた挙句に怪獣に滅ぼされた極東の最貧国扱いされている)。バブル崩壊で数年後にはまるで想像できなくなり、現代においては失笑するしかない設定だ。また前作時もそうだったがとにかくコンピューターが古い。23世紀の科学も未来っぽく描いたつもりなんだろうけど、現在どころか90年代後半になった時点でもう何か古く思えてしまうようなレベル。それだけコンピューター関連の進化がすさまじかったと言える。こういった時代性も味があるといえばあるかも。身近じゃない兵器の描写なんかは今でもそんなに変わらないんだけど、身近なコンピューターの描写となるとこれはどうしようもないものがあるなぁ…。

 

主要人物のまとめ

エミー・カノー(中川安奈)
設定上は主人公。未来人の1人だが、穏健派らしく過激派のウィルソンらとは実は対立していた。ドラットを置いてきてキングギドラを生み出すきっかけを作った張本人だが、キングギドラを使って日本を支配しようとしたウィルソンらと本格的に対立し、現代人サイドに立つ。1度はM11にムリヤリ連れ戻されるが、M11の設定を改変して自分のいう事を聴くように書き換え、寺沢と共に破壊工作を行う。意外と容赦ない性格で、M11に連れ戻されそうになった時は暴言を吐きながらケリを入れまくったり、未来に逃げ帰ろうとしているウィルソンらを未来に帰すわけにはいかない!と言ってゴジラの元へ転送して1人残らず殺害した。その後、23世紀に戻ってメカキングギドラに乗って戻ってきて自ら操縦。M11にキングギドラを操作させればもっと善戦できたのではないかと思っても突っ込んではいけない。辛くも生き残るが何故か挨拶もせずにそのまま未来へ帰っていった。その際に寺沢の遠い子孫である事をつぶやいていた。

寺沢(豊原功補)
ノンフィクションライターで実質的な現代の主人公。ゴジラ誕生の秘密を取材した事から今回の件に巻き込まれ、タイムスリップも体験。中盤ではエミーと一緒に未来人への破壊工作を行う。終盤は観客要員となった。前作でスーパーX2を操作していた人物とは役者は同じだが別人。

三枝未希(小高恵美)
国立超科学研究センターのゴジラチーム所属。20歳になっていて、一気に出世して社会人になっている模様。前作と異なり、ゴジラを感知する以外に超能力を使う場面は無かったが、タイムスリップメンバーに選出され時間旅行を経験するという貴重な体験を。未希が選ばれたのはゴジラを感知できる事もあっただろうけど、タイムスリップにはルールがあり、同じ時代に同じ人間が存在できない(消滅してしまう)という制約があり、91年当時では47歳以上の人間は参加不可。政府の主要幹部たちはそれより高齢の老人ばかりでほとんど参加できないのもあった模様。エミーがドラットを置いてきた事から未来人の策略にも最初に気づいた。寺沢とエミーが破壊活動を行っている間は真崎と共に戦闘の観客・解説要員となり、ラストは寺沢も合流して戦闘の観察・解説要員となった。

真崎(佐々木勝彦)
古生物の教授。ゴジラ誕生の秘密を追っていた寺沢が協力を依頼した人物で、この縁で寺沢の著書に真崎の見解が大きく掲載されていた事からタイムスリップ要員に選ばれた。ゴジラザウルスと命名したのもこの人。中盤は未希と共に観察・解説要員となり、終盤でも一緒に参加していた。しかし元々が古生物の研究者なので、怪獣であるゴジラやキングギドラの生態について長々と説明させるわけにもいかず、中盤以降はほとんど空気。

M11
アメリカ人タイプのアンドロイド。超人的な能力を誇るが、高速移動したり、スケートするように移動するその描写は爆笑モノレベルで古い。未来人の手先だったので裏切ったエミーを連れ戻す敵となるが、1度連れ戻されたエミーがプログラムディスクを書き換えたので忠実なしもべに。メカキングギドラ登場時は何故かAIだけになっており、しかもメカキングギドラの操作権は持っていなかった。単なるエミーへのアドバイザーとなっており、お前が最初から操作してくれよと思っても言ってはいけない。それにしても何故こんな仕様になってしまったのか謎が残る。

新堂(土屋嘉男)
1944年のラゴス島では日本軍の隊長。戦後日本の経済復興をけん引した帝洋グループの会長。いち企業にも関わらず海外に原子力潜水艦を所有するほどの圧倒的な経済力を誇る。23世紀でも帝洋グループはさらに圧倒的な経済力を持っているらしい(ただし歴史改変後は日本が滅んだので帝洋グループもダメになったと思われる)。ゴジラザウルスに命を救われたと強い恩義を感じているが、表向きは自称恐竜博士として恐竜好きを公表しているだけだった。寺沢が取材に来た際も当初はしらばっくれていたが、寺沢がさらに踏み込んだ話をすると一転して情報提供をしてくれ、当時撮影した写真まで渡してくれた。なお新堂の登場と同時に最初にゴジラザウルスの目撃情報をくれた人(当時の日本軍で新堂の部下だった人)の出番は終了している。キングギドラが出現した際には、ゴジラを復活させるために原子力潜水艦を送り込む。しかし既にゴジラは復活しており、この原子力潜水艦で更なるパワーアップを果たした。ゴジラが新宿を襲撃した際にはあえて本社ビルに残り、窓越しに対面。あの時怪獣によって救われた命が怪獣によって奪われる事、もうあの時のゴジラザウルスではない事などを無言の中で感じ取り、ゴジラもまたしばし見つめた後に熱線を放った。

ウィルソン、グレンチコ
敵の未来人。ほぼ一緒に行動し、思想も同じ。日本を滅ぼすのが目的だった。エミーが裏切っても、しばらく泳がせるなど余裕ある態度を取っていたが、本格的にエミーに裏切られてあっさり窮地に。母船は自動で未来へ帰る設定になっていたので安心していたが、未来へワープするより前に容赦ないエミーにゴジラの眼前に転移させられ熱線で仲良くご臨終した。

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★★★★☆

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