ゴジラVSメカゴジラ

93年12月公開。記念すべきゴジラ通算20作目、そして40周年記念作品とされた。実際には1作目が1954年なので今作は40年目39周年で、翌1994年が40周年となる。よって次回作『VSスペースゴジラ』こそが40周年となるはずだが、この時はアメリカでゴジラ映画が制作されることになったので、VSシリーズは今作で終了する予定だったとされており、20作目とキリがいいので前倒ししたのではないかと思われる。

今作以降、ゴジラ対策を行うのは政府の関連機関組織や自衛隊ではなく、国連が作ったG対策センターが請け負うことになり、そこの軍事部隊としてGフォースが設置されたという設定になっている。この機関は国内外から有力な人材を集めている設定のため、外人のメンバーも多く、メカゴジラの開発者も外人、操縦者の1人も外人となっており、英語での会話(字幕)も増えている。

92年、ゴジラ被害の対策機関として国連によってG対策センター、および戦闘部隊のGフォースが設立された。まず戦闘機ガルーダが試作されるが、どうにもイマイチとされ封印。海底に沈んでいたメカキングギドラを引き上げて23世紀の技術を解析してメカゴジラを制作した。

2年後の94年、ベーリング海アドノア島で翼竜の卵の残骸と卵が発見され、国立生命科学研究所の古生物学者である大前博士(川津祐介)と助手の梓(佐野量子)らはラドンを目撃。ラドンにテントを吹っ飛ばされ逃げ惑う中でゴジラまで出現。ゴジラとラドンは戦いを始める。素早い動きとくちばしによる連続突きでラドンは一時的にゴジラを圧倒し、背後の岩山の生き埋めにする事に成功するが、油断して近づいたところゴジラが復活するというゴジラあるあるに引っかかり、飛びあがる前に踏みつけられてフルボッコにされた挙句に、熱線の直撃を喰らいまくって彼方へ吹っ飛ばされて敗北。

この隙に大前たちは卵ごと島をトンズラ。京都の研究所で卵の経過観察が行われる事に。その頃、ガルーダの開発スタッフだった青木(高嶋政宏)はGフォースへの移動を命じられメカゴジラのメンテナンス要員として訓練を受けていたが、大のプテラノドン好きだったので、卵の話を聞いて京都にある研究所まで飛んでいってしまう。いたずらで卵についていた原始コケを持ち帰った青木は梓に怒られるが、G対策センター職員になっていた三枝未希(小高恵美)と偶然食堂で隣り合った際にコケから何か感じると言われる。

『VSビオランテ』の頃に未希が在籍していた精神科学開発センターの後輩の子供たちの協力でコケからは微弱な音声が発生しており、これを音源化することに成功。これを京都の研究所で流したところ、別の部屋にいた卵が経過観察用の機械を全壊させ、やがてベビーゴジラが誕生。ラドンの卵だと思っていた一行は全然違うのが出てきて驚くが、1944年でゴジラザウルスを見た経験のある未希はこれはゴジラザウルスの子供だと気づく。ベビーは梓に異常に懐いていて母親のような役割と認識。梓が保護者みたいな感じになるが、その頃同族であるベビーを感知したゴジラが向かってくる。

早速メカゴジラが迎撃に出発。多彩な攻撃でゴジラを一時圧倒。特に喰らった熱線をエネルギーに変換して放射するプラズマグレネイドはゴジラをぶっ飛ばすほど強力だったが、ショックアンカーによる電流攻撃を行ったところ、体内放射で電流を逆流させられて故障してしまい、機能停止。棒立ち状態のままあっさり敗北してしまう。京都までやってきたゴジラは研究所を破壊するが、未希の発案でベビーが発している何かを遮断できそうな地下の部屋にこもった事でベビーを見失ったゴジラは退散する。

青木は研究所に来ていてメカゴジラ発進時にいなかったので駐車場係に左遷されてしまう。しかし駐車場から出ていこうとしていたメカゴジラの開発者にガルーダとメカゴジラの合体を直訴し、認められた事で開発室に復帰する世渡り上手さを見せる。Gフォースの司令官である麻生(中尾彬)はベビーゴジラを囮にしてゴジラをおびき寄せてメカゴジラと対戦させる「ゴジラおびき寄せ作戦」を自信満々に立案。外人がたくさんいるのにそんなダサいネーミングでいいのか…。

大前がベビーを研究した結果、腰の辺りに第二の心臓というべき部位がある事が判明。ゴジラは怪獣とはいえ基本は同じだろうからそこを破壊する攻撃作戦が立案された。その第二の心臓に狙いを定めるためには未希の超能力が必要として、麻生は未希にメカゴジラへの搭乗を指示。ベビーと出会った事でゴジラへ愛着が沸き始めていた未希は乗り気じゃなかったが仕方なく引き受ける羽目に。

また先日の精神科学開発センターの後輩の子供たちは先日の音楽をコーラス化。未希が連れてきてベビーの前でどう考えても子供の声じゃない本格的コーラスを披露するがベビーが一時狂暴化。ここに来てようやくこの歌に何かあるのでは…?と気づく未希。またこの歌は遠く離れたアドノア島でくたばっていたラドンにまで影響し、ラドンはファイアーラドンになって復活。人類が触れてはいけない領域に触れちゃったようなレベルの呪いの歌じゃねぇか…。

ラドン復活を知らないまま、ゴジラおびき寄せ作戦のためにベビー(と放っておけず同行した梓)を載せたコンテナは出発するが、移送ヘリは木端微塵にされ、コンテナはラドンに拉致されてしまう。そのまま千葉の幕張にラドンが着地したのでメカゴジラ及び青木が乗るガルーダも幕張へ向けて出発。ラドンは熱線まで吐けるようにパワーアップしており、メカゴジラだと動きが鈍いのでガルーダが先陣を切るがあっさりのされてしまいしばし修理タイムに。メカゴジラはやや苦戦し、片目を破壊されてしまうもののプラズマグレネイドを使ってラドンの胸元をぶち破って撃破。

そこにゴジラが登場。ラドンとの戦闘でのダメージもあり、メカゴジラは冷却が必要なのでプラズマグレネイドがしばらく使用不能に陥り、さらに熱線の撃ち合いによりあっさりオーバーヒートして機能停止してしまう。青木がガルーダの修理を完了し、メカゴジラと合体してスーパーメカゴジラとなると消えていた片目のランプも復活してパワーアップ。これで完全に優位に立ったメカゴジラは、ゴジラを圧倒。プラズマグレネイドも復活し、麻酔弾を使って動きが鈍くなった所でも近づいて反撃を喰らうというゴジラあるあるになる事も無く、念入りにビーム連発で弱らせる念の入り用。そしてついに第二の脳破壊のためのGクラッシャーの出番が。今まで搭乗していたものの空気だった未希がためらいながらも狙いを定めて第二の脳を破壊。いわゆる下半身不随にされたゴジラは完全に立ち上がれなくなってしまう。

安心した青木はとっととガルーダを脱出して梓の救助へ向かう。しかしコンテナから脱出したベビーが吠えるとラドンが最後の力で復活。メカゴジラに撃ち落とされるも風化してゴジラへパワーを分け与え、ゴジラは第二の脳も再生して完全復活。ゴジラのパワーアップぷりはハンパ無く、なんかもうゴジラ立ってるだけなのに、メカゴジラがモクモクと煙を上げ始める始末。これによりプラズマグレネイドは使用不能になり、パワーアップしたゴジラの赤い熱線の連発でメカゴジラは大爆発炎上。基本的に機械なのに紙で出来ていたのかというくらいに完全に大炎上し、機能停止を告げる自動音声も生存者ゼロなどと告げていたが、何故か乗組員は全員生還した。梓はベビーをゴジラの元へ送ろうとするが、ベビーは嫌がる。梓に頼まれた未希が例の悪魔の歌をテレパシーで送ると野生に目覚めたベビーはゴジラと共に去っていくのだった。

 

劇場で初めて見たゴジラ映画ということで思い出深いが当時小学3年生で、見るまではゴジラに興味が無かったので次の2作に比べると当時の思い出はやや薄め。それでもストーリーの大筋は記憶していたし、ラドンのパワーをもらったゴジラの熱線が青から赤に変わって圧倒的にパワーアップした描写は熱くて当時から好きだった。

個人的にメカモノはあまり好きではないんだけど、このメカゴジラはけっこう好きだ。メカゴジラにはこれまでもこれからも色々と欠陥があって今作でも弱さは露呈しているし、最後は完全に破壊されてしまったけど、歴代のメカゴジラの中で最も耐久性があってゴジラ相手に善戦(1度は完全に身動き不能にした)したのはやっぱりこのメカゴジラじゃないかと思う。一撃必中の攻撃ではなく、しっちゃかめっちゃかな大乱射でもなく、比較的何度も使えるプラズマグレネイドの威力はラドンは物凄い勢いで吹き飛ばすし、ゴジラでさえ吹っ飛ばすほどの威力というのは熱い。VSになってからは特に全怪獣がビームを撃つもゴジラにビームが効いたような描写はほとんど無く、スーパーX2の反射でさえそこまで効いている感じではなかった。それだけにこの威力は熱い。半身不随に追い込むようなGクラッシャー攻撃に至ってはもう完全に悪党の領域になっている気がするが、ここまでやろうとした作品も他に無いのでこれはこれでグッド。

今作では前作のような環境破壊のメッセージは無いが、ベビーと梓の交流を通じて未希が初めてゴジラを倒す事だけ考えていいのかと思い悩んだりと、怪獣には怪獣同士の同族意識があり、倒そうとするのは結局人間のエゴなのではないかとか、1つの生き物として愛情を感じさせるような内容になっている。これはメカゴジラが今までのような力押しではなく、弱点をひたすら突くというやり口がかなり徹底的で非情なこともあってより際立つ。昭和シリーズでは子供たちのヒーローとなっていったし、ミレニアムシリーズでもいかにしてゴジラを倒すかばかりだったので、あくまで人類の脅威でありながら同時に愛おしさも感じさせるVSシリーズの作風はやっぱり好きだなと思った。メカゴジラ乗組員隊長の佐々木(原田大二郎)が破壊されたメカゴジラから脱出した後に放った言葉「結局最後に勝負を決めたのは命、だったな」というのは改めて見て妙に印象に残った。

 

登場人物のまとめ

青木(高嶋政宏)
ガルーダの開発スタッフでロボット部門所属だったがGフォースへ異動命令が出てメカゴジラの搭乗員となる。しかし翼竜の卵発見(ラドンと同じ場所にあったので当初はゴジラザウルスだとは思われてなかった)の話を聞いてプテラノドン好きの血が騒ぎ、京都へ通いまくっている間にメカゴジラの出発命令が出てしまったのでメカゴジラに乗る事なく駐車場係に左遷。しかし得意の英語でメカゴジラ開発者に直接ガルーダとの合体案を進言し、当初のロボット部門へ復帰。ガルーダに乗る予定は無かったが、自分じゃなきゃダメだと言い、本来乗るはずだったというジョンソンなる外人を差し置いてガルーダへ搭乗。ラドンに1度撃墜されるが復活。ゴジラに追い詰められるメカゴジラと合体してゴジラを追いこんだ後は梓を助けるために脱出。地上で戦いを見守った。『VSデストロイア』では顔が同じで性格が真逆の人物が登場するがそれは青木ではなくかつて高嶋政伸が演じた黒木である。政宏が代役で演じているためややこしくなった。

梓(佐野量子)
国立生命科学研究所の博士の助手。何故か卵の頃からベビーゴジラに気に入られ生まれてからは完全に母親のような存在に。ベビーに愛着が沸きすぎて「ゴジラおびき寄せ作戦」の際にはコンテナ内に同行。ラドンに襲撃されて運ばれるなどかなり大変な目に遭うが無傷で生還。ベビーの保護者という重要な役どころだったが今作以降では登場しない。

三枝未希(小高恵美)
G対策センターの職員になっている。青木が持っていた卵についていたコケから何かを感じ、『VSビオランテ』で所属していた精神科学開発センターへ出向いて、コケから音楽データを作った。それが呪いの音楽だと知らずにテープを流したり、コーラス化した音源を子供たちに歌わせたりしていたが、これによりベビーが孵化したり、狂暴化したり、くたばっていたラドンが復活したりと災厄をもたらした。今までゴジラを倒すことが貢献だと思っていたが、ベビーと接してそれでいいのか?と考えるようになったと梓や青木に語り、メカゴジラ搭乗の任務の際も戸惑っていた。Gクラッシャーの時も1度は辞めようとしたが叱責されて仕方なく決行。ラストでは例の呪いの歌を使ってベビーを野生に戻した。「さようならベビー、さようならゴジラ」という最後の台詞は当初はこれでVSシリーズが終わる予定だった事を示唆しているかのようで感慨深い。また年上の偉いおじさんたちに囲まれている事が多かったのでどうしても笑顔を見せる事がほとんど無かった前作までと違って、今回は青木に声をかけた最初のシーンや、研究所で後輩と接する時など、次回作以降でもほとんど無い同世代や後輩と接する場面があるため今まで見せなかった明るい一面も見ることができる。

大前博士(川津祐介)
国立生命科学研究所所属の今回の博士。ベビーを研究した事から第二の脳の存在を解明するなど活躍。ベビーを作戦に利用することに関してはドライだったが、助手の梓の事は心配していたらしく、ラドンやメカゴジラがバトルを繰り広げる中で救助の人たちと一緒に真っ先に現場へ駆けつけた。

佐々木(原田大二郎)
メカゴジラのメインパイロット。青木の事を「恐竜坊や」と呼ぶ。非常に厳しい上官タイプ。その腕は確かなようで最後まで毅然と戦い続けたが、赤い熱線で敗色濃厚になる際には「もう誰もヤツを止められん」と戦局を判断。「結局最後に勝負を決めたのは命だったな」と分析した。

麻生(中尾彬)
Gフォースの最高司令官。今作より『VSデストロイア』まで3作連続でGフォーストップとして指揮を執る。Gフォースの作戦が最終的に毎回失敗してしまうためなのか回を追うごとに元気が無くなっていくので、3作の中では今作が最も威厳があり、ベビーの利用や未希が第二の脳破壊の任務を嫌がっても強い口調でやれと命じている。その一方で外人もいる部隊で、メカゴジラの技の名前は全部横文字にも関わらず、作戦名には100%日本語の「ゴジラおびき寄せ作戦」なるまんまなダサいネーミングをつける一面も。副官的な存在の兵藤(上田耕一)も登場しているが、この人の連続登場は次回作まで。

未希の後輩(今村恵子、大沢さやか)
未希が精神科学開発センターへ出向いた1シーンで未希を慕う後輩として登場した2人組。コスモスにそっくりでコスモスのように同時に喋る。役者が前作でコスモスを演じた2人なのでシャレで登場させたと思われるが、2人は『VSスペースゴジラ』ではコスモス役で再登場、大沢さやかは『VSデストロイア』では未希の後輩の超能力者として出演するので非常にややこしくなってしまった。

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★★★★☆

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