ゴジラVSモスラ
92年12月公開。VSシリーズ最大の観客動員数を記録した作品。ゴジラ、モスラの他に新怪獣のバトラが出現する。昭和シリーズのモスラとは設定の繋がりは無いが、コスモスを取り戻しに幼虫モスラが東京へやってきてコスモスを目指して一直線に進行するため破壊する気はないけど結果的に東京ボッコボコなどオマージュと思われる展開になっている(繭を張るのは昭和『モスラ』では東京タワー、今作では国会議事堂だが原作では昭和『モスラ』も国会議事堂だった模様)。VSシリーズ全出演の三枝未希(小高恵美)以外にも前作で内閣安全保障室の室長だった土橋竜三(小林昭二)が続投している。ただし今作ではゴジラ対策チームが国家環境計画局の中に設置されている設定になっているため未希や土橋は国家環境計画局へ出向しているような形になっている。また脇役の航空幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長らも前作と同じ人物になっている。『VSビオランテ』メインヒロインだった田中好子も出演しているが別人設定。コスモスを演じた今村恵子、大沢さやかは小高恵美に続く第3回東宝シンデレラのグランプリと特別賞受賞者。
93年、地球に巨大隕石が衝突し、この影響で前作時から海中で動きを停止していたゴジラが復活。またインファント島(今作では昭和シリーズでおなじみだったドンドコ原住民はいなくて無人島)は異常気象と島を所有している丸友観光の開発(環境破壊)により巨大な卵が地表に露出した。
タイでトレジャーハント(というか遺跡の財宝泥棒)をしていた藤戸拓也(別所哲也)は遺跡内で財宝を見つけた直後に遺跡崩壊トラップが作動し窮地に陥りながらも脱出するが現地警察に逮捕されてしまう。元妻の雅子(小林聡美)、土橋(小林昭二)に免罪と引き換えにインファント島で発見された卵の調査を依頼された拓也は1度は断るが(どうせすぐ釈放なのに受ける理由が無いと考えていた)、去り際に雅子からこの国は財宝泥棒は刑が重いから15年はかかるんじゃない?と捨て台詞を聴いて慌てて態度を一変。
何故か専門家抜きで拓也、雅子、丸友観光の秘書である安東(村田雄浩)の3人で島をサバイバルすることに。ピンチを乗り越えながら卵の元へたどり着いた3人の前にコスモス(今村恵子、大沢さやか)が登場。これはモスラの卵だという。コスモスの祖先はかつて古代文明を築いたが天候をも支配する装置を作り上げたことで地球の怒りを買い、バトラが出現。破壊のみを求めるバトラは、コスモスの守護神であるモスラとの戦いで封印されたが古代文明は滅亡したという。今再び地球環境が脅かされた事でまだ出てくるはずのなかったモスラの卵が出現したならバトラも復活しているはずだと告げる。案の定バトラは復活していて名古屋を破壊。
丸友観光社長の命令で卵は日本に持ち帰る事になるが、輸送船をゴジラが襲撃。モスラは孵化するもなすすべがなく、さらにはバトラまでやってきた。バトラはモスラを一撃で吹き飛ばすとそのままゴジラへもビーム攻撃。ゴジラの怒りを買い、ゴジラVSバトラの激しい戦いはそのまま海中へなだれ込む。2体の激しいバトルで海底火山が噴火し、2体は飲み込まれて消えてしまう。輸送船はかろうじて逃げ延び、ゴジラバトラ両者からスルーされたモスラは島へと帰っていった。
丸友観光社長はコスモスを企業イメージキャラに起用しようと画策。コスモスは昭和シリーズでおなじみのあの歌を新アレンジのメドレーで披露しながら(「マハラ・モスラ」と「モスラの唄」)モスラを呼ぶ。いつの間にか拓也が丸友観光からコスモスを奪い返しており、海外企業へ売り飛ばそうとしていたが未希の超能力で発見され、雅子と娘のみどり(米澤史織)に説得されて思いとどまる。東京を破壊しながらやってきたモスラはコスモスや拓也たちがいるホテルまで容赦なく破壊し始め、拓也がとっさにかばわなければコスモスもがれきの下敷きになるところだったが、コスモスが姿を見せたのでおとなしくなる。一安心する一行だったが相変わらず移動すればあちこち破壊してしまうので自衛隊が砲撃を開始。一通り砲撃を喰らったモスラはそのまま国会議事堂で繭へ。
その頃、フィリピン沖からマグマを通って富士山麓辺りまで移動していたゴジラが出現。モスラは成虫になり、同じく生きて海上を移動中だったバトラはモスラと異なり一瞬で成虫へ変身。横浜でモスラとバトルが先に遭遇し、戦闘が始まるが、何故かバトラが一方的にビーム攻撃するばかりで戦う気が無いモスラ。逃げ回るばかりであっさり撃墜されてしまう。
やがてゴジラが到着し、バトラが迎え撃つ。ビーム攻撃を連発しながら背後のビルを倒壊させてゴジラを下敷きにするなど善戦したが、反撃を喰らうとあっさり墜落。幼虫の時はかなり長時間の間、撃ち合いしてても余裕だったのに成虫になって防御力が下がったのだろうか…。モスラが復活してバトラへパワーを分け与え協力を依頼(たぶん)。モスラは鱗粉でゴジラの熱線を乱反射させるというコスモス曰く「最後の武器」で攻撃。昭和モスラとミレニアムモスラはこの「最後の武器」を使うと文字通り力尽きるのがお約束だが、このモスラは単に最大必殺というだけで過剰に力を失っている様子はない。ゴジラは困った時の必殺体内放射を駆使して何とか乗り切るが、吹っ飛ばされたモスラをバトラが助け、本格的な協力体制に。連続でのビーム攻撃がさほど効果が無かったので、モスラが鱗粉反射でゴジラの熱線を乱反射で封じ、さらにバトラが撃ったビームも乱反射させて当てるという究極の連携技を使用。これによりついにゴジラをノックアウトすることに成功する。話し合ったモスラとバトルはゴジラを空輸しようとするが、ゴジラが復活し、ゴジラの頭側から持ち上げていたバトラが噛みつかれた上に熱線を喰らってしまう。致命傷を追いながらも空輸を開始したバトラとモスラだが、相次ぐゴジラの攻撃でバトラが絶命。ゴジラとバトラが海中に沈み、モスラが封印を施した事で(しかし実際にはほとんど効果が無かったのか、次回作ではこれまでのような再始動のきっかけとなる外的要因もなくゴジラが活動している)ゴジラの脅威はひとまず去った。
実はバトラの本当の使命は20世紀末に地球を滅ぼすレベルの隕石が衝突するのを止める事だった(本来その時目覚めるはずだった)。残ったモスラはバトラの使命を受け継いで主要キャラが見守る中でコスモスと共に宇宙へ旅立っていくのだった。
劇場で初めて見たのは次回作だがその直前にTV放映されたものを録画して見たので小学3年生当時(たぶん公開の1年後くらい?)に初めて見た記憶がある。当時ビデオ録画した関係でゴジラ映画の中では1番見たのがこの作品じゃないかと思う。そのせいばかりでもないが、今作は非常に思い出深い。かなりファミリー向けを意識した内容で、前半の怪獣が出てこないインファント島探索の部分は冒険モノとしての面白さがあって飽きなかったし、大人だけでなくみどり(米澤史織)という当時の自分とほぼ同年代の子供が出てくるところも親近感が沸いた理由だったんだと思う。今見返すと、子役のレベルも上がってるのでどうにも棒読みな感じは否めないけど。また別所哲也、小林聡美が2人とも20年以上経って中年を過ぎた現在でも知名度が高いままに活躍しているというのもゴジラ作品の主役を演じた役者の中ではわりと珍しいかも。
改めて昭和シリーズも見た後で思うのは、昭和シリーズの伝統を残しながらも新しいモスラ像を作り上げているところが実にすばらしい。昭和世代からするとビームを撃つモスラとか、何かバトラとか出てきただけで拒絶反応なのかもしれないけど、今作があったから平成モスラ3部作でのモスラの進化も非常に楽しめる土壌になった。今作はさらに当時盛り上がっていた環境問題への警鐘、そして人間サイドの主役にも家族を置くことでファミリー感も持たせるなどどれもくどくないけどそれが自然に入ってくる。平成シリーズの中で今作が最もヒットしたというのは納得だし、それだけの傑作だったと思う。劇場で見た次からの3作の方がやはり大スクリーンで見た"迫力"の記憶という点で強いんだけど、個人的にはゴジラ映画の中では2番目に好きな作品。
あと今作の特徴なのが、教授とか学者みたいな人がいないので基本的に人間サイドは見ているだけで戦闘中はたまに出てきて驚いたとか、一言怪獣の名前をつぶやくとか程度で、「ゴジラが〜している!」とか「モスラは〜しているんだわ」とか観客向けの状況説明をほとんどしない。例えばモスラとバトルがなんか会議しているっぽいシーンは2度出てくる。他の映画だとご丁寧にコスモスが「モスラとバトルがこれこれこういう話をしています」とかいちいち通訳して説明してくれるんだけど今作でのコスモスはその説明をしてくれない。見れば何となく、1度目は共闘を願い出ているんだろうなとか分かる事だし、2度目はバトラが本来の自分の使命をモスラに託したというのはラストで明らかになる事でああそうだったのかとなるのでその時点で分からなくても問題ない、という事なので説明不足には感じなかった。
登場人物のまとめ
藤戸拓也(別所哲也)
設定では元々は大学で考古学教室助手だったようだが現在はトレジャーハンターとして世界各国で遺跡泥棒をしている。タイでハント中に遺跡崩壊トラップにハマり、かろうじて生き延びるも逮捕。元妻が関係者だった事もあってかインファント島調査に出向くことを条件に無罪放免となる。モスラの卵を輸送中にゴジラに襲われた際は、利益よりも即座にモスラの卵を切り離して全員の命を優先させることを選択し、止めに入ってきた安東をぶっ飛ばした。しかし帰国後は娘に会わす顔が無いと姿を消し、いつの間にかコスモスを奪還(コスモスは社長室にいたはずなのにセキュリティどうなってるんだ…)。海外へ売り飛ばし、その資金で妻と娘とやり直そうとしていたが、2人に説得されて改心。その後はモスラを親子3人で見守り、さらにゴジラVSモスラ・バトラもコスモスと共に間近で見守った。雅子(小林聡美)
国家環境計画局の職員…かと思いきや所属は大学の環境情報センター職員で出向している扱いらしい。拓也が元夫だったためか、インファント島行きの話を持っていくだけでなく、冒険経験も無いのにインファント島へ同行。この際にヨリを戻しかけるが、帰国後は娘のみどり(米澤史織)と共に拓也(というかコスモス)を探し当て、売り飛ばそうとしていた拓也に失望するも改心した拓也と最後まで行動を共にして、最後は完全にヨリを戻していた。なおみどりを演じた米澤史織はこの数年後に「学校の怪談」の1と3にも出演しているので当時はわりとなじみ深い子役の1人だった。安東(村田雄浩)
丸友観光の秘書。インファント島の所有権が丸友観光だった事からインファント島調査へ同行。社長命令が絶対で、持ってこいと言われればモスラの卵輸送を手配し、ゴジラに襲撃されて船自体が危なくなっても卵を切り離そうとした拓也に襲い掛かって命令を守ろうとし、失敗すると大絶望し、代わりにコスモスを社長に献上するなど、いかにもな社畜サラリーマンキャラ。社長の方針(どんな方針なんだ…)でサバイバル訓練は受けているらしい。帰国後は出番が激減するが、状況が悪化していくにつれて社長に意見するようになり、最終的には社長を見限り「この会社はどうせ潰されます!地球の生命を粗末に扱い危険にさらした罪で!」と捨て台詞を吐いて会社を飛び出す。帰国後には拓也や雅子との合流は無かったがモスラを見送るラストシーンには参列した。なお見捨てられた社長(大竹まこと)はこの時点で側近も誰も残っておらず頭を抱えて崩れ落ちたまま出番終了となった。三枝未希(小高恵美)
今作では国家環境計画局の中にゴジラ対策チームが設置されているのでそこに所属している。今回はVSシリーズの中で最も出番が少なく、対策室のモニターで状況を見ていてたまにアップになって何か一言、というシーンばかり。中盤では雅子、みどりと共にコスモスを探すために超能力を使用して探し当てるのが唯一の活躍。モスラが繭になるまでは親子3人と共に現場で見届けていたが、ラストバトルを直接見に行った親子とは別れて、再び対策室に戻って観戦していた。土橋竜三(小林昭二)
前作では内閣の所属だったが今作では未希と同様に国家環境計画局の中にゴジラ対策チームが設置されているので所属が変わっており、国家環境計画局長の南野(宝田明)の下のポジションみたいになっている。今作では解説役も驚き役もいなくて基本的に他の全員が冷静で淡々としているためか、何故か前作での落ち着きから一転して驚いたり、うろたえまくったり、動揺しまくったりと出てくるたびに何らかのリアクションを起こすため妙にインパクトに残る役どころになっている。ていうかここまでキャラ変するなら別人設定で良かったんじゃないか。深沢(篠田三郎)
今作で唯一の博士系キャラクター。しかし雅子の上司にして雅子の姉(田中好子)の夫でもある。環境情報センター主任で地質学者でもあるらしいがあまり解説役としても目立った出番がない。主要人物の中では唯一ゴジラが登場する前に噴火を起こしていた富士山麓(富士山のど真ん中が噴火したわけではなく山麓が噴火したような描写)に出向いており、逃げ遅れた親子を発見して救助した。真由美(田中好子)
雅子の姉で深沢の夫。インファント島で雅子が探検中にみどりを預かっていたらしく、帰国後の空港で登場。これしか出番のないハイパーチョイ役にも関わらず、主要関係者が参列したラストのモスラ見送りにも(関係者枠で?)ちゃっかり参列していた。田中好子が『VSビオランテ』で演じたのとは別人の設定だが、別に同じ役でもさほど設定に問題が無かった気がする(別の男と結婚した事になってしまうけど)。成長した未希との共演にもできたわけだし。★★★★★