重力と呼吸
No | タイトル | 作詞 | 作曲 | 備考 |
1 | Your Song | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
2 | 海にて、心は裸になりたがる | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
3 | SINGLES | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
4 | here comes my love | 桜井和寿 | 桜井和寿 | 7th配信シングル 初CD化 |
5 | 箱庭 | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
6 | addiction | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
7 | day by day(愛犬クルの物語) | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
8 | 秋がくれた切符 | 桜井和寿 | 桜井和寿 | |
9 | himawari | 桜井和寿 | 桜井和寿 | 37thシングル 最高1位 売上16.3万枚 album version |
10 | 皮膚呼吸 | 桜井和寿 | 桜井和寿 |
Brass Arranged by 山本拓夫&桜井和寿(5)
Orchestration Arranged by 桜井和寿&世武裕子(4,8)
Orchestration Arranged by 桜井和寿&弦一徹(9)
リリースデータ
2018年10月3日 | 初登場1位 | 売上44.5万枚 | Produced by Mr.Children | TOY'S FACTORY |
メンバー
Vocal&Guitar | 桜井和寿 |
Guitar | 田原健一 |
Bass | 中川敬輔 |
Drums | 鈴木英哉 |
Mr.Children19thアルバム。通算カウントにはベスト4作以外のライブ盤とB面集が含まれてるためオリジナルアルバムとしては17作目。前作から3年4ヶ月ぶり。2016年は新作リリースが無く、2017年以降リリースされていたシングル2作、配信1曲のうち2曲を収録。「ヒカリノアトリエ」は未収録となった。前年のヒカリノアトリエツアーで披露されていた「お伽話」「こころ」も未収録(ライブ映像作品で映像化はされている)。表記は無いが「himawari」はボーカルや演奏の響きなどの細部が異なっていて再録音、再ミックスされている模様。前作から一転して今作はCDのみ1種発売となり、DVD付での発売も無い。パッケージ自体に初回盤は無いが、スリーブケース&デジパックの特殊ケース仕様、早期購入特典としてジャケットと同じデザインのステッカーが封入されている。一方で封入されているプレイパスコードで曲だけでなく、「here comes my love」「SINGLES」「Your Song」「Your Song(Original Story」の4作のMVもDL/視聴できるようになっている(プレイパスの期限は2019年4月30日)。
「ヒカリノアトリエ」はCDは一応Mr.Children名義だったが作品内での表記上は"Perfomed by ヒカリノアトリエ"となっており(通常はこの部分がMr.Children)、ヒカリノアトリエとは曲名であると同時にメンバー4人とサポートメンバー含めてのグループ名でもあった。「お伽話」「こころ」もこの形態でのツアーで披露された曲だったが、ヒカリノアトリエとしての活動はツアーで一段落となり、今作制作へ向けては全く違うロックバンドとしての側面を打ち出したものとなっていったようだ。ヒカリノアトリエ名義の楽曲が今作に未収録になったのはそういうことだと思われる。
サポートメンバーにも変更があり、前作制作の途中で離れた小林武史は初めて完全不参加。Mr.Childrenのアルバムに小林武史の名前が一切表記されないのは今作が初となる。また小林武史が離れた後にツアーのサポートに復帰していたキーボードのSunnyは「himawari」のみの参加。「here comes my love」のピアノは森俊之で、それ以外の8曲では今作には未収録だが37thC/W「忙しい僕ら」の編曲を担当した世武裕子がキーボードを担当。また小林武史が離れた後も残留して桜井と共にストリングスをアレンジ手掛けていた四家卯大は今作には不参加で世武裕子、弦一徹がストリングス(Orchestration)アレンジを担当している。弦一徹の参加は『BOLERO』以来となる。
全体に力強いバンドサウンドが印象的なアルバム。ピアノキーボードは全曲で使われているし、ストリングスも鳴るときは鳴っているんだけど、小林武史、そして小林武史の御用達ストリングスアレンジャーの四家卯大、どんどんバンドを押しのけてサウンドの要を担っていたこの両者が完全に離れたというのは改めてかなり大きい。一時期はピアノまみれとまで言われたピアノやストリングスは決して前面に出すぎるような事は無い。あくまで主役は4人のメンバーになっていて、バックバンド化しがちだった桜井以外のメンバー3人は前作以上に躍動しているように聞こえる。ロックバンドとしてのMr.Childrenが全面展開するアルバムとしては今作は最高だ。
一方で歌詞やメロディーに関しては一定以上にはいいんだけど、特に歌詞に関してはインタビューで語っていたようにどうにも淡白な印象で刺さってくるものがない。どれだけ成功を収めてもどこか迷いを見せたり、そこを強く乗り越えていこうとしたり、時にはちょいと社会風刺みたいな事をしたりと、なんだかんだ歌詞のメッセージ性はミスチルのミスチルらしさを形成する重要な役割の1つだったと思うんだけどインタビューでは歌詞に関して"リスナーの想像力をあまり信用していないっていうか、もうきっとここまでのことを深く掘り下げて書いても理解しないだろうな、ただ通り過ぎていかれるだろうなっていうのがあるんです。"と発言。さらには今のリスナーは中島みゆきの歌への免疫力が低いだのリスナーのレベルを勝手に低く想定してしまい、それを理由にしているのは率直にそりゃないだろと思う。一体リスナーのどんな反応を感じてこんな感触を抱くに至ったのだろうか。若い頃にライブとかでもアイドル的な黄色い声援ばかり届いていてそう思うとかなら分かるけど今になってこういう発言が出てくるのはかなり深刻なような…。
そんなわけで10曲と絞り込み、1曲1曲バンドとしての力強さはあるんだけど、その1曲1曲が今までを越えていくような好きな曲かというとそうでもなく、けっこうあっさり流れていってしまう。何度か聞いていて(感想が発売から2ヶ月も遅れたのは数回じゃさっぱり印象に残らずサウンド面以外で感想が浮かばなかったため)、前半3曲はそこそこいいなと残ってきたが中盤以降はあまり印象に残ってこない。ヒカリノアトリエ展開を伸ばすのではなく、ツアーで区切って、Mr.Childrenのバンドとしての側面を強く打ち出したアルバム制作へ方針を転換したのは非常に良かったと思うんだけど、ある意味でその一点特化なアルバムになったなという感じ。これでまた少し違った新作が比較的近いうちに聞けるのであればいいけど、次もまた数年単位で開くのだとすれば、そして今作自体も3年4ヵ月ぶりだという事を思うと物足りない面もまたそれなりにあるアルバムだと思う。
印象度★★★★☆
2018.12.1更新