2024年7月の配信シングル(後編)

夏色 [再録]/ゆず

2024年7月17日
ドラマ『南くんが恋人!?』挿入歌。主題歌には新曲「伏線回収」が起用されていたが、”「令和の時代やドラマにマッチするように、“夏色”を録り直してみたい」とアイディアが生まれ、今回の“26年越し”の再録が決定”とされている。”原曲の持つノスタルジックさや瑞々しさを残しながら、より耳馴染みするサウンドやストリングス構成でレコーディングを行ない、BPM(テンポを表す単位)も変更”となっていてトオミヨウが編曲。なお”弾き語りアレンジやカバーなどの企画を除き、ゆずが再録楽曲をリリースするのは今回がキャリアを通じて初”としている。アルバムバージョンを除いても『ゆずスマイル』に収録された「またあえる日まで」とか「栄光の架橋 [Symphonic Orchestra Version]」って再録楽曲じゃなかったのか…?

同時配信の「伏線回収」は先行配信だが、今作はアルバムには未収録

近年TVやライブで披露する「夏色」はかなり早いテンポで演奏しているため、久々にCD音源を聞くとなんだかもっさり聞こえてしまうが、今作ではやや早くなって勢いが増した。オケは当時よりもゴージャスになった感じだがストリングスまで入れて優雅な雰囲気を醸し出したのは蛇足だったように思う。別に無くても困らんだろこんな優雅なライン。それでもこれみよがしにストリングスのラインが全体を覆いつくすような使い方はしていないのでそこまで気にはならないし、近年の新曲のようなデジタル感も無いので総じて良い再録音という印象。
★★★★☆

伏線回収/ゆず

2024年7月17日
アルバムからの先行配信。ドラマ『南くんが恋人!?』主題歌。北川曲、編曲は須藤優。

“軽快なギターサウンドとキャッチーなメロディが印象的なナンバーで、ゆずの代表曲『夏色』を“平成の夏ソング”と形容するなら、『伏線回収』は“令和のサマーチューン””と公式に紹介しているが、その「夏色」をリメイクで引っ張ってきてしまったので配信時点で話題性で出遅れるという憂い目に…。ていうか“夏ソング”に対する形容がなんで”サマーチューン”って英語になってしまっているんだ。

最近のゆずっぽいハイテンションで元気なデジタル風味のポップナンバー。そろそろ年相応にもう少し落ち着いてもいいようには思うが、全くそんな様子はない超絶アンチエイジングっぷりは天晴な領域。ただ20周年ベスト以降、そこそこ好印象ながらほぼ聞き返す事が無くなってしまいじわじわゆずについていけなくなったのは対象年齢を越えてしまったのが理由だろうなとは思う。古いファンでもそういう人地味に多いのでは。ファンと一緒に年齢を重ねていく感じは皆無だし。
★★★☆☆

雨粒と花火/コブクロ

2024年7月19日
9月4日のアルバム『QUARTER CENTURY』から先行配信。久々にロックバンド感溢れるロックナンバー。どこかレトロな昭和歌謡っぽさも漂う。小渕の特盛癖はもうどうにもならないので優雅なストリングスは当たり前のように鳴り響くが、さすがに切り詰めるところは切り詰めようと相当意識して努力したものと思われ(自身のギターインストアルバムの時の発言からして相当我慢しないと盛り癖を抑えきれない事が伺える)、見事な4分4秒。コブクロとしては革命的なまでに短くまとめられた。
★★★☆☆

いっそこの心臓の音が君に聞こえたら/SHISHAMO

2024年7月24日
4月のアルバム以来の新曲。序盤は薄めのキーボードとベースドラムメインで進行してギターはやや抑えめのポップロックナンバー。本格的にギターも入ってからはいつもの軽快なポップロックナンバー。安定の良曲。鉄人的新曲マラソンがまた始まって来年終盤に次のアルバム…となるのだろうか。
★★★☆☆

LISTEN TO THE MUSIC(DJ WILDPARTY 2024 Remix)/Shiggy Jr.

2024年7月24日
2014年7月16日発売の2ndミニアルバム『LISTEN TO THE MUSIC』収録曲のリミックス発売10周年記念だがピタリ10周年ではなく8日遅れでの配信となった。発売10周年当日に公式Xが何かある事を示唆し、2日前の22日に何らかの配信告知をしたため、再録バージョンや続編新曲などいずれにしてもメンバーによる新規制作音源かと思いきや、メンバー不参加リミキサーお任せのリミックスだったっていう…。

元々オリジナルも電子音メインでバンド感皆無の打ち込みナンバーでキャッチーなダンスミュージックのような曲だったので、リミックスになっても実はそんなに印象は変わらない。リミックスが別リミックスになっただけみたいな。むしろバンドメンバーで生演奏した方がよっほど別バージョンっぽくなったのではないかという勢い。キャッチーな曲ではあるし、それこそ00年代のエイベックスあたりに所属していたらシングルC/Wにこんな感じのリミックスが数バージョン入ってたんじゃないか。
★★★☆☆

舞台に立って/YOASOBI

2024年7月26日
2024年8月11日(英語版「On the Stage」)
NHKスポーツテーマ2024。要するにパリオリンピックのNHKテーマ曲で、オリンピックに合わせて公表、開会式に合わせて配信開始、閉会式に合わせて英語版「On the Stage」を配信。オリンピック以外の2024年のテーマ曲に全面的に使用するつもりなのか。例によってNHKのオリンピックテーマ曲をお願いしても引き受けてくれないので、「少年ジャンプ+」の漫画家3名によるタイザン5『はなれたふたり』、桐島由紀『パラレルレーン』、春野昼下『終わらないデュース』が7月26日から3日連続で「少年ジャンプ+」で公開されたが、これは漫画であり、漫画の原作では引き受けてくれないので、これらのマンガ作品をもとに江坂純が執筆した小説がこの曲の原作小説扱いとなっている。NHKオリンピックタイアップ書いてほしい→読切漫画を3つ用意させる→3つの漫画を小説化させる→条件クリア…と物凄い遠回りになっている。

『NHKスポーツテーマ 2024』として、「舞台に立って」という楽曲を書き下ろしさせていただきました。
私たちも、様々な場面でアスリートの皆さんが活躍される姿を見ながら、熱く思いを馳せたり感動したり、とても影響を受けてきたので、
このような機会をいただきとても光栄です。
この楽曲は、実際に試合に臨まれるアスリートの皆さんへのエールはもちろん、
大きな舞台に立つまでの葛藤、その瞬間の胸の高鳴りなど、アーティストとして活動する私たちにも共通するような想いも込めながら作りました。
アスリートの皆さんの後押しになれたらと思いますし、応援する皆さんにも寄り添える楽曲であれたら嬉しいです。

!?

YOASOBI名義でのコメントでは『NHKスポーツテーマ 2024』として書き下ろしたとハッキリ書いてしまい、ダメ押しのようにアスリート応援を込めて書いたとして“原作”には一切触れていない。さすがに原作小説を歌にしましたとか書くとマズいだろうし、建前というものがあるのだろうか。つまり”『NHKスポーツテーマ 2024』として、「少年ジャンプ+」の漫画家3名によるタイザン5『はなれたふたり』、桐島由紀『パラレルレーン』、春野昼下『終わらないデュース』の3作の漫画を基にして坂純が執筆した小説を原作にして「舞台に立って」という楽曲を書き下ろしさせていただきました。”なのを省略したと。

表面的には爽やかな良曲で、アスリート応援なアップテンポナンバーだが…正直なんか軽いなぁと思ってしまった。いやYOASOBIにしては電子音よりもバンド風の厚みのあるサウンドに仕上げていてかなり意識して厚みを出してきた感じはある。それに「栄光の架橋」以降は壮大・重厚なバラードが求められてきた中で、明確なアップテンポは2000年のZARDや1996年の大黒摩季以来になるので(2016年の安室奈美恵は途中でテンポアップ)、若者が流れを変えてくれたという1点は凄くいい事だと思うんだけど…。20年壮大な感じが続いていたので妙に軽く聞こえてしまうのは仕方ないのか…。

普通に関連番組で流れてくるのを聞いていた父が今回のは軽いな…とボソッとつぶやいていたので、今作が軽く聞こえてしまうというのは確かにある感覚のようにも思う。熱気が皆無で、なんか涼しげだし、ikuraのボカロめいた歌唱も重なって、アスリート気質皆無の人がそれっぽい応援歌を冷房の効いた部屋で指だけ動かして書きましたみたいな汗の見えなさは確実にある。小説を音楽にするというYOASOBIの大前提の設定上、実際のアスリートと接したり見学したりしてリアルなスポーツの世界を見て書いたのではなく、文字(小説)を曲にしているとなれば、そこに現実のアスリートはいないし、表面的になって当然ではあるんだけど…。いや普通にいい曲なんだけど、YOASOBIにオリンピックタイアップはミスマッチだったと思う。せめてeスポーツのテーマ曲とかさ…適材適所はあるでしょ。その点では英語版で歌詞を気にせずに聞いた方がスッキリ聞けるかもしれない。
★★★☆☆

会心ノ一撃/GLAY

2024年7月31日
アニメ『グレンダイザーU』OP。HISASHI曲。HISASHIらしいデジタルサイバー感溢れるデジロックナンバー。なんかドラムもやたら機械的な響きだけどこれは加工しているのか、打ち込みなのか…。勢いはあるんだけどこれはう~ん…でもHISASHI曲ならしょうがないかという気もする。他の3人までこういう音になってしまうとちょっと無いなと思ってしまうんだけど(去年はJIROまでデジタル路線に走ってしまいさすがに厳しいなと思った)、HISASHIは元々そういう趣味の人だし…。
★★★☆☆

strawberry/BUMP OF CHICKEN

2024年7月31日
ドラマ『西園寺さんは家事をしない』主題歌。9月のアルバムを前にまた既出曲が増…。

近年のBUMPっぽいこざっぱりしたサビどこ系ナンバー。それでもここ最近の中ではまだサビの部分はみんなで演奏しているようなバンドっぽい方になるのかな。まあ既出曲からも予想通りのアルバムになりそう。勢いのある曲もロックバンド的なナンバーも聞けそうにない。
★★★☆☆

SPIN!/Galileo Galilei

2024年7月31日
9月25日に2枚同時リリース予定の『MANSTER』『MANTRAL』からの先行配信。どちらに収録されるのかは明かされていない。

ピッコピコな電子ポップナンバー。元々とっくにバンドっぽさは無くなっていて制作集団化していたが、ここまでデジタルに振り切るとは予想外だった。BBHFならなんでもありだったと思うけどわざわざGalileo Galileiの名前を復活させてここまで攻めてくるとは何考えているんだ。逆になんか面白くなってきたぞ…。

メンバーも既にどこかで語っているのを見たが、Galileo Galileiの名前で初期アニメヒット曲への懐かしさを求めて戻ってきたリスナーは一瞬でいなくなったのは確かだと思う。自覚してやっているわけだからGalileo Galileiの名前でかつての音楽性に回帰してリスナーを呼び戻そうというのではなく、本当にバンド名の使い分けは単なる気分の問題なんだろうな。通常こんなタイミングで過去のバンド名を復活させて使い分けるなら昔のバンド名では昔のロックバンド路線を、今のバンドでは攻めた制作集団路線を…と分かりやすく使い分けそうなものだが(というかそうしないと意味が無いしリスナーを混乱させるだけ)そんな気は最初から全くないわけで、そういうやり方についていける人だけが真のリスナーという。
★★★☆☆

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