Secret & Lies
No | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 備考 |
1 | Graduation | 三枝夕夏 | 中村由利 | 徳永暁人 | 再出荷版リミックス |
2 | It's for you | 三枝夕夏 | 川島だりあ | 池田大介 | 2ndシングル 最高20位 売上1.5万枚 |
3 | Secret & Lies | 三枝夕夏 | 五大ゆり | 徳永暁人 | 再出荷版リミックス |
4 | Tears Go By | 三枝夕夏 | 大野愛果 | 徳永暁人 | 3rdシングル 最高24位 売上1.2万枚 |
5 | Whenever I think of you | 三枝夕夏 | 徳永暁人 | 徳永暁人 | 1stシングル 最高41位 売上0.7万枚 初期版ボーカル再録音、再出荷版はシングルVer.に差し替え |
6 | Happy birthday to you | 三枝夕夏 | 輝門 | AKIRA | 再出荷版リミックス |
7 | Stay my dream | 三枝夕夏 | 松橋未樹 | 小澤正澄 | 再出荷版リミックス |
bonus track: | |||||
8 | Whenever I think of you(TV version) | 三枝夕夏 | 徳永暁人 | 徳永暁人 | アニメ『天使な小生意気』エンディングVer. |
リリースデータ
2003年2月5日 | 初登場20位 | 売上3.0万枚 | Produced by KANONJI | GIZA studio |
三枝夕夏 IN dbミニアルバム。2002年6月12日に「Whenever I think of you」でデビュー。ここまでの3シングルを収録。"GIZA studioが誇る7人のソングライターが三枝夕夏に贈る7編のせつない歌集"と帯に書かれており、7曲全て作曲家が異なる。デビューの少し前に情報が流れ始めた時はdb(デシベル)というユニット名のみで発表され、三枝夕夏と徳永暁人を含む3人組とされていて、「Whenever I think of you」がOAされていたアニメ『天使な小生意気』でも4月の放送開始からしばらくはdb名義で表記されていたという。CD発売前にメンバー2人は制作に専念するとして三枝夕夏 IN dbというソロユニット形式に変更された。今作のクレジットではメンバー表記は当然無く、演奏表記も無く、各楽曲のコーラス担当者のみ表記されている。徳永暁人は以後も作編曲での関与はあったが翌2003年にdbを3人の固定男性バンドメンバーとして固めた際にも結局メンバーには加わらず2年後の2004年にdoaとして再デビュー(1998年にXLとして1度デビュー)すると楽曲提供する事もほとんど無くなった。
この時点での知名度はあまり高くなかったが実はオリジナルアルバムでは今作が最高売上、1stベストに続く2番ヒット作となっている。この後からトップ級の猛プッシュをされていたがベスト盤以外は出すたびに売上を落としていた。
なお1stC/W「Change the life」(作曲:三好誠)、2ndC/W「Magic Summer」(作曲:徳永暁人)は未収録となったが(3rdC/Wはリミックスのみ)、徳永曲は「Whenever I thnk of you」で採用されているので、今作までに参加した作曲家8人のうち三好誠だけ外されて"GIZA studioが誇る7人のソングライター"ってちょっとあんまりじゃないか…。
発売後すぐに廃盤となり、その後再販されたが再出荷された際にボーカル再録音やミックス変更などがこっそり施された。初期版と再出荷版に見た目の違いは全くない。品番も同じ。2022年のサブスク解禁で配信(DL/ST)されたのは再出荷版。初期版は中古で当たりが出るまで探してくるしか入手方法はない。ただ今作のランクインは発売時の300位以内6週ランクインのみであるため、中古で出回っているのは大半が初期版と思われる。中古でいきなり再出荷版を当てたのは逆に凄いレアだったのかもしれない。
「Whenever I think of you」はボーカル再録音を行っている事を今作発売当時のインタビューで語っていたようで実際に随所で歌い方が異なる。ただ再出荷版では他のベスト盤に収録されている音源と同じ=シングルバージョンに戻されたようだ。歌い方の余韻の残し方等細かい部分に違いがあるが、取っ掛かりポイントは1番Aメロの32秒過ぎ"途切れる会話から"という低音になる部分でシングル(Spotify確認)、ベスト2作、再出荷版ではささやくように抑えめに歌い上げているが、今作の初期版のみ抑えずに声を張り気味に歌っている。
再出荷版では前述の「Whenever I think of you」をシングルバージョンに差し替えた以外にアルバム曲である4曲に主にミックス変更と恐らくボーカルリテイクが行われ、音色や音のバランス(打ち込みリズムの強弱など)が変化している。
「Graduation」→初期版の方がリバーブがかったふわふわした感じのボーカルに処理されている。また2番の"コマ落としの日々続いてゆく"の"続いてゆく"の歌い回しが初期版と再出荷版で異なっている。再出荷版の音源は『三枝夕夏 IN d-best〜Smile&Tears〜』にも収録されている。この事から再出荷は『三枝夕夏 IN d-best〜Smile&Tears〜』よりも前、3rdアルバム頃の時期までに行われていたのではないか。声の感じ的に発売後すぐにやり直したわけではなさそう。
「Secret & Lies」→再出荷版の方がボーカルがクリア、リズムがやや強め。
「Happy birthday to you」→初期版はボーカルとシンセが同時に始まるが、再出荷版はピコピコしたシンセが数音先に鳴ってからボーカルが入る(曲の総尺は全く同じ)。
「Stay my dream」→初期版の方が明らかに演奏の音が大きく、再出荷版は抑えた印象。
ざっと判断できたのはこんな感じだが、基本的にはさらっと流し聞きするとほとんど同じではあるが、意識して続けて聞けば4曲とも何かが違う事は一聴して分かるくらいには変更されている。その中でも「Graduation」の"続いてゆく"の歌い回し、「Happy birthday to you」ド頭が歌始まりか先にシンセ数音が鳴るかの2つが特に一瞬で判断しやすいポイント。「Happy birthday to you」はド頭に違いがあるのでこの曲を再生するのが1番手っ取り早い判定ポイントだろうか。しかし90年代のビーイング全盛期ならまだしもこの時期に初期のZARDみたいな発売後のこっそり作り直しをやっていたなんて異例だ…。
作風としては今作のみソロユニット形式なのでバンドっぽくする必要もなく、軽めのR&Bブームからの流れを汲んだ当時のGIZAらしい打ち込みを生かしたポップス。GIZAレーベルの倉木麻衣、GARNET CROW、菅崎茜、4th以降の小松未歩辺りを好んで聴いていたなら今作も自然と好印象になるのではないかというような当時のGIZAらしい1作。GIZAに猛プッシュされたこの後の三枝夕夏 IN dbは当時のGIZA界隈のレビューサイトで目の敵にされる事になるが(現在はその痕跡はほとんど残されていない)、そんな界隈でも今作だけは高評価…みたいな風潮も当時あったように記憶している。これは今作では字余り詰め込みまくりな歌詞、やたら長いタイトル、デシデシとした要素(独特のノリの良さ)といった三枝夕夏の強い個性がほとんど開花してないためだったのではないかと思った。ただこれだと確かに曲の雰囲気はいいが無個性だし、ボーカルも無機質だしで、あまり面白味は無いように思う。
そんな作風的には当時のGIZAっぽい以上の個性はあまり感じられない今作だがビジュアル面での方向性は最初から完成されていたのか、最初からやたらノースリーブ連発なのはブレていない。しかもここまでの3シングルと今作までは下着みたいな露出度の高さで、今作に至っては顔よりも(横向いてるし)大きく開いた首から胸元にかけてが中央アップになっていてそこにタイトルとアーティスト名表記である。セクシー路線で売り出そうとしていた割には音楽と噛み合っていないような…。
ボーカルの再録音に関しては一概にどちらがいいとも言えない感じで初期には初期の拙いながらもその時しか出せない味はあったように思う。再録音の方が全体のボーカルはハッキリしているような印象で、なんかふわついている今作のボーカルを後年になって歌いなおしたくなったのも分かるくらいにボーカルの成長は感じられるものにはなっている。それでもリバーブでほわっほわな「Graduation」初期版と再出荷版、よりうまく歌っているのは?と言えば再出荷版なんだろうけど、初期版のほわっほわにもどこか幻想的な魅力もあると思う。
配信は再出荷版のようだ。よって「Whenever I think of you」ボーカルリテイクバージョンとアルバム4曲の初期ミックスは未配信のままであり、サブスク解禁されてもそれだけでは終われない1作となった。
印象度★★★☆☆
2022.8.26更新