夏華
・ドキュメント 1996〜2004
75分に渡り、ライブ/PV映像、キャンペーン映像などの素材とナレーションを軸にしてスタッフ/関係者のインタビューで構成。
チャプター分け一切なしの1トラック。
・夏華 ビデオクリップ
カバーアルバム『夏唄』収録曲のPV
リリースデータ
2004年9月29日 | 総合DVDチャート初登場184位 | 売上不明 | 東芝EMI |
Something ELseドキュメントDVD。"Something ELseの過去から今を綴った、音楽業界初のドキュメントDVD作品がここに完成。"とジャケットに記されている。デビューからのドキュメントをライブ/PV映像、各地でのキャンペーンの模様とEMIや事務所スタッフ、関わったラジオ番組やTV番組(日テレ関係者は無し)のスタッフのインタビューを元にして収録されている。メンバーは一切制作に関与していないため、メンバーのインタビューは入っていない。発売直後にEMIとの契約を終了し、事務所も辞めて独立する事が発表され、メンバーは発売に否定的なコメントをしていて公式サイトにも掲載されなかった。一部ながら発売1ヵ月前に行われたライブの模様も本編冒頭とラストに収録されている(特に「自転車ラプソディー#1」は長めに収録)ほか、「夏華」PVも収録されている。パッケージには60minと記載されているが実際はドキュメントだけで75分もあり、PVと合わせて合計80分程度となっている。
当時メンバーが発売したくなかったと否定的な発言をして、実際にひたすらスタッフがスタッフ視点で一方的に喋っているだけというメンバー不在の作品内容からファンの間でも否定的な意見が多い。サムエルファンとして今作を面白いと感じる人はまずもっていないだろう。今作ではスタッフが売れなかった時期の売れなかった苦労を隠さずにそのまま語るし、「ラストチャンス」以降再び低迷してしまい売れなくなった事も堂々と触れまくっている。当時現役アーティストの商業作品としてはかなり異例の内容で、事務所とレコード会社を離れるのが決まっていた時期に最後にこんなのを勝手に作られたらそりゃ怒るだろうというような内容だ。しかも冒頭から喋っているディレクターの人、てっきり最後まで担当していた人なのかと思ったら3rdアルバム『光の糸』を最後にここまでインタビューに登場していた他のスタッフも同様に離れたと明らかになる(スタッフが一気に入れ替わったという)。にも関わらず彼らは最後まで登場し続け、勝手に語り続ける。何故かそれ以降を引き継いだディレクターやスタッフが登場しない。そこまではインタビューを受けているスタッフたちが体感した出来事なので話も丁寧なんだけど、関わっていないせいかそれ以降の作りがやや雑で極端に短い。そこまでは1作1作丁寧に取り上げているのに、「磁石」「びいだま」以降は飛ばされる作品が多くなる。むしろセールス的に大きく落ち込むきっかけになった失策とも言うべきこの辺りの話を聞きたかったのに。『Y』という作詞を外部委託したアルバムを制作する動機が周囲からサムエルは詞が弱いという指摘を受けていた事がきっかけだったと暴露され、さらにそれをメインで作詞も手がけていた今井が悔しがっていた事まで勝手に暴露されるのはちょっとあんまりだと思った。
とはいえ、スタッフサイド限定の話というのもそれはそれで新鮮さがあって面白さはあり、サムエルの作品としてではなく、サムエルに関与したスタッフ名義によるレコード会社のお仕事ムービーとしては興味深い映像だと思う。少なからずアーティストを売り出すという仕事に興味があるなら、今作はそれなりに面白い。
ただサムエルが99年以降評価の割に恐ろしく地味化してどんどん売れなくなっていってしまった理由がよりはっきりしたような気もする。というのもインタビューで登場するのは売れる前からサムエルを気に入って積極的に自分の番組で流し続けた地方ラジオや番組のスタッフたち。彼らのおかげもあって「ラストチャンス」も売れた。売れてからも彼らへの恩義を忘れずに地方のラジオ周りなどのキャンペーンを重視した、と。とにかく地方を大事にしたような事が強調されているんだけど、逆に大事な時期に多くの人に知られる一般メディアへの露出や戦略を仕掛けていた様子が全く無い。実際に当時のリアルタイムの記憶では「ウソツキ」がせっかくロングヒットしたのに、「磁石」「びいだま」は極めてひっそりリリースされ、タイアップも深夜の自社アイドルの売出し用ミニドラマ(まあCDデビュー前の松浦亜弥主演だったんだけど)など全く外に向いてなくて、ネットも浸透してない当時はリリース情報をキャッチするのすら扱いが小さくてやや困難になっていた。俺以外の友人たちも「ウソツキ」まではそこそこ知っていたのに「磁石」以降はすっかり忘れていってしまった。
地方のキャンペーンも大事だけど、いくら地方のラジオ局が気に入ってくれたところでその影響力は小さい。彼らがいくらプッシュしても「レコード」まで全く売れず、それ以降も関係を大事にし続けてもスタッフもライブ動員も減る一方だった(動員とスタッフが減っていった事までドキュメントで触れている)事からもそれは明らかだ。メンバーにインタビューしてない弊害かもしれないが、このドキュメントからは最も大事であるリスナー1人1人へ届ける事を意識した部分がほとんど感じられない。これは大事にすべきところを間違えていたとしか思えないし、今作が「スタッフの言い訳」などと揶揄されたのも確かに納得だ。
このように結局リスナーに何を伝えたかったのか全く見えてこない作品。あえてファンにとっての見所という事なら使用されている素材映像はPV以外は地方キャンペーンやライブ映像などどれも貴重なものばかり。特にライブ映像に関しては1作もリリースされていないのでわずかながらでも収録されているのは注目すべき部分だ。しかし渋谷公会堂で客席をぶち抜いてセンターステージ作るって凄いな…。
あと「夏華」のPVは…低予算だなぁ…としか。
印象度★★★☆☆