RECYCLE Greatest Hits of SPITZ
No | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 備考 |
1 | 君が思い出になる前に | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 7thシングル(カット) 最高33位 売上12.3万枚 |
2 | 空も飛べるはず | 草野正宗 | 草野正宗 | 土方隆行&スピッツ | 8thシングル 最高1位 売上148.0万枚 |
3 | 青い車 | 草野正宗 | 草野正宗 | 土方隆行&スピッツ | 9thシングル 最高27位 売上5.1万枚 |
4 | スパイダー | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 10thシングル(カット) 最高34位 売上3.3万枚 |
5 | ロビンソン | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 11thシングル 最高4位 売上162.4万枚 |
6 | 涙がキラリ☆ | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 12thシングル 最高2位 売上98.1万枚 |
7 | チェリー | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 13thシングル 最高1位 売上161.3万枚 |
8 | 渚 | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 14thシングル 最高1位 売上83.9万枚 |
9 | スカーレット | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 15thシングル 最高1位 売上60.0万枚 |
10 | 夢じゃない | 草野正宗 | 草野正宗 | 笹路正徳&スピッツ | 16thシングル(カット) 最高6位 売上33.9万枚 |
11 | 運命の人 | 草野正宗 | 草野正宗 | スピッツ&棚谷祐一 | 17thシングル 最高3位 売上28.7万枚 |
12 | 冷たい頬 | 草野正宗 | 草野正宗 | スピッツ&棚谷祐一 | 18thシングル 最高5位 売上8.8万枚 |
13 | 楓 | 草野正宗 | 草野正宗 | スピッツ&棚谷祐一 | 19thシングル(カット) 最高10位 売上14.2万枚 |
リリースデータ
1999年12月15日 | 初登場1位 | 初動57.9万枚、売上214.5万枚 | ポリドール |
メンバー
Vocals | 草野マサムネ |
Guitars | 三輪テツヤ |
Bass Guitar | 田村明浩 |
Drums | 崎山龍男 |
スピッツ非公認シングルコレクション。初回盤は紙ジャケ仕様。当時のレコード会社ポリドールが一方的に発売を通達し、発売が発表されると同時に公式サイトには「今回のベストはメンバーの意志ではない」という旨のお詫び声明を発表。かなり異例な事態となった。このため今作にはメンバーの写真やアルバムのプロデュースクレジットは記載されておらず、公式のディスコグラフィーに今作は記載されていない。発売には最後まで反対だったが、決定が覆らない以上はと最低限の仁義を通すために、アルバムタイトル及びO社初ランクイン以降のヒットシングルを順番に並べるだけという構成、アートワークなどはメンバー全員の意思で決定された。この時点で20thシングル「流れ星」がリリースされていたが、同年3月『花鳥風月』に収録されていたので「流れ星」は未収録。19thシングル両A面曲「スピカ」も『花鳥風月』に収録されていたので未収録になったと思われているが、当時CDショップで配布されていた楽曲解説ライナーには「流れ星」が収録されなかった前述の理由と、epであるという理由から『99ep』も対象外になった旨が書かれているだけで「スピカ」未収録の理由には言及されていない。
発売決定当時メンバーはマイアミで新作のミックスダウン作業で試行錯誤を重ねている真っ最中だった。事務所ロード&スカイ社長の高橋信彦は飛行機が苦手で飛行機に乗れないにも関わらず、この一件をメンバーに直接伝えるために無理して飛行機に乗って直接現地へやってきてメンバーに伝えたという(それほど重大な出来事だと考えたため)。このためメンバーの間では今作発売に関する出来事は「マイアミ・ショック」と呼ばれている。当時の宣伝キャッチには初のベスト盤である事とシングルバージョンでは6曲が初収録(「空も飛べるはず」「青い車」「渚」「スカーレット」「運命の人」「夢じゃない」)ということが押し出されており、リマスタリングの文字は無かったが、マスタリングは小鐵徹が担当しており、リマスターもされている。このマスタリング工程にもメンバーは立ち会っており、当時ミックスやマスタリングに悩んでいたメンバーにとってはヒントをつかむいいきっかけになったという。特に草野は今作のマスタリングが気に入り、その後の音の基準として今作を使用していた事やジャケットデザインなども気に入っていると後に語っている。
皮肉なことに、初動だけで前作『花鳥風月』の売上を軽く突破、前オリジナル『フェイクファー』の売上も翌週には軽く突破し、『インディゴ地平線』以来3作目のミリオン突破をあっさり達成する大ヒットを記録した。00年の年間ランキングの時点では『ハチミツ』にはまだ数万及ばず、自身2番目のヒット作にとどまっていたが、以降も売れ続け、03年以降O社アルバムチャートの集計範囲が100位から300位に拡大されると、ほぼ1年中ランクインし続ける状態となり、最終的に200万枚を突破する最大ヒット作となった。しかし発売から6年に渡って売れ続けている中で、一時期だけが切り取られた作品がヒットし続けている事にジレンマを感じるようになったメンバーの意向で、メンバー公認の正式なシングル集『CYCLE HIT』2作が同時発売された。これに伴い、今作は生産中止となった。店頭在庫がしばらく売れ続けていた影響で06年5月までランクインしていた。
なおベスト発売という移籍フラグみたいな出来事だったにも関わらず、スピッツはそのままポリドールに残留。しかしまもなくユニバーサルに完全吸収されたことで00年を最後にCDに書かれていたポリドール伝統の社名ロゴや品番等も完全消滅してしまい、01年以降スピッツは自動的にユニバーサル所属となった。
発売当時の騒動に対してレコード会社に憤りを覚えつつも、当時普通に購入。「チェリー」以降はアルバムとして持っていたものの、それ以前のシングルはカセット録音したテープとしてしか持ってなくてCDで持っておきたかったこと、「スパイダー」だけは当時1度も聞いたことが無かった、というのが購入した理由。なので非公認作品だ!と憤りつつも当時かなり満足度は高かったのが正直なところだし、友人からの貸してくれという依頼にもけっこう応え(CD収納している不織布のケースを「妹にも貸したら無くされちゃった…」と妹のせいにして直入れ状態で返却してきた時に唖然としたのも今は思い出)、初回盤の紙ジャケにしてもCD盤面にしても早い段階でそれなりに使用感のある状態になったりもしていた。
当時のメンバーは皮肉を込めてO社ランクイン以降の曲から収録させたわけだけど、この1曲目の「君が思い出になる前に」は97年にCM起用でリバイバルヒットしていたので恐らく潜在需要は高く、当時ライトリスナーレベルであんまり知られてなかったのは「青い車」と「スパイダー」の2曲程度、あとは知っている曲だけが満載というこの上ない1作だったんじゃないだろうか。スピッツには入口になるようなベスト盤が無かったこともあり、その後ロングヒットし続けたのも改めて納得だったりはする。今作の存在が結果的にスピッツのポップなイメージをより固めてしまい、ファン以外のイメージとこれ以降のスピッツのサウンドがかなり剥離してしまったという弊害も生んだ事は今作の最大の罪か…。
一時期しか収録されていないわけだけど、この時期はエレキギターをガンガン効かせたようなシングル曲はほぼ皆無。どれもポップな質感でとても聞きやすく、ギターロック系のバンドが苦手だというリスナーでも心地よく聞くことができる。というか特に音楽に対するこだわりとかが無くてヒット曲だけ気持ちよく聞きたいというリスナー、つまりスピッツ自体は名前以外あまり知らないけど「空も飛べるはず」とか「ロビンソン」とか「チェリー」とか気軽に聞きたいリスナーにとってはお手軽この上ないわけで、ファンとしては今や『CYCLE HIT』2作を聞いてくれと言いたいところだけど生産中止以降も『CYCLE HIT』よりも中古屋で1コインで入手できる今作の需要が高いままな現状は仕方ないのかな、と。今作が良かったなら、特に気に入ったシングルが入ったオリジナルアルバムを聞けば間違いはないし、今作以降を聞きたいなら改めて『CYCLE HIT』の後期の方を選択するか、オリジナルアルバムを辿っていってみればロックバンドとして一皮むけた今作とは違うスピッツを聞くことができる。その頃には抜け出せないスピッツワールドへハマりこめているはずだ。
なお今作に収録されている曲は、現存するオリジナルアルバムや『CYCLE
HIT』ではすべてStephen Marcussenによるリマスターになっているので、小鉄徹が担当している今作とは傾向が異なる。Stephen
Marcussenによるリマスターは基本的に迫力があってロックバンドとしてのダイナミックさとかが強調されていてかっこいいという印象がある(ふわっとしすぎだろ)、今作にはそのような派手さはあまり感じられない。しかしその分だけ妙にスッキリ聞けたりもする。この時期のサウンドにはけっこう合っていたのかなと思う。
印象度★★★☆☆