TETSUYA KOMURO ARCHIVES “K”

Orchestra Arrangement:Randy Waldman

リリースデータ

小室哲哉コンピレーションアルバム。『T』『K』の2枚同時発売。2018年1月に引退を表明したのを受けて企画され、自身が作詞作曲編曲プロデュースを手掛けてきた楽曲からレーベルの域を越えて厳選された100曲を50曲ずつ収録。どちらもCD4枚組でそれぞれ時系列になっている。山崎麗我によるリマスター。2作ともエイベックスからの発売だが2作をセットにしてさらにもう14曲を選曲して『+』としてCD1枚を追加した『TETSUYA KOMURO ARCHIVES BOX』はSony Music Shop限定で販売された。

『T』『K』でどちらにも収録されているアーティストもいるが、トップヒット級のアーティストでもTRFは『K』だけ、安室奈美恵は『T』だけとなっている。また『T』『K』どちらも時系列になっているが、もっと厳密には『T』DISC-1→『K』DISC-1→『K』DISC-2→『T』DISC-2→『T』DISC-3→『K』DISC-3→『T』DISC-4→『K』DISC-4で全曲が発売順になるように構成されている。また最後の2曲は表記上は発売日が今作と同日となっているが先行で単独配信はされていてジャケット写真は単独配信時のものが掲載されている。

この構成に伴い、『K』は90年代前半、00年代ほぼ全般、10年代後半が中心。95年だけで1枚丸々消費した挙句に『T』にも2曲またがっているだけに95年の多作っぷりが際立つ。しかしTRFは4曲選んでおいて最大ヒット曲「CRAZY GONNA CRAZY」、2番ヒット「masquerade」を外すとは…。他3曲は売上以上に代表曲として筆頭に上がる曲なので分かるけど「Overnight Sensation〜時代はあなたに委ねてる〜」だったら「CRAZY GONNA CRAZY」「masquerade」の方が人気も知名度も格上なのでは…。ミリオン級ではTRF以外はちゃんと最大ヒット曲は外さずに選んでいるのでここだけ残念。後は自身のアルバムは存在せず(1stのリミックスはある)なかなか3曲揃わないH Jungle with tが『T』『K』でちゃんと3曲揃うのがポイントか。

DISC-1はTKプロデュースブランドが確立していく躍進期といった印象。新人女優の歌手活動に提供したり、既にキャリアのあった郷ひろみ、中森明菜に提供したりもしているがこれらはそこまでうまくは行っていない感じはする。特に新人アイドル系女優は自身が発掘したというより頼まれて提供した感が強く、歌唱が二の次になっているのが否めない。TRF(当時はtrf)で異様に突き抜けると続く篠原涼子で一挙200万枚越え。TRFのTがTetsuyaのTなのは言われないと分からないレベルの匂わせだが、「恋しさと せつなさと 心強さと」では他のアイドル系女優と違って篠原涼子の名前に"with t.komuro"をくっつけるというより前のめりな姿勢でこれが大ヒットしたことで自身の名前も大々的に売れた。この頃は確実に"持っていた"と思う。

DISC-2は95年だけ。小室ファミリーと呼ばれて無双状態でファミリーはなんでも当たっているような感じだったが(数十万売れててもhitomiが自称落ちこぼれと言うほど)リアルにコケていた曲までピックアップされていて全く知らない曲も紛れ込んでいるのが面白い。また"with t.komuro"で当たったので調子を良くしたのか「WOW WAR TONIGHT〜時には起こせよムーヴメント」のオリジナルバージョンをOriginal Mixとせずに2 Million Mixと200万枚宣言をぶちかまして本当に200万枚売るというとんでもない事までやってのけてまさにバブル、全盛期。イッケイケな時期だけにやはり特有の勢いとかオーラはあると思う。

DISC-3はすっ飛んで一気にブームが急速に去ってヒットが出なくなってからなので落差が凄い。アメリカの911テロの影響を受けてのチャリティーとして立ち上げたsongnationプロジェクトでエイベックスの所属歌手を集めて曲提供を行いコラボ展開なども行っていた中から一気に4曲収録しているが…正直話題の割にはさほどヒットしてなかったのでこんなのあったんだ…。プロジェクトの1発目を飾った浜崎あゆみ&KEIKOは『T』に収録されていたがヒットしたのって正直それくらいだったのでここに4曲収録しなくても…とも思ったが思い入れは強かったのかも。「Many Classic Moments」も当時から最高傑作的な勢いで自信作っぽかったし、わざわざここでも選んでいるのでずっと変わらず自信作なんだと思う。03年のGABALLは新プロジェクトして始めたものだがこの頃にはなんか新しい事やろうとするんだけどどれも長続きせずに頓挫することが増えていて、これ以降最後まで自身が本格的にプロデュースまで担当したプロジェクトは派手に構想ぶち上げるもほぼ長続きせず、なかなか難しい状況になってくる。曲自体そんなに悪くはないんだけど、渾身の1曲で始めてしまうだけにイマイチ結果が出ない→渾身の1曲の次が出せないという悪循環に陥っているような…。さらに逮捕直前の混迷期はここでもバッサリスルーして2010年に飛んでしまう。まあ逮捕直前の数年間はほぼglobeとTM NETWORKくらいだったからか。

DISC-4は引退に至るまで。2010年から借金返済もあってとにかく依頼は受けまくって提供はそれなりにしていて、実験に走らずにヒット曲っぽいのを書こうとしているのは分かるんだけどヒットしないのでシオシオ感は否めない。引退騒動になる直前には浅倉大介とのPANDORAを立ち上げてやたらTVでも派手にパフォーマンスしていて健在っぷりを示しまくっていたのでまだまだ打って出ようという気概は存分に持っていたようにも思う。

　　　BOX　

印象度★★★★☆

2021.2.16更新

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