KANA-BOON THE BEST

リリースデータ

メンバー

KANA-BOON初のベストアルバム。コンピ盤としてはC/Wコレクションアルバム『KBB vol.1』『KBB vol.2』に続く3作目だが初の本格ベストとして扱われている。14thシングル『スターマーカー』と同時発売。13thまでのシングル全13曲と初の全国流通作品となった『僕がCDを出したら』とメジャー以降の4枚のフルアルバム、3枚のミニアルバムから時系列に収録。「眠れぬ森の君のため」のみ本編最後に配置され、DISC-1,2それぞれにボーナストラックとして自主制作時代の楽曲の新録音「スノーエスカー」、新曲「マーブル」を収録。「ハグルマ」「まっさら」はアルバム初収録でオリジナルアルバムには未収録となった(次のアルバムには同時発売の「スターマーカー」以降を収録)。初回盤は三方背ケース仕様、MV30曲(4曲がショート)を収録したBlu-ray付、「谷口鮪による“タイムストリップ”ライナーノーツ」付属。

2019年6月12日シングル「まっさら」リリース直後、19年6月5日から飯田祐馬と連絡が取れなくなっているとして15日に予定していたライブの中止を発表、失踪騒動となったが、15日に帰宅発見され、19日に飯田のみ一時活動休止を発表。サポートベースを入れてライブ活動を行っていたが11月に飯田がそのまま正式脱退を発表した。この間に新作リリースは無く、今作は飯田在籍時4人での総括ベストにもなっていて、飯田が参加していない3人での新録音「スノーエスカー」と新曲「マーブル」の2曲はボーナストラック扱いとなっている。このうち「スノーエスカー」は谷口がベースも演奏、「マーブル」は新たなサポートメンバー遠藤昌巳がベースを演奏している。遠藤昌巳はこのまま固定のベースサポートメンバーとしてレコーディング、ライブに参加し続け、次回作発売直後の2022年4月1日付で正式なメンバーとなる事が発表された。

飯田失踪騒動より前から人気は失速傾向で、2018年にシングルを出さずにC/W集、ミニアルバムを連投する中で売上が急落し、トップ10落ちどころか新作ミニアルバムが3000枚台しか売れない事態となり、2019年になってからの2シングルも数千枚の売上まで落としていた。今作は飯田脱退発表から4人時代を緊急で総括するようなタイミングとなったが、やはり売上は振るわずトップ10落ちとなった。配信でも目立った動きは出せなくなっていた。

デビュー当初からトップ10ヒットを飛ばし、期待の若手バンドとしてライブフェスが盛り上がる流れにも乗って順調そうな感じだったが若手バンドには疎く、さっぱり聞いていないのでちょっと聞いてみるかと3rdアルバム『Origin』を発売当時に聞いてポップでそこそこ好印象だったものの甲高いボーカルと横一線な作風もあってそれ以上聞く気がしなくなりそれっきりになっていた。今にしてみるとどうもピークは2ndアルバム『TIME』頃までで『Origin』の頃にはライトリスナーがどんどん離脱していく状態にあったようだ。ベスト盤くらいならもう1度聞いてみようかと思いつつ横一線な印象が強く、改めて今作を聞く気にもなかなかならなかったが、中古屋で今作が110円で投げ売られていたのでこれはレンタルするより安いという事で聞いてみた。

DISC-1はひたすらポップ&キャッチーでアップテンポなロックナンバーが連投される。聞いていて気持ちの良いポップ&キャッチーさで即座に彼らがブレイクしたのも必然だったと思えるし、恐らくこのノリはライブウケ、取り立ててフェスウケが非常に良かったのではないかと思われる。ただどうもウケが良かったフェスウケロック路線をひたすら一直線に擦りすぎた感がある。同じような路線でもう1発、もう1発、さらにもう1発…と本来このくらいの若手の頃はもっとグングンと変化や進化があってもおかしくないのにほとんど変化が無く、あまりにも横一線すぎる。DISC-1の時点で途中から飽きてきてしまうし、実際これでライトリスナーもどんどん飽きて離れていってしまったっぽい。個人的には「シルエット」のポップさは最も耳に残るものがあったが同じ路線が続きすぎる。

DISC-2になると変化の兆しやロックバンドとしての逞しさを増そうとするような変化を求めるような作風に徐々に変わってくる印象。ポップ&キャッチーなアップテンポだけではネタ切れになってしまい慌てて色々な進化を模索し始めたけど、以前ほどの分かりやすい輝きや魅力を凌駕するほどではなく、結果的には勢いが落ちてきて地味になってしまったところもある。愚直にギター中心のロックバンド然とし続けているところは好印象ではあるんだけど…どうもフェスウケロックを擦りすぎた反動で次なる魅力を発揮するに至れない停滞感がある。

前提としてボーカル谷口の声が甲高くてポップオブポップなのでどうしてもカッコいいロックバンド然とした重さやベテラン感が出しにくく軽めに聞こえがちになってしまうのも確かで難しいところ。ひとまず一撃完結のベスト盤でこれ以上掘り下げる気はしなかったが、新曲「マーブル」が王道アップテンポではなくテンポを落とした曲で新たな局面を見せようともしているし、メンバー脱退というバンドの危機に変革の意識は当然あるはずなので、ここで折れるか強くなるか、この先の変化にこそまだ期待できる部分はあるのかもしれない。

初回盤Blu-ray付　　通常盤　

印象度★★★☆☆

2022.5.25更新

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