群青の日々

No タイトル 作詞 作曲 編曲
1 怖い 熊木杏里 熊木杏里 武藤良明
2 カレーライス 熊木杏里 熊木杏里 武藤良明
3 僕たちのカイト 熊木杏里 熊木杏里 大谷幸
4 熊木杏里 熊木杏里 武藤良明
5 しにがみてがみ 熊木杏里 熊木杏里 弓木英梨乃
6 花火 熊木杏里 熊木杏里 武藤良明
7 fighter 熊木杏里 熊木杏里 武藤良明
8 雨宿り 熊木杏里 熊木杏里 弓木英梨乃
9 熊木杏里 熊木杏里 武部聡志
10 群青の日々 熊木杏里 熊木杏里 熊木杏里

リリースデータ

2017年6月28日 初登場68位 売上0.14万枚 Produced by 熊木杏里 ヤマハミュージック

熊木杏里10thアルバム。前作同様に1年3ヵ月ぶり、シングル無しでのアルバム。今作はセルフプロデュースとなっている。「怖い」はリード曲としてMVが制作された。初回盤は「熊木杏里LIVE TOUR 2016 "飾りのない明日”」のキネマ倶楽部、ヤマハホールの2公演から抜粋したライブ映像+ドキュメント映像、オーディオコメンタリーを収録したDVD付。また同じ2公演から抜粋収録したライブCD『熊木杏里LIVE TOUR 2016 "飾りのない明日” 〜An's Choice〜』が同時発売。通常盤を購入したため、初回盤DVDとライブCDの選曲の違いは不明。

16年9月にはシングル『End of the World/へたくそな唄』がリリースされていたが今作には未収録。アニメ/ゲームの脚本兼楽曲制作を手掛ける麻枝准に歌声の良さを見出され、15年のアニメ『Charlotte』最終回ED曲として1度だけ使用された「君の名前」にボーカリストとして参加以降も麻枝准の楽曲へのボーカル参加が継続して行われており、シングル『End of the World/へたくそな唄』も麻枝准の関連作だった。熊木杏里サイドではボーカリストとしてのみ参加している麻枝准の関連作品はシンガーソングライターの活動とは切り離していて、公式サイトでもバナーを張るのみで積極的な告知は行っておらず、ディスコグラフィーにも麻枝准関連の作品情報は掲載していない。7月26日には麻枝准×熊木杏里の名義でアルバム『Long Long Love Song』をリリースし、「End of the World」はそちらに収録されている。

ここ数作の熊木杏里はどうも迷走しているというかしっくりこないところがあった。『無から出た錆2』みたいなアルバムを作りたいと言って、過去の熊木杏里らしいイメージににこだわりすぎたと後に語ったように結果的に無から出た錆2とは当たらずも遠からずな何だか無理に暗くしようとした結果恐ろしく地味になってしまった『生きているがゆえ』、これからも歌い続ける決意を込めつつもインタビューでの惨め発言をインタビュアーにフォローされてしまった前作『飾りのない明日』…どれも新たな曲調などもいくつかあったものの、かつてのようなキラーフレーズも無ければ、デビューから『光の通り道』までの視界が開けていくような感じもない…。率直に『光の通り道』までは共感したり、気づかされたり、励まされたりする要素があったんだけど、ここ最近はすっかりズレを感じるようになってきていた。

今作1曲目の「怖い」では"どんな日でも子供は育ち 私は確かに老いていくんだ"として、それら含めて生きていくことを「怖い」と率直に歌っている。前作リリース時インタビューでステージで歌っている自分と子供と過ごしている自分がいて後者の方に対してこれが今の自分だと思うと「惨め」だと言い放ち、年上のインタビュアーにはそれは「老い」だとフォローされていた。当時スター的な発想なのかとげんなりしたが、たぶんその時漠然としていただけで惨めと言葉にしてしまうほどうまくまとめられなかった30代半ばを過ぎていく自分自身の今を受け止め、インタビュアーにフォローされた「老い」という感覚と合わせてこの曲に落とし込めたんじゃないかと思う。「群青の日々」はようやくたどり着いたこれからも老いていく熊木杏里の道しるべのようにも感じられる。そこに「惨め」さは無い。本当に良かった。「怖い」じゃなくて「惨め」だと歌いだしたら本当に聞くのを辞めていた。そんな身も蓋もないこれからの歌なんて聞きたくない。いつになく国単位まで視点を広げた「国」にしても今作だからこそ響く曲になったと思う。

また今作ではルーツであるフォーク色が随所で強く感じられるが、メインアレンジャーとなった武藤良明はバンドサウンドでも曲ごとに多少の緩急や変化をつけている印象で彼の起用が今作を多彩に彩ってくれている。武部聡志や河野圭は良くも悪くもベテランらしい安定したサウンドを構築し、前作で扇谷研人に変えても正直そんなに何か変わった感じは無かった。しかし今作では単にギターベースドラムが淡々と演奏されているだけででなく、「怖い」でギター強めに鳴らせたり、「蛍」で二胡を導入したり、「花火」ではキーボードを軸にちょっとオシャレ系のサウンドだったり、「fighter」では熊木杏里としてはだいぶはじけた感じの曲なので合わせて躍動感のある感じにしてみたりと安定感以上のものがある。弓木英梨乃とのコラボではアコースティックギターを、大谷幸、武部聡志はそれぞれピアノ1本のバラード。この辺りの音数の少ないバラード系は今までもたくさんあった曲だけど、今回は曲種のバランスが非常に良く、似たような曲が延々続く感じがしなかったのも大きかった。名曲というほど曲単位で好きな曲は無いけど、トータルの感触がとても良くて聞きやすい。熊木杏里の作品では本当に久々に響いた1作

群青の日々【初回限定盤】初回盤DVD付  群青の日々【通常盤】通常盤 

印象度★★★★☆

2017.9.9更新

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