がらくた(初回生産限定盤A)

No タイトル 作詞 作曲 編曲 備考
1 過ぎ去りし日々(ゴーイング・ダウン) 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
2 若い広場 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
3 大河の一滴 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫 17thシングルC/W Album Version
4 簪 / かんざし 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
5 愛のプレリュード 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫 17thシングルC/W Album Version
6 愛のささくれ〜Nobody loves me 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
7 君への手紙 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐 18thシングル 最高2位 売上9.9万枚 Album Version
8 サイテーのワル 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
9 百万本の赤い薔薇 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐,原由子&曽我淳一 17thシングルC/W Album Version
10 ほととぎす[杜鵑草] 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
11 オアシスと果樹園 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫  
12 ヨシ子さん 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫 17thシングル 最高2位 売上13.1万枚 Album Version
13 Yin Yang 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐 16thシングル 最高3位 売上9.9万枚 Album Version
14 あなたの夢を見ています 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐&片山敦夫 18thシングルC/W Album Version
15 春まだ遠く 桑田佳祐 桑田佳祐 桑田佳祐  

弦編曲:片山敦夫(2)
管編曲:片山敦夫(4)
弦・管編曲:島健(15)

Bonus Disc(初回盤のみ)
Blu-ray
(初回盤AはBlu-ray、初回盤BはDVD)
No タイトル 備考
この夏、大人の夜遊びライブ in 日本で一番垢抜けた場所!! at Billboard Live Tokyo(2017.07.11)
1 百万本の赤い薔薇 16thシングルC/W
2 大河の一滴 16thシングルC/W
3 君への手紙 17thシングル
4 愛のささくれ〜Nobody loves me 今作収録曲
5 簪 / かんざし 今作収録曲
6 若い広場 今作収録曲
7 オアシスと果樹園 今作収録曲
8 ヨシ子さん 16thシングル
MUSIC VIDEO
9 悪戯されて(New Arranged Version) 17thシングルC/W(新アレンジ) 広末涼子主演Music Video 
  CREDIT ライブの演奏メンバー表記

リリースデータ

2017年8月23日初登場1位 売上29.9万枚 ビクター

桑田佳祐5thアルバム。6年半ぶりのオリジナルアルバム。2012年にベスト盤『I LOVE YOU-now & forever-』リリース後、2013年にシングル『Yin Yang/涙をぶっとばせ!!/おいしい秘密』をリリース後はサザンオールスターズを復活させ、2013〜2015年までサザンで活動していたが、2016年からは再びソロ活動へ移行した。この際にサザンに関して特に休止とは発表していない。ソロ再開後の2作のシングルから6曲を収録。18thC/W「悪戯されて」は収録する予定だったが収まりが悪かったため、最終的に前のソロ活動時の「Yin Yang」が収録された。この曲と3曲A面だった「涙をぶっとばせ!!」「おいしい秘密」は未収録前のソロ活動時のシングルがサザンを経ての次のソロ活動時のオリジナルアルバムに収録されるのは初。「悪戯されて」は最終的に初回盤A,BにMVを収録する形でNew Arranged Versionとして収録された。今作に向けてリリースされた17th、18thC/Wのうちライブ・リメイクを除くと「メンチカツ・ブルース」のみ完全に未収録となった。

初回盤A,Bにはエッセイが加えられた特製ブックレット(歌詞とエッセイが1冊になっている)付属。加えて2017年7月10日と11日にわずか300人のキャパの会場で行われたプレミアムライブのうち11日公演の中で今作に収録されている8曲を抜粋収録。加えてアルバム本編には未収録になったものの、シングル発売時点でMVが制作されていた「悪戯されて」MVを新アレンジ音源で収録初回盤AはBlu-ray、初回盤BはDVDで内容は同じ。初回盤CはBD/DVD無しで特製ブックレットのみ付属。通常盤はエッセイ集を省いた歌詞のみの通常のブックレットとなる。

 

近年の作品に昭和歌謡テイストのものが多かったので歌謡臭の強いアルバムになるかと思いきや、バラエティ豊かで全体に軽やかな印象になった。一言で言うならピアノシンセ担当の片山敦夫とのユニットによるアルバム。それほどに片山敦夫が前面に出ているのは編曲クレジットからも明らかだ。サザンからギタリスト大森脱退後にサザンでもソロでも片腕として時に桑田自身はギターを弾かずに全面的にギターを一任することもあった斎藤誠は今作では一歩引いた感じになっている。また編曲に名前があるので片山敦夫が1人目立つが、プログラミング担当の角谷仁宣は片山敦夫を超えて今作最多の参加で「百万本の赤い薔薇」以外の14曲を担当(「君への手紙」に不参加なので片山敦夫の参加は13曲)。この起用方針は正直意外だった。

というのも2011年にチーム・アミューズ!!「Let's try again!!」で曽我淳一を起用してからは残りのソロ期間〜復活後のサザンまで新鋭である曽我淳一の参加曲が増えていた。曽我淳一はピアノシンセの片山敦夫とプログラミングの角谷仁宣、2人の仕事を1人で担当出来る人物で、サザンオールスターズの『葡萄』では特に多用されていた。これにより『葡萄』での片山・角谷両名の参加は要所要所に留まっていたので、今作で両名が一気にここまで復権してくるとは。ていうか曽我淳一いきなり「百万本の赤い薔薇」1曲ポッキリになってるし…。

同時に前作『MUSICMAN』で初めて起用したマスタリングエンジニアTed Jensenは『I LOVE YOU-now & forever-』のリマスターを全面的に任せ、復活後のサザンでも引き続き起用。マスタリングエンジニアはずっとビクタースタジオFLAIRの国内のエンジニアを継続起用していたので当初は海外のTed Jensenの仕上げるサウンドにかなり新鮮な驚きがあったようだが『葡萄』制作時にはしっくりこないところが増えたのか、FLAIRの内田孝弘とTed JensenのW起用となっていた。そして今作ではTedは完全に退き、FLAIRのHakkamanを起用…って誰だと思ったら袴田剛史の事だった。彼は08年のサザンのオリジナルアルバムリマスターを担当したエンジニアだ。

要するに今作は『MUSICMAN』頃から新たに起用していたサポートメンバーやエンジニアの起用を抑えるか無くすかして、それ以前から付き合いの長い馴染みの面々に戻している。より付き合いの長い慣れた面々で少人数で制作されたアルバムという事になる。今作の主要なエンジニアと演奏者の中で1番新しい人材は06年からサザン担当になったという録音ミックス担当のエンジニア中山佳敬じゃないだろうか。

そんなわけでユニット色の強い今作だが、全体には近年の作品に通じる老いを感じさせつつも(1曲目から「過ぎ去りし日々」だし)、打ち込みを多用することで多彩さと適度な新鮮さを醸し出し、聞き手を飽きさせない。しかしあくまで大衆向け歌謡ポップスシンガーであるという点に揺るぎは無く、「ヨシ子さん」のヘンテコなインパクトは非常に破壊力があったが、ベテランゆえの大いなる安心感も同時に存在する。サザンの『キラーストリート』以降のアルバムに漂うとにかく大物らしい風格漂う超大作感は『がらくた』と命名して今までより肩の力を抜いた感じの作風にしようとも拭い去れるものではなく、やっぱりベテランらしいどっしりとした雰囲気は今作にもある。それでも確かに大作感は大幅に軽減して、構えずにさらっと聞けるアルバムにはなっていると思う。最高傑作とまでは行かなくても、期待通りかそれ以上のものはある傑作だ。正直シングル段階ではそんなに期待していなかった事もあるんだけど、期待は越えた。

Blu-ray
ビルボードでのライブという事でこんな狭い会場で桑田さんがライブしているというのはかなり貴重だ。実際のライブでは新旧の代表曲が23曲披露されたらしいが、ここではわざわざ今作収録曲のみをピックアップしている。CDでは大半の楽曲が打ち込みを多用していたが、このライブは生バンドになっている。さらにこれはCDよりは人数的に少なくなってはしまうがバイオリン、フルート&サックス(兼任)も1人ずつ入っている。CDよりも生音重視なのでだいぶ音の響きもどっしりしていて同じアレンジでもバンド演奏でだいぶ印象が違ってくるのがこのライブの聞きどころだ。

「悪戯されて」のMVは楽曲に合わせて広末涼子主演の昭和のラブサスペンスでムードたっぷり。アルバム本編に未収録になったがわざわざ新アレンジを用意していた事からギリギリまで本編収録を迷っていたっぽい。そんなに印象は変わらず、これが「Yin Yang」の代わりに入っていたら歌謡曲寄りの印象がもっと増していたかも…。とにかくコッテコテだし。

特製ブックレット
カバーがついているなど書籍のような装丁になっている。といっても前作『MUSICMAN』やサザンの『葡萄』に付属していた豪華なライナーノーツに比べると通常のブックレットより厚くて豪華なやつ…程度な感じだろうか。内容は一応1曲ごとに区切られているが、桑田さんが自由に気の向くままに綴っている…といった形で真面目に曲について解説している部分もあるけど関係ない方向に脱線していったり、曲についてはあまり触れられてない箇所も多い。例えば今作ではシングルが全部Album Version扱いになっているが、サザンの『キラーストリート』以降はバージョン無表記でもライナーで音のバランスを変えたとかどこに何を足したかとか書いてあったが、今作ではAlbum Versionの違いについて一切語ってくれていない。個人的には『MUSICMAN』のような丁寧な解説の方が好きだが、今作はこれまでよりも素に近いというか、自然体の桑田さんがそのまま文章に出ているといった感じの自由さで、のらりくらりしながらもけっこう深い事を言っていたりする部分もある。その点は今までにないもので、お堅い感じではないので読みやすいといえば読みやすい。

がらくた (初回生産限定盤A)初回盤Blu-ray付A  がらくた (初回生産限定盤B)初回盤DVD付B  がらくた (初回生産限定盤C)初回盤C  がらくた (通常盤)通常盤 

印象度★★★★☆

2017.11.10更新

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