EXPLORER
「EXPLORER」10th Anniversary Edition
No | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 備考 |
1 | 優しい歌が歌えない | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 31thシングル 最高12位 売上2.1万枚 |
2 | 夏は憶えている | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | |
3 | Tag Team | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | |
4 | 武士は食わねど高楊枝 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | |
5 | Happy Ending | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | |
6 | 君の名前を呼んだ後に | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 29thシングル 最高11位 売上6.1万枚 |
7 | とりあえず何か食べよう | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 31thシングルC/W |
8 | ハトマメ〜Say Hello To The World.〜 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | The Studentsへ提供 セルフカバー |
9 | The Fog | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | |
10 | 世界に一つだけの花 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | SMAPへ提供 セルフカバー |
11 | Boy,I'm gonna try so hard | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 鈴木雅之へ提供 セルフカバー |
12 | 僕が一番欲しかったもの | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 槇原敬之 | 32ndシングル 最高9位 売上8.1万枚 BLUEへ提供(『The Gift』)、日本語詞にしてセルフカバー |
04年盤のみ「秘蔵映像CD-EXTRA仕様」 |
リリースデータ
2004年8月11日 2014年8月13日(10th Anniversary Edition) 2023年5月17日(アナログ盤) |
初登場1位 300位圏外 初登場84位 |
売上56.8万枚 - 売上0.04万枚 |
Produced by NORIYUKI MAKIHARA | 東芝EMI ユニバーサル ユニバーサル |
槇原敬之13thアルバム。東芝EMIへの移籍第1弾アルバム。前作以降の移籍前のワーナー時代のシングルは「君の名前を呼んだ後に」が収録されたが、「Good Morning!」は未収録。オリジナルアルバムには未収録となったが2週間後にワーナーが発売したベスト盤『Completely Recorded』には「Good Morning!」までではなく、「優しい歌が歌えない」までのシングルが順番に収録された。初回盤は豪華ブックレット仕様/秘蔵映像CD-EXTRA仕様/エンブレムステッカー封入となっている。武道館で行われたオーケストラ編成でのライブのメイキング映像とその模様を収録したライブアルバムとDVDが今後発売予定という告知になっている。品番が1つ異なる通常盤もCD-EXTRA仕様となっているため、実際の初回特典はブックレットの仕様が異なるのとステッカー封入となっている模様。今作は前作で登場した飯尾芳史が録音、ミックスを担当しており、アマチュア時代からの友人だった沢田知久はついに完全に姿を消した。彼が担当していない1stアルバムから参加するまでの間はスペシャルサンクスに必ず沢田の名前が表記されていたが、今回はスペシャルサンクスにも名前が無いため、オリジナルアルバムで初めて沢田知久の名前が表記されなかったことになる。今作だけが前後のアルバムに比べて大ヒットしているのは、SMAPに提供した「世界に一つだけの花」が03年に大ヒット。その特需は作者である槇原の再ブレイクにも繋がり、さらに先行シングルとなった「僕が一番欲しかったもの」も通常よりもヒットしたため、オリジナルアルバムでは『PHARMACY』以来10年ぶりのチャート1位を獲得(ベスト盤では97年『SMILING』で1位を獲得しており7年ぶり)。97,8年のソニー時代以来となる50万枚突破を果たした。
2014年には発売10周年を記念して10th Anniversary Editionとして再発された。EMIがユニバーサルに買収されて既に無くなっているためリリース元はユニバーサルに移動している。CHRIS GEHRINGER(STERING SOUND, NY)によるリマスタリングと、SHM-CD化がなされているが、CD-EXTRAは削除された。2012年のワーナーのオリジナルアルバム全作品リマスターの際は公式扱いで宣伝され、さらにはエイベックスが高速道路用に出荷したベストアルバムの告知すら細かく行っていた公式サイトが今作に関しては一切の告知を行わなかったため、非公認作品と思われるが、発売から8日後となる8月21日になって公式でも発売案内が掲載された。発売前の宣伝が無かったためか、O社300位圏外となった(初登場週の300位が260枚だったため、初動は最高でも259枚より低いことになる)。
2023年には次回作と2枚同時発売でアナログ化された。ボーナストラックとしてシングルC/Wに収録されていたカラオケ音源「僕が一番欲しかったもの (Backing Track)」が追加収録された。
ワーナー末期はシングル曲において完全にヒットを狙う気が無くなっていたものの、今作では新たなフィールドにたったような感じを受ける。「世界に一つだけの花」と「僕が一番欲しかったもの」は歌詞の面で気になる部分が無いわけではないけどメロディーとアレンジは全盛期並のヒット性溢れる楽曲だし、今作はそれだけでお釣りがくる。『太陽』以降はラブソングではなく、後にライフソングと銘打たれた「何かに気づく」的な作風が続いていたが今回のテーマは「幸せの探求者」。徹底的に自己の内面と向き合って最後には"優しい歌が僕にも歌えそうだ"と歌う「優しい歌が歌えない」に始まり、少年時代を振り返ってみたり、家族や子供のことを歌ったりと家族関係を歌った曲が妙に多い。一方でラブソングが無いわけではないんだけど、かつてのような情景が見えるようなラブソングというよりかは「君の名前を呼んだ後に」にしてもどこか情景が見えにくい。家族を歌っているといっても槇原本人は子供もいない独身者のため、実体験は伴わず、自分の子供の頃を回想し、さらに当時の親に近い年齢になった事も踏まえて、家庭の形を提示しているように思える。この部分では実際に家庭を持った実感が伴っていないのでリスナーによっては違和感を感じる部分かもしれない。期待していたほどには素晴らしいアルバムというわけではなくそこそこ好感触程度ではあったんだけど(それまでも「Such a Lovely Place」以降は全部聞いていたが、このタイミングで旧作オリジナルアルバムを全部揃えたら、旧作の方がさらに良かったと感じたため)、家族を描くことでライフソング的な主張を伝えるという手法は、次回作以降のほとんど説明文、説教文と化して行き過ぎが目立つようになる作風よりは受け入れやすく、『太陽』以降のアルバムでは最も手に取りやすい作品だとは思う。
普通のプラケースCDで、ブックレットは当時のマスタリング担当者である小泉由香のクレジットが削除され、ラストにCHRIS GEHRINGERによるリマスター表記が加えられた以外は04年初回盤と同じなので、ますます当時の「豪華ブックレット仕様」の何が豪華だったのか分からなくなった。リマスターとSHM-CD化以外はごく普通のCDで、追加収録が無いどころかCD-EXTRAカットでむしろ内容が減っている。「10th Anniversary Edition」などと銘打つなら、CD-EXTRAの内容をパワーアップさせてDVD化するとかそういう気配りはしてほしかったところ。
肝心のリマスターだけど、細やかで綺麗な音になっている。04年盤の音質には特にこれといった印象も無かったんだけど、改めて引っ張り出して最初の2曲を再生したところ音がでかすぎて随分と潰れて聞こえてきた。リマスター盤では音圧を下げつつも迫力を失わずにクリアに聞こえるのでこれはかなり好印象なリマスターだ。2年前のワーナーのリマスターは確かに音が立体的に聞こえるようにはなったものの、とりあえず小さかったボリュームをグイッと持ち上げたという部分が大きかっただけに、リマスターの感触としては今回の方が好感触。
リマスターというと90年代前半以前のCDの音量が小さかったものが、グッと大きくなるという点が1番実感しやすいし、ずっとそうだった。逆に90年代後半以降は音量自体は今と変わらないどころかどんどん音圧勝負になっていったので、ベスト盤などにおいては00年以降の作品をリマスターしたと言われても、そのリマスター効果というのは音が綺麗になった…気がする…とか、聞こえなかった音が聞こえるようになった…気がする…とか、下手したら何となく違う…気がする…と、実感はどんどん曖昧になっていく印象もあった。ただ加熱していた音圧勝負は、ビートルズ09年リマスターが音圧勝負を放棄した影響なのか、音圧勝負に待ったをかける風潮になったのか、00年代末期以降は"90年代末〜00年代の作品をリマスターして音圧を下げる"といった事も出てくるようになった。今作もそれに属するリマスターであり、00年代以降の作品のリマスターっていうのもなかなか興味深いなと改めて思った。
「優しい歌が歌えない」サビ部分
10th Annivesary Edition 04年初回盤 04年通常盤 2023年アナログ盤
印象度★★★★☆